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野球ゲームの世界に飲み込まれました。  作者: kaonashi
第1章 ~はじまり、はじまり~
24/78

桃色の香り


打った後、すぐには走り出さない。

打球がスタンドに入るのを見届けてからゆっくりとダイヤモンドを走り出した。



いわゆる、「確信歩き」

プロ野球でも一部の強打者にしか許されていない特権だ。




ルナさま、ぱねぇ‥‥。ぱねぇよ、ルナさま‥‥。




ダイヤモンドを回るルナちゃんを見ながら、熱プロにおけるルナちゃんの野手能力を思い出した。




左打ち

ミート C

パワー A

走力 C

肩力 A

守備 C




これは1年時の能力で、3年時にはミートがAまで上がる。

ルナちゃんは、優秀なピッチャーであると同時に、超優秀なバッターでもあるのだ。



覇王高校編プレイ時にピッチャーを育成する場合、守備適正の無いルナちゃんをファーストやレフトで起用するという行為は、熱プロ11ではあるあるネタのひとつとしてよく語られる。



それほどに、ルナちゃんの野手能力はずば抜けている。

プロ野球で言えば、打率.340 ホームラン35本打つくらいのポテンシャルを秘めているのだ。




ダイヤモンドを回り、ベンチに帰って来たルナちゃん。




早速、話しかける


「ルナちゃん、凄いよぉ、凄すぎるよぉ。どうやったらそんなバッティングが出来るの?教えて、教えて!」



興味津々という感じでルナちゃんにまとわりつく僕に、まんざらでもない笑みを浮かべながら



「しょうがないわね。今回は特別に、アンタみたいなダメ犬でも分かるように教えてあげるわ。バッティングってのはね、スン‥‥と構えて、ぎゅーーーーっとボールを呼び込んで、グシャッってバットでボールを叩き潰すのよ。その時、腰はギュルルルルルルって、感じで回転させるの。」




駄目だ、ピッチング同様「完全感覚」でいらっしゃる。

天才ってのは、みんなこんな感じなのか?ドリーマーなのか?




その後打線が繋がり、緑谷、小紫の連続タイムリーで2点を追加。初回から3点のリードを奪う上々のスタートとなった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



1回裏、ルナちゃんの立ち上がり。

先頭打者にフォアボールを出すも、続く打者を三者連続三振。



絶好調だな、ルナちゃん。ストレートも最初対決した頃よりも速くなってる。多分、150キロは越えてるんじゃないか?しかも、今はただのストレートじゃない。ホップするストレート「ルナティックミサイル」だ。それに、変化量の増したフォークボールもある。


ルナティックミサイルに気をとられて、フォークで三振。追い込まれてフォークを気にしているとルナティックミサイルが飛んでくる。




うーむ‥‥

東西高校ごときでは、打てんだろうな。

悪く思わんでくれよ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



そして、2回表。


またもや打線が繋がりノーアウト1、2塁。絶好の追加点のチャンスに、あの男がいよいよ打席に立つ。



全てが謎に包まれし天才。



尾間加瀬だ。




緊張と興奮の狭間、冷静と情熱の間の状態でベンチから打席に向かおうとすると、




「待って、尾間加瀬くん!」




振り返ると、ベンチでスコアをつけていた桃香ちゃんが立っていた。



「どうしたの、桃香ちゃん?」




桃香ちゃんは、申し訳なさそうな顔で




「あの、実は尾間加瀬くんに謝りたいことがあって‥‥。監督に尾間加瀬くんの事話したの、私なの!」




いや、それは、前から知ってたよ。あのじいさん「娘から聞いたが」ってバッチリ口滑らせてたからな。




「それが、まさか、外野手で試合に出ることになるなんて思わなくて‥‥。尾間加瀬くんに迷惑かけちゃったかなって、ずっと気になってたの。あの‥‥本当に、ごめんなさい!」




頭を下げた際に、桃色のショートカットが揺れる。こんな、可愛い女の子に謝られると、「そんなことないよっ!」って全力でカバーしたくなるな。うん、やはり、「可愛い」は正義だな。




「いや、桃香ちゃんが謝ることじゃないよ。それに、そのお陰で試合に出れることになったし。むしろ感謝したいくらいだよ!有り難う、桃香ちゃん!」




半分嘘で、半分本当だ。

確かに試合に出て活躍出来るのは嬉しいが、慣れないポジションでとんでもないミスをして、一生消えない心の傷を負う可能性もある。




でも、そんなことは口が裂けても言えない。

可愛い女の子の悲しむ顔は‥‥見たくないのさ。

桃香ちゃん、君に涙は似あやっ!?やべ、噛んだ



「そう言ってくれると‥‥助かるよ。じゃあ、頑張ってね!私、尾間加瀬くんのバッティング見たとき、凄い可能性を感じたの。近い将来、凄い選手になるって!だから、頑張ってね!」




花のような笑顔を僕に向けてくれた。あ、いい匂いがする、フローラルの香りかな?





不意に見せられた笑顔に、ちょっとドギマギしていると






「‥‥‥‥‥‥‥‥‥チッ。ねぇ!いつまで話してるのよっ!速く打席に向かいなさい、駄犬!」






ルナちゃんに怒られた。

うわっ、めっちゃ不機嫌になっとる!?

なんか気に触るようなことしたかな?もっと、スピーディーに試合すすめようってことか。運営サイドの気遣いをしているのかな?





これ以上、ルナちゃんの気分を害する訳にもいかないので、駆け足で打席へと向かった。



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