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野球ゲームの世界に飲み込まれました。  作者: kaonashi
第2章 ~チーム力アップだ!友情イベント編~
58/78

グシャ × グシャ


運命の最終打席を迎えた。

もし、ここで打てなかったら‥‥なんてことは考えないようにしよう。


あんな、頭くるくるぱーのヘンテコ幼女でも手塩にかけて作った選手なのだ。

簡単に作れた訳じゃない。パワーをカンストさせた上で長打系の特殊能力も充実させるのは以外と骨が折れる。実際、何度も何度もやり直した。


小梅には、そんな僕の血と汗と涙とそれなりのプレイ時間がつぎ込まれているのだ。現実の青春ラブコメにうつつを抜かす事もなく、ひたすらに熱プロに捧げてきた想い。こんなところで、負けてたまるか。



「最終打席だ。いくぜ、小梅ちゃん!!!」



「のぞむところなのです!!!」



変木を力強い眼差しで見据える小梅。

よし、立ち直ったみたいだな。コロコロ気持ちを切り替えられるのが幼女の良いところだ。



変木、独特のフォームから第一球を‥‥投げた!!!



「ぐむっ!?お‥‥おそ」



ブォオオオオオオン!!!



バシーーーン!ストライク!!!



初球は球速80キロの超山なりスローカーブ。

小梅、全くタイミング合わずに豪快に空振り。


こんな球、初球にチョイスしてくる辺り、本当に食えない奴だな。性格悪い。



二球目‥‥



「ぐむむっ!?またなのですか!!!」



ブォオオオオオオン!!!



バシーーーン!ストライク!!!



遅いカーブのあとだから今度は速いカーブが来るだろうと予想していた小梅、またもやタイミング合わず豪快に空振り。



ツーストライク。後がなくなった。



「小梅ちゃん、悪いが次の一球でしまいだ。早速デートの予定でも決めておこうか。どこか行きたい場所はあるかい?」



「ベー、なのです!!!こうめはますたーがすきなので、あなたとはおつきあいしたくないのです!だからつぎのたま、ぜったいにうつのです!!!」



さらっと告白されたが‥‥まあ、幼女だしなぁ。

僕は、ほら、そういう属性ないから。

前にもいったろ?僕は、紳士だって。



「おお、厳しいなあ、おい。だが、こういうシチュの方が‥‥」



変木、小さなテークバックから三球目を‥‥



「萌えるってもんだぜっ!!!!!!」



投げた!!!!!!!!!





グシャ





あっ、この音は‥‥


ギュイーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!




打球は‥‥一瞬で場外へ。




「ははっ‥‥おい、うそだろ。なんで‥‥?」



変木、思わず両膝から崩れ落ちる。

対する小梅は‥‥



「ふっ‥‥また、つまらぬものをうってしまった‥‥なのです!!!」



また、調子に乗っていた。

あとでまたコツンだな。



何故、小梅が最後打つことが出来たのか。

それは言わずもがな、僕がアドバイスしたからである。


どんなカーブがどんな速さで来るのか、そして、どのコースに決まるのか。


まあ、ハズれる可能性もなきにしもあらずだったんだが、そこはやっぱり尾間加瀬さまよ。主人公補正がかかっている。



まず、どんなカーブが来るのかだが、これは十中八九『最速で変化量の一番小さいカーブ』だとわかっていた。

変木はストレートを投げない、それは誰もが知るところだ。

ゆえにストレートに限り無く近い軌道である『最速で変化量の一番小さいカーブ』は一番相手の意表を突くものとなる。


しかも、この9打席この球を変木は一度も投げていなかった。

出す場面を図っていたのだろうが、思いのほかその他の究極カーブで小梅をキリキリマイさせていたため出す機会がなかったのだろう。


だが、絶対に抑えたいこの場面。抑えられる可能性が一番高い球をチョイスしてくる。しかも、今日一度も投げていないのであれば尚更だ。



そして、問題の『どこにボールが来るか』だが、これは小梅の圧倒的な長打力を思えば自ずと絞られてくる。

下手に打球に角度がつけば、その圧倒的なパワーでスタンドインされる可能性もある。ゆえにフライは極力打たせたくない。

しかも、変木は小梅のバッティング練習を‥‥つまり、あのえげつない飛距離の打球を目撃しているのだ。フライに対する警戒心がより引き上がっていたハズだ。


なので、コースは低めの可能性が高い。それも低めのストライクからギリギリボールになるかならないかの微妙なコースへ『最速カーブ』を投げ込んでくる。


もちろん、インハイに投げ込んで詰まらせるという可能性もあったのだが、インハイは甘く入ったときのリスクが低めのコースよりもでかい。


これが2打席目とか3打席目なら話が変わってくるが、絶対に抑えたい最終打席。いくらあの変木とは言え、あと一球で小梅が手に入る。そんな局面で冒険はしないと踏んだ。



その結果が、これよ。



「‥‥負けたぜ、小梅ちゃん」



「ふふん!だからいったのです!こうめにかつのはひゃくねんはやいと!!!」



どの口が言うか。負けそうになって泣きべそかいてたくせに。



「だが‥‥」



バッ!とその場で土下座。



「内容を考えれば俺が圧倒してたわけだろ!?だから、ここは間をとって俺が小梅ちゃんの奴隷になるということで手を打たないか!?な、いい案だろ!?この通り、このとおおおおり!!!」



客観的に見て初めてわかった。

これ、まじで、ひくわ。

土下座する度にルナちゃんにドン引きされてた訳が今になってわかった。



僕は小梅の手をとり、そそくさとその場を離れた。


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