◯◯◯を甲子園へ連れてって
整列を終えベンチを早急に片付ける。
その時、ルナちゃんの姿がどこにもないことに気づいた。
探して、何か言葉をかけるべきだろうか。
それともこういう時は一人にしてあげるべきなのだろうか。
うーん‥‥わからん!どうしてあげたらいいんだ?恋愛経験ゼロの僕には皆目見当もつかない。ギャルゲーは腐るほどやってきたが、そんな知識はなんの役にもたちゃしないよ。なにが恋愛シュミレーションゲームだ!クソがっ!!現実にはセーブ&ロードは存在しないんだよっ!!!
「ここはいいから、赤藤のところに行ってこい」
振り返ると小紫が凛々しい顔つきで立っていた。
「これからの覇王高校は投打ともに赤藤を中心としたチームになる。その赤藤を支えてやれるのは‥‥尾間加瀬、お前しかいない」
この試合で高校3年間の野球人生が終わったというのに、自分がいないこれからのチームの事を考えているっていうのか?
コム‥‥お前ってやつは!お前ってやつは!
年齢は僕の方が大分上だが、お前は僕より素晴らしい人間だよ!
キャプテンシーの塊だよ!自分なりの哲学出来上がっちゃってる系だよ!
有り難う‥‥キャプテン!!!
「はいっ!わかりました!!!それと‥‥」
バッ、と頭を勢いよく頭を下げて
「短い間でしたが、キャプテンと野球が出来て楽しかったです!三年間、本当にお疲れっした!!!」
タッタッタッ‥‥
小紫に感謝の気持ちを伝え、ルナちゃんを探しに出掛けた。
‥‥‥‥‥‥‥‥
「ふん、次はプロの舞台で待っているからな。いつか対戦するその時を楽しみにしているぞ‥‥赤藤、そして、尾間加瀬」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
球場に隣接されている公園のベンチにルナちゃんが一人座っていた。
や、やっと見つけた‥‥
結構、探し回っちゃったぞ。ルナちゃんレーダーはないんだからな。
「ルナちゃん!!!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
一度僕の方を見ただけで、すぐ顔をうつむかせてしまった。
うーむ‥‥なんと言ってあげればよいのか‥‥
ルナちゃんを探している間、ずっとかけるべき言葉を探していたが、結局何も思い浮かばなかった。
こういう機転が利かないところが女の子にモテない原因なんだろうな。
「早く皆のところに戻ろう?バス出ちゃうよ?」
「‥‥‥‥‥‥なんで、なのよ」
ルナちゃんはうつむき、肩を震わせながら
「私が投げられる最高の球だった。コースも甘くなかったし、球速も今までで一番速かった。なのに打たれた。なんで!?どういうことなのよ?」
やはり、自分が涼風に負けたことを受け止められてない。
でも、ルナちゃん‥‥それじゃあ先には進めないよ?
「ルナちゃんは本当によく投げたよ!よく頑張った!だから、帰って早く練習しよう!もっと練習してあいつらよりもうまくなろう!僕も一緒に頑張るからさ、ね?」
「‥‥‥‥‥‥アンタに私の何がわかるってのよ」
ルナちゃんは、キッと僕を睨み付けて
「私はね、野球に全てをかけてきたのよ!どれだけ練習してきたと思ってるワケ?周りの皆が普通の学園生活を送っている中、血の滲むような練習をしてきたのよ。それなのに‥‥‥‥簡単に『もっと練習しよう』とか言ってんじゃないわよ!!!」
ああ、しまった‥‥
昔、何も知らない母親に「勉強しなさい!」って口うるさく言われたときに「うるせぇな!もうすでに頑張ってんだから今更そんなこと言うんじゃねーよ!」ってぶちギレたの思い出した‥‥
同じ轍を踏んでしまった、血は争えんな。
でも‥‥
「ルナちゃんの今までの野球人生に、僕はいなかったでしょ?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥は?」
「でも、これからは僕がいる。だから、ルナちゃんはもっと強くなれる。安心してよ、必ず僕が‥‥‥‥」
人生で一度は言ってみたかったセリフを言ってみる。
「ルナちゃんを、甲子園に連れていってあげるよ」
決まったか!?決まったよな!!!
くぅーーーーっ!!!気持ちいい!!!一度は言ってみたかったんだよなあ!まさか、こんなところで機会が回ってくるとは。
でも、適当なこと言ったワケじゃないぞ。
ルナちゃんは明らかにゲームと比べて能力の成長が著しく速くなってる。多分、友情イベントが起こったことによって能力の伸びが加速してるんだ。
だから、ルナちゃん。僕とイチャイチャしていれば、野球、もっとうまくなるぜ?
同じ感じで、固有キャラ全員に友情を育めば、皆ルナちゃんのように急成長を遂げ、能力が覚醒するハズだ。
そうなれば、打倒泡沫の夢も見えてくる。
幸いにも期間は十分にあるんだ。じっくり育成していけば、勝てない相手では決してない。
「‥‥ぷっ!あはははっ!!!」
ん?ルナちゃんがなぜか笑いだした。
可笑しな事を言ったつもりはないのだけれど?
「アンタ、ほんと馬鹿犬ね。セリフがマジでイミフすぎ。ここまで、馬鹿だと逆に可愛く思えてくるわ」
し、失礼な!
僕はきちんとした根拠を持って発言しているのであって、適当な事を言ってるんじゃないぞ!!
友情イベントとか言ってもどうせ伝わらないだろうから、根拠を話すことはできないけどさ。
「でも‥‥」
ルナちゃんは立ち上がり僕のそばに寄ると僕の頭をわしゃわしゃとなで回した。
え!?なになに!?いきなり、なんなの?
「お陰で、元気出たわ。ありがとね、駄犬」
見るものを全てを魅了するような天使の笑顔をそこに見た。
うむ、可愛いです。
なんや、ようわからんが、笑顔になってくれてよかった!
マンガの知識とゲームの知識しかなかったけど、なんとかなったわ。
「ほらっ、早く行くわよ駄犬!あんまりモタモタしてるとアンタだけバスに紐くくりつけて走って帰らすわよ!」
さっきまで落ち込んでいたルナちゃんは何処へやら。
二人で意気揚々と、皆のもとへ戻るのであった。




