もしも、あの時に
アウトローの次は、インハイ。続けて胸元に投げた後のアウトロー、追い込んだ後の釣り球。
いくら、最速128キロと言えども、ここまで厳しいコースを対角線についていけば、CPUレベルよわいに打たれることはない。
「いいだろう。入部を許可する。」
3人の打者に対し、球数13、無安打2三振の快投で見事入部を勝ち取った。
まあ、こんなもんよ。
この入部テストでゲームオーバーになることは、僕くらいの熱プラーであればまずない。
「尾間加瀬殿ー!どうだったでござるか?」
「おい、只野。誰に向かって言ってるんだ?それよりお前は大丈夫だったのか?」
「その様子だと、無事入部出来たようでござるな。拙者も最後の3打席目にショートとレフトの間にポトリと落とす技ありのヒットで見事入部を決めたでござる。」
ただのラッキーヒットだろ、それ。只野にそんな◯チローのような技量はない。
その後、合格者だけが集められ佐出監督監督がのたまった。
「とりあえず、入部おめでとう。ただ、冒頭にも言ったように思いで作りをするだけのゴミはいらん。
我々に求められるのは勝利のみ、敗北は許されないのだ。
生死をかけろ。死に物狂いで白球を追え。私からは以上だ。」
明日から、本格的な練習が始まる。
さて、どれだけの選手を作れるか(なれるか)楽しみだ。
最終的には、
球速 155キロ以上
コントロール A
スタミナ A
総変化量 12以上
の化け物投手を目指したい。
まさか憧れの野球選手になれるとはな。
夢だとはわかっていても、心が踊る。
そして、覇王高校にはあの「豪速球天使」もいることだしな。
あの子に会えるというだけで、ワクワクドキドキが止まらない。
止めて~ロマンティック止めて~ロマンティック
胸が~胸が~
苦しくなる~
「苦しくなる~、でござる」
「うわぁっ!!?勝手に割り込んでくんじゃねー、只野!」
「明日から、一緒に頑張るでござるよ。そして、夢の甲子園に行くでござる。」
「夢の甲子園」か。
こころの片隅で思ってた。
もし、あの時野球を止めないでいたら。
努力することを諦めなければ。
つまらないプライドを捨てていれば。
甲子園、なんて夢を、見ることが出来たのかなあ。
「お前に、言われるまでもねぇよ。」
只野の頭をバシンっとはたいて、寮へと引き上げた。