ツンデレはやはり正義
試験後、通常練習に戻ろうとしていると
「おい、貴様。尾間加瀬と言ったか?」
うぉっ!?小紫から話しかけられた。しかもいきなり貴様呼ばわりかよ。言っとくけど、僕の方が社会において先輩だからな。お前そんなビジュアル系みたいな外見しているけど、まだ親の扶養だろ?
「あっ、小紫先輩!チワーッス!何か用ですか?」
「貴様、どこでそんな技術を身につけた?ヒョロヒョロのその身体でどうして160キロ近い球を弾き返せる?」
いや、何故と言われましても‥‥。困る、非常に受け答えに困る。ほんとに、ただのゲーマーなんだけど。まあ、指にタコが出来るくらいにはやりこんだが。
返答に困り、まごまごしていると
「ふん、まあいい。そう簡単に手の内はさらせない、そういうことだろ?」
あ、勝手に深読みしてくれた。ありがたや、ありがたや。
「すみません。あっ、ちょっと自分用事思い出したんで行きますね!それでは!」
脱兎の如く走り出す。この前の桃香ちゃんといい、本当に詮索は困るなあ。「チームの勝利には貢献してやる、ただ、僕の詮索はするな」って思いきって言ってみようかな。
「尾間加瀬か‥‥。赤藤ルナといい、今年の1年は面白いな。今年の夏は、期待できるかもしれん。全国制覇を。」
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通常練習をするため、メイングラウンドへ戻るとマイラブリーエンジェルルナちゃんを発見した。
「おーい、ルナちゃーーん!」
タッタッタッと駆け寄る。可愛らしい犬のように近寄るのがルナちゃんから可愛がられるポイントのひとつだ。最近、発見した。
僕に気づくと、ルナちゃんは不機嫌そうな顔で僕を睨んだ。
あれ、なんか様子が、おかしいぞ。
「駄犬。そこに正座しなさい。」
え?あの、土の上なんですが
「早く。」
おすわり、と命令された犬のように素早く正座。
「アンタ、何で外野手の試験なんか受けてるのよ?」
ひぃぃっ!?その件か!
「ち、違うんだ、ルナちゃん!聞いて!僕はそんなつもり全くなくて、投手の試験場所に行こうと思ったら監督から外野手の試験受けろって命令されて、断れなくて、それで‥」
「言い訳は、それだけかしら?」
ええええええ!?全く聞いてない?今の話聞いてたら、僕が悪くないってこと、わかるでしょ?
「私が、手取り足取り、限られた時間を使って、アンタにピッチングを教えてあげたのに。私の費やした時間は何だったワケ?アンタ、投手やる気ないの?」
やばい、結構キレてる。この修羅場を乗り切るための何か良い策はないか?考えろ、クールになれ!こんな時こそ、クールになれ。ルナちゃんを納得させる道が必ずあるハズだ。
思考を巡らせながら、重い口を開いた。
「ルナちゃん、僕は投手一筋だよ。それ以外のポジションは考えてない。」
「だったら、なんで断らなかったのよ!」
スー‥‥と息を大きく吸い込み
「君の力になりたかったんだ!!」
「‥‥えっ?」
怒りに満ちていたルナちゃんの表情がきょとん顔になる。
よし、流れが変わった。
「入部してから今に至るまでルナちゃんは沢山の事を僕に教えてくれた。キモいっていいながらも練習に付き合ってくれたし、野球部で一番多くの時間を過ごしたのは間違いなくルナちゃんだ。」
「そ、それはアンタが教えて、教えてってうるさいからでしょっ!仕方なくよ!」
顔を赤らめながらそんな事を言う。くーっ、可愛ええなあ。
こほん、
「だから、今度は僕が恩返ししたい。もしも、ルナちゃんが試合で1点取られたら、次のイニングで僕が必ずタイムリーを打ってやる。もしも、ルナちゃんのスタミナが切れて投げれなくなったら、僕が外野からマウンドに上がってあげる。」
そして、ルナちゃんの目を真っ直ぐに見つめて
「君と1試合でも多く、試合がしたいんだ。」
「!?」
ルナちゃんは顔を真っ赤にしてあわあわしながら、
「は、はあ!?意味わかんないしっ!全く意味わかんないしっ!も、もういいわ。今回だけは大目に見てあげる。じゃ、じゃあ私練習もどるからっ!!」
タッタッタッ‥‥とルナちゃんは向こうに行ってしまった。
‥‥‥‥‥‥
ルナちゃんルート、入ったか?




