願い事、ひとつだけ
僕は今、猛烈に感動している。
僕のエラーで招いた最悪のピンチの場面。
それを、ルナ様はたった7球で片付けてしまった。
あのまま逆転負けしていたら本当に一生消えることのない傷となっていただろう。いや、この世界が僕が見ている夢のようなものだとはわかっている。それでも、小紫を始めとして3年生の先輩方の青春を僕のせいで終わらせてしまうというのは、辛すぎる‥‥。
ルナちゃんに謝らなければ、そして、何か恩返しがしたい。
こういう時に何をしてあげたら良いのだろうか?現実世界でアニヲタ、ゲーヲタで女の子と付き合ったこともない僕には皆目見当もつかない。
「2-3で、覇王高校の勝利。お互いに、礼!!!」
「「「あっとうざしたあああ!!!!!!」」」
試合が終わり、ベンチに戻る。よし、ルナちゃんに感謝の想いを伝えなきゃ!
「ルナちゃん!いや、ルナさまああああああ!!!」
「きゃあああ!!!」
いかん、いきなり背後から大声で声を掛けてビックリさせてしまった。
最近、どうも感情のコントロールがうまくいかんな。ルナちゃんにマウンドから声かけられたときも泣いちゃったし。
「もう!誰かと思ったら、駄犬じゃない!いきなり声掛けないでよね!しかも、『ルナ様』って何よ!そんな呼び方、許した覚えはないわよ!」
「あっ、ごめん‥‥。心の声がつい。それより、今日の試合!」
バッ!!!
「ちょ、ちょっとアンタ!」
一瞬にして土下座。謝るときは土下座が一番気持ちが伝わりやすいのだ。文字どおり土の上だから、効果も倍増だろう。
チームの皆、のみならず相手チームも向こうベンチからチラチラと僕らの事を見ているが、そんな事は些末なことさ。
「ほんっ、とーーーーーに、ゴメン!!!ルナちゃんを助けるとか格好いいこと言っといて、逆にルナちゃんの足を引っ張っることになって‥‥。僕は猛烈に反省しています!!!」
「い、いいからとりあえず土下座やめなさいっ!恥ずかしいでしょっ!?人の迷惑も考えなさいよ!」
あれ、土下座が逆効果?おかしいな、土下座には全ての物事を解決する力が込められているハズなのに‥‥。
ルナちゃんに土下座を諌められた僕はとりあえず普通に話すことにした。
「エラーした後も、マウンドから声掛けてくれたよね?あれ、凄く嬉しくてさ‥‥。本当に勇気をもらったよ。改めて、有り難う!」
「あ、あれはアンタがあまりにも落ち込んでるのまるわかりだったからしょうがなくよ!チームの雰囲気を悪くしないためであって、別に、アンタを励まそうとしたわけじゃないんだからねっ!」
ルナちゃん‥‥。ツンデレが大道すぎるよぉ。でも、それが、いい!!!
ごほんっ、いかん、そこは本筋じゃない。
「お詫びに、何かさせてほしいんだ!恩返しがしたいんだ!ルナちゃん、僕にしてほしいこととかないかな?」
「‥‥えっ!?してほしいことってアンタ‥‥。そんなこと急に言われても‥‥。」
ルナちゃんは顔を赤らめて、急にモジモジし始めた。ん?なにかしてほしい事があるのかなあ?おじさんに、なあんでも話してごらん?
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ほしいの。」
「え、何だって?」
突発的難聴に陥ったわけじゃないぞ。本当にルナちゃんの声が蚊の泣くような声で聞こえなかったんだ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥っ、だから!!!」
ルナちゃんは意を決したような顔で、真っ直ぐに僕を見つめて
「私の家に遊びに来てほしいの!!!!!!」
‥‥‥‥え、何だって?




