赤藤ルナの追憶②
「あ、あの!俺と付き合ってください!」
中学に上がってから、こういうことが増えた。
ほら、私って可愛いじゃない?小学校の時も可愛かったけど、中学に上がってからそこに綺麗さが足された、みたいな?まぁ、一応見た目にも気を使ってるし、そこら辺の芋とは違うわよね。
でも、こうやって見てくれだけで判断してエゴを押し付けてくるクズみたいな奴には制裁を与えないとね。
「あのさぁ‥‥アンタはいいわよ。私みたいな可愛い女の子と付き合えたら一生の自慢だしね。だけど、私はどうなの?アンタと付き合って私に何かメリットがあるワケ?」
「いや、あの、それは‥‥。一緒に遊んだりとか、話したりとかして、楽しい時間をつくってあげられる‥‥かな?」
「なにそのテンプレートそのまま読み上げたみたいな回答は?センスの欠片も無いわね。今の受け答えでわかったわ。アンタに私を楽しませることは出来ないってね。付き合うっていうのは互いに高め合える関係になるってことでしょ?だっていうのに、そもそもアンタ私より頭悪いじゃない?速い球も投げられないでしょ?うん、やっぱりどう考えてもアンタと付き合う理由が見つからないわ。ごめんなさい。」
「あ‥‥だよね。ハハハ、ごめん迷惑かけて‥‥。」
とぼとぼと背を向けて帰っていく。
本当に私と付き合う気あったのかしら?情けないわね。一度断られたとしても何回も切り返して、付き合ってくれなきゃ死ぬくらいの気概を見せなさいよ。世の中には101回プロポーズした変態もいるのよ?まあ、付き合う気は毛頭無いんだけどさ。
それを見ていた野次馬女子どもが
「うわぁ、真中くん可愛そう。」
「D組の稲葉くんもこっぴどく振られたらしいよ。」
「ちょっと可愛いからってお高く止まってんのよ。怪物のくせに。」
「そういえば、あの子、男子よりも速い球投げられるんだって?」
「まじ、キモいんですけど。性転換して男にでもなれっての。」
「「「キャハハハ」」」
ギロっ
「「「ひぃぃ!?」」」
一目散に逃げていった。群れることでしか意見を言えないの?
小学校の時もそうだったけど、中学校に上がってからさらに妬まれることが多くなった。
なんで、人の事を素直に称賛できないのかしら?自分を高めることをしないで、他人を貶める事に躍起になる。下らない。本当にどいつもこいつも、不愉快だわ。
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タッタッタッ‥‥
「わん!」
「ふんっ。また、エサをねだりに来たのね駄犬。その前に‥‥待て!」
「わん!」
エサを前に、待ての指示を出す。犬はしつけが命よ。どっちがご主人様か分からせてあげないと後で大変なことになるわ。
「じゃあ、私お風呂入ってくるから。」
「‥‥!?わ、わ、わん!わん!わん!」
「わかってるわよ、卑しい駄犬ね。そんなにこのドッグフードが欲しいの?そんなに高いものじゃないんだから、自分で働いて買ったら?首から『お小遣いちょうだい』っていうプレート下げて街の中さまよったらそれくらい稼げるんじゃないかしら?」
「クーーン‥‥」
「ふふっ、冗談よ。食べてよし!」
「わん!」
犬はいいわ。だって嘘をつかないもの。人の事を妬むこともしないし、裏表がないわ。可愛いしね。
この時の私は本当にオマリーに支えられていたわ。
ただ、この時オマリーはもう老犬。身体の調子も悪くなってて、一日中じっとしていることも多くなってた。
そして、当たり前のように別れの時が来たわ。
シニアリーグの県大会決勝。この試合を勝てば全国に行けるっていう大事な試合の日にオマリーは死んだ。
本当に、最後の最後まで駄犬だったわ。よりにもよってそんな時に死なないでよ。私の勇姿を、マウンドで躍動する姿を、全国のキップを手にするその瞬間を、ちゃんと見てから行きなさいよ。
絶対、負けられなくなっちゃったじゃない‥‥。もし、負けたらアンタのせいで負けたみたいになっちゃうじゃない。
もう‥‥。変なプレッシャーの掛け方、しないでよね‥‥。
オマリー‥‥。
その日、私は1安打も打たれなかった。いや、打たせなかった。
駄犬には過ぎた餞かもしれないけれどね、一応、この勝利はアンタにあげるわ。
この日のピッチングが覇王高校スカウトの目に留まり、私は覇王高校に特待生で入る事になったわ。
そこで出会ったのが‥‥
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タッタッタッ‥‥
「おっはよう!ルナちゃーーん!!今日もいい天気だね。ルナちゃんの髪の毛が大陽の光で真っ赤に輝いてるよ。綺麗だなあ!」
「おはよう、駄犬。今日も相変わらずキャンキャンうるさいわね。罰としてドリンク買ってきなさい、今すぐ。」
「えええええっ!?話しかけただけなのに!?わかった!マッハ5で行ってくるね!」
タッタッタッ‥‥
ふふっ。オマリーの生まれ変わりかしら?




