ル、ルナさま‥‥
甲子園へ行くための県予選が始まった。
今日はその一回戦目だ。
相手は東西高校。熱プロで一回戦か二回戦にランダムで出てくる雑魚高校だな。CPUレベルは「弱い」
ちなみに、僕の背番号は7。主にレフトで起用される様子。
しかし、背番号貰うときの空気がとんでもなく重かったな。
「外野手の練習なんかしてないくせに、なんでレギュラー選ばれてんだよ。なめてんのか?」
っていう波動をひしひしと感じた。
えっ、イジメられたりとかないよね?熱プロにそんな残酷リアル描写なかったはずなんだけど‥‥。まあ、普通に考えたら、先輩からしごかれても不思議はない。出る杭は打たれるのが定めなのだ。
おっと、佐出が出てきたな。
「全員揃っているようだな。それでは今日のスタメンを発表する。」
1番 赤藤 投
2番 池山 遊
3番 緑谷 右
4番 小紫 中
5番 宮出 一
6番 土橋 二
7番 川端 三
8番 米野 捕
9番 尾間加瀬 左
僕だけ、名前がイカれてる。4文字ってなんだよ。しかも、読み方オマカセって。明らか浮いちゃってるよ。なんで、皆そこんところ突っ込んでくれないんだろう?
それにしても、「1番ピッチャー赤藤」って。◯谷かよ。
あの老害監督、ちょっと面白がってオーダー組んだんじゃないのか?個性出してんじゃないよ、勝利に徹しろや。
と、不平を頭のなかで漏らしていると、ルナ様が例の如く、意地悪するぞーっていう笑みを浮かべながら寄ってきた。
「ちょっと、駄犬!私の足だけは引っ張らないでよね。アンタ外野手の練習なんかまるでしてないんだから、怖くてレフトには打たせられないわ。マジで、エラーしたら、分かってるでしょうね?」
ちょっと、ルナちゃん!むしろエラーしたくなるようなこと言わないでよね。そんなじと目で見られたら‥‥たまんないです。
面白い切り返しを頭のなかで練っていると、
「そこら辺にしておけ、赤藤。奴だって望んで外野手になった訳ではない、それはお前が一番よく分かっているだろう?」
「いや、別に私は‥‥。チッ。」
ルナちゃんが去っていく。おい、小紫。余計な事してんじゃねーよ。僕がこのやり取りをどれだけ楽しみにしていると思っている?優しさの押し売りか?優しさってのはな、売りゃあいいってもんじゃねーんだ。
「あ、有り難うございます‥‥。小紫先輩。」
「ふん、気にするな。初めての公式戦で不安だとは思うが、お前のミスは俺たち全員でカバーしてやる。自由にプレーしてこい。」
ふむ‥‥。ルナちゃんとのやり取りを邪魔されてついカッとなってしまったが、こいつ、いい奴だな。ビジュアル系みたいな外見してるし、さぞ、モテるだろうな。多分、僕が女子だったら、初公式戦の不安も相まって、吊り橋効果で惚れちゃうかも‥‥。
「さぁ、整列の時間だ。いくぞ。」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
記念すべき、緒戦の火蓋が切って落とされた。
公式戦自体小学校以来だけど、大丈夫かなあ‥‥。とんでもないミスやらかしそうで怖い。うっ‥‥胃が‥‥。
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うちは先攻になった。一番打者のルナちゃんが打席に向かう。
「ルナちゃん頑張ってね!あの程度のピッチャーならルナちゃんならぜっっっったいに打てる。期待してるよ!」
僕の声援にルナちゃんは大げさなため息をつきながら
「あのね、ダメ犬。これから打席に向かおうって時になんでそうやってプレッシャーかけるワケ?その言葉で私が力んで凡退したらどうするのよ?ただでさえレフトにザルを背負ってる状態だってのに。あと、それから‥‥」
「バッター!速く打席に入りなさい!」
「あっ、ごめんなさい、今すぐ行きますっ!‥‥もう、アンタのせいで怒られたじゃないのよっ!あとでお仕置きだからね!」
いかん。ルナちゃんに無駄なプレッシャーかけてしまったのか‥‥。僕としたことが‥‥。
「あっ‥‥。ごめんね、ルナちゃん‥‥。でも、頑張って欲しくて‥‥。」
ショボくれた僕の顔を見て、ルナちゃんは
「ふふっ。言われなくても、分かってるわよ。アンタはそこで見てなさい。」
打席に向かうルナちゃんの顔はどことなく、嬉しそうだった。
ルナちゃんが打席に入る。
独特の神主打法。小◯原にそっくりのそのフォームからとんでもない威圧感が出ている。
ピッチャーもどことなく萎縮しているように見える。マジ、半端ないな、ルナ様。
相手ピッチャー、振りかぶって第一球を‥‥投げた!
あ、コースが甘い‥‥
ガキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!
え、え、え!?
マジで!?
打球はどんどん小さくなり、センターバックスクリーンへ突き刺さった。
初回先頭打者初球ホームラン。
ル、ルナさま‥‥。




