涼風たちの想い①
人目のつかない場所に移動した。ここなら、周りの目を気にせず話が出来るか。
「あのね、マスター。」
切り出したのは涼風だった。
「マスターをこっち側に呼んだのは、涼風たちなの。」
マジか‥‥そんなおとぎ話のような事が実際に起こるとはな。
確かに、熱プロで選手を作成する時たっぷりの愛情と真心を注ぎ込んでいたが、まさか生命まで吹き込んでしまうとは‥‥いやはや、僕の熱プロ愛は本当に恐ろしいな。狂気じみてる。
「何でか、わかる?」
え!?何でって、そりゃあ‥‥
「僕に会いたかった‥‥から?」
「あははっ!確かにそれもあるっ!涼風、マスターに会えてすっごく嬉しいよっ!」
ころころと笑う涼風。うむ、笑顔が可愛くてよろしい。
「でも‥‥それだけじゃ、ないんだ。」
さっきまでころころ笑っていた涼風の雰囲気が変わった。
少し、悲し気な、そんな感じ。
「見てられなかったの。最近のマスターを‥‥」
「ん?見てられなかったって、どういう‥‥」
「涼風たちを作ってくれた時のマスターは‥‥まだ学生だった頃のマスターは、すっごく輝いてた!野球選手になりたい、ミュージシャンになりたい、イラストレーターになりたい‥‥とか、いつも目指してるものがあって、毎日楽しそうだった!」
ああ‥‥学生の頃は確かに、そんな感じだったな。
「でも、最近のマスター、全然キラキラしてなかった。目が死んだサカナみたいだった。毎日同じことの繰り返しで、全然楽しそうじゃなかった。一体、どうしちゃったの、マスター?あの頃のマスターはどこに行っちゃったの?」
グサッ!
と心にナイフが突き刺さった気がした。涼風に言われたことは僕自身、一番感じてた事だ。でもさ、涼風、世の中そんな甘くないんだよ。
「涼風。心配してくれて有り難う。本当に嬉しいよ。でも、夢を追いかけられるほど、この世の中は甘くないんだ。やりたいことをやれる人間なんて、ほんの一握りさ。後の人間はやりたくもない仕事を、生きるためにやり続けるしかないんだ。それが、社会に出るってことなんだよ。夢を追いかけるのは、本当に難しいことなんだ。」
諭すように涼風に語りかける。だが‥‥
「マスター。そんなつまんない人生、本当に望んでるの?」
涼風は僕の目を真っ直ぐ見つめて、そう言った。
「涼風は、いや、涼風たちは、そんな何もかも諦めたような人生送ってほしくない。だから、会いに来たの。」
こころが、いたい‥‥
いたすぎて、もうはなしを、ききたくない。
「涼風。それは、お前がゲームのキャラクターで、社会に出て働いたこともないから言えることだろ?そんな、綺麗事はなんの役にも立たないんだ!人生なんてのは、大体そんなもんなんだよ!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
僕の言葉を聞いた涼風は、一瞬すごく寂しそうな顔をしたが、すぐに顔を上げて再び僕を真っ直ぐに捉えた。
「マスター、ここは野球ゲームの世界だよ。だからね‥‥」
涼風は決意の籠った強い眼差しで
「野球で勝負をつけよっ!!!」




