涼風たちの想い②
「野球で決着?どういうことだ、涼風?」
「うん。もし、この試合マスターたちが勝ったら、マスターを元の世界に戻してあげるっ!マスターは元の世界でこれまで通りの生活を送れば良いよ。でも、もし涼風たちが勝った時は‥‥」
勝ったときは‥‥?
「マスターには『涼風たちを倒す』っていう夢を追いかけてもらうよっ!」
はひ?涼風たちを倒す‥‥夢?
「ごめん、涼風。それってどういう‥‥」
「うん。この試合、多分ね、涼風たちが勝つと思うの。それも、圧倒的な実力差で‥‥だからマスターにはそのあと、血の滲むような努力をして、仲間たちと最高の友情を築きあげて、この卒業するまでの3年間の間に『涼風たちを倒す』っていう奇跡を起こしてほしいのっ!」
‥‥なるほどな。確かに、戦力差は天と地ほどの差がある。なんたって、最高峰の熱プラーであるこの僕が手塩にかけて育成したキャラクター達だ。それを倒すっていうのは、確かに『奇跡』と呼べる代物だろう。
「そんな奇跡を起こせるなら、きっと、マスターは元の世界に戻ってもキラキラになれると思うの。涼風たちの好きな‥‥マスターにね‥‥戻ると、思うの‥‥だからっ‥‥」
「涼風、わかった。僕が悪かった。だから‥‥‥‥泣かないで?美人が台無しだぞ」
「えっ‥‥‥‥?」
涼風は泣いていた。赤く滲んだほっぺに涙が一筋。
僕を想い、僕の為に泣いてくれているのか‥‥
でも、それはきっと涼風だけじゃなくて、僕が作ったキャラ達全員がそう想ってくれているのだろう。僕には、わかる。親みたいなもんだからな。
「ふにゃっ‥‥!?ま、マスター?」
偶然持っていたハンカチで涼風の涙を拭ってあげた。
良かったぁ!ハンカチ王子を意識してケツポケに入れていたのが功を奏した。
頬を赤く染めて、恥ずかしそうにする涼風を見ながら、この世界に来る前の自分を振り帰る。
涼風の言ったことは、全部正しい。
僕は、これまでの生活に何の満足もしていなかった。
何かが足りないなと思ってた。自分の人生、こんなもんじゃないハズだって、心の奥底でずっと思ってた。
それを、「こんなもんだろ」っていう言葉で蓋をしていただけだ。
もっと、自分らしく生きたい。毎日充実感とか遣り甲斐とか、そういうの感じながら生きていたい。
この涼風たちから受けた試練を乗り越えられるくらい、大きく成長することが出来たら‥‥
僕の人生、少しは、変わるのかな
「涼風。その勝負、乗ったよ。ただ、今日の試合、負けるつもりはないからな!」
真っ直ぐに涼風を見据える。涼風は、にぱーっと可愛らしい笑顔で
「よろしいっ!全力でかかってきなさい!!!あははっ、今のマスター、少しだけ昔のマスターに似てるっ!じゃあ、もうすぐ試合始まるから、涼風、戻るねっ!」
タッタッタッ‥‥
行ってしまった。本当に台風みたいな子だな‥‥
僕も、早く戻ってルナちゃんに謝らないと。
土下座、しとくかな‥‥




