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野球ゲームの世界に飲み込まれました。  作者: kaonashi
第1章 ~はじまり、はじまり~
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今日は、ありがとう!!!!!!!!!


只野との電話のあと、15分くらいしてルナちゃんが戻ってきた。

泣き腫らしたような目をしていたが、ほんとに大丈夫なんだろうか?

ルナちゃんが喜ぶかな?と思って発した言葉が、まさかこんな事態を引き起こすとは‥‥。



き、嫌われちゃったかな‥‥?ちょっと、ナイーブなところに土足で踏み込み傷つけてしまった、という可能性も考えられる。



ルナちゃんが戻ってすぐに「きょ、今日は身体の具合が良くないみたいなのっ!だから悪いけど帰ってくれる?」と言われて、心が砕けそうになった。



間違えたのか!?僕は選択肢を間違えたのか!?

くそっ、セーブしておけば良かった!セーブ&ロードがこれほど恋しいと思ったことはない。

あ、でも確か熱プロは途中でリセットするとペナルティーがあるんだよなぁ。



――――――――――――――――――――――



近くのバス停までルナちゃんが送ってくれるということだったので、一緒に行くことに。

よし、この帰り道でなんとかフォローせねば。◯木花道のリバウンド技術に倣うんだ!自ら取る!




「あ、あの‥‥ルナちゃん?今日は、なんか、ほんとごめんね。嫌なこと思い出させちゃったかな?」



「いや‥‥別にそんな事は、ない、けど‥‥」



「そ、そっか‥‥なら、いいんだけど‥‥」



やばい、会話が続かない。

いつもの軽快な「ご主人様と犬っころ」トークも鳴りを潜めている。まずい、まずいよぉ。こんな時カリスマホストなら小粋なコールとかでアゲアゲ♂な感じにするのかなあ。



がんばって話しかけるが、一言で終わるというのを繰り返しているうちにバス停に付いてしまった。さらに運の悪いことに、丁度バスが停留所に止まるところだった。



しょうがない、今日は諦めよう。

だが、明日は決勝戦だ。勝てばこのもやもやした感じもいい感じに忘れ去られて、またいつもの関係に戻るさ。

うん、なんか元気出てきた。要は、勝ちゃあいいんだろ?勝ちゃあ。



「じゃあね、ルナちゃん。今日は少しの時間だったけど本当に楽しかった。誘ってくれて有り難う!お父さんとジュニアによろしくね!」



「‥‥‥‥‥‥‥‥」



ルナちゃん、うつむいたまま返事がない‥‥。

しょ、しょうがないさ。切り替えて、明日、また頑張ろう。

あし~たがある~さ明日がある~♪わか~い僕に~は夢が‥‥ある‥‥グスッ‥‥。




ルナちゃんに背を向けてバスに乗り込もうとした、その瞬間




「今日は、ありがとうっ!!!!!!!!!」




えっ!?ルナちゃん?



驚いて後ろを振り返る。

大きな瞳を潤ませて、ほっぺたを赤く染めたルナちゃんは僕を真っ直ぐに見つめて




「すごく、嬉しかったからっ!わ、私の犬になるって言ってくれて‥‥すごく嬉しかったのっ!話しはそれだけだからっ!じゃあね、駄犬!」



タッタッタッ‥‥



‥‥‥‥



駆け足で去っていった。その走り行く後ろ姿から目が離せなかった。

早くバスに乗れと運転手がクラクションを鳴らす。一部始終を見ていた乗客がざわついてる。しかし、そんな事はどうでもよかった。



この夢がいつまで続くのかは分からない。

でも、必ず別れの時が来る。僕らは住む世界が違うから。

その時まではずっと、この夢が終わるまでずっと、



僕は、君の犬であろうと思う。



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