外野手試験
球悪童の試験は10球ということにさせてください。
どうやら、桃香ちゃんが僕とルナちゃんの勝負を監督に報告したらしい。
しかし、外野手か‥‥。
当然、僕は投手の能力しかあげていないし、サブポジショに外野手をつけているわけではない。
つまり、なんの適正もない。
熱プロにおいて、適正ないポジションを守らせると守備能力がさがりエラーが多発するというペナルティがある。
僕の守備力はE、肩力はDだが、これが外野手を守ってしまうとそれぞれ一段階ずつくらい下がってしまうのだ。エラー回避能力も下がる。
うーむ。エラーが怖い。
蘇る小学生の時の記憶。落下地点を間違えて「バンザイ」してしまったこと。外野に転がってきた打球をそらしてしまい、チームメンバーから冷たい目で見られたこと。
まあ、監督に逆らえるわけもなく、不安を圧し殺して
「あ、はい。」
って言ってしまったが、くー、胃が、いたい。
暗い顔でとぼとぼと歩いていると、気がついたら外野手の試験場所にたどり着いていた。
もうすでに、全ての選手が集まり試験が始まろうとしている。
やべぇ!?
「それでは、これより試験を始める。それではまず‥‥」
「あっ、すみません!!自分も参加します!遅れてすみませんでした!!」
ギロっ
全員の目線が僕に注がれる。
「なあ、あいつってルナちゃんのマネージャーだろ?」
「一説によればあいつのオヤジがルナちゃんのお父さんに莫大な借金を抱えているらしいぜ。それで、何も言い返せないんだと。」
「かーっ!!その立場を利用して、ルナちゃんに近づくなんて、とんだクソドM野郎が。」
全部、聞こえてますよー。まあ、ドMは事実なので、否定はしない。
「ほう、お前が佐出監督が言っていた‥‥。いいだろう、列に並べ。」
なんとか、コーチの許可がでた‥‥。
外野手からはランキング1位~3位の選手がスタメンとして選ばれる。
本来、ここで選ばれるのは
小紫省吾《こむらさきしょうご》 (3年・センター)
緑谷琢磨《みどりたにたくま》 (2年・ライト)
この二人は確定。いわゆる、固定キャラだな。
ちなみに、3年小紫先輩がこのチームのキャプテンだ。
そして、後の一人はその時々のモブキャラが入るのだが、今回はそこに割り込めるかどうかが問題になる。
つまり、枠は一つだけ。
なかなかにシビアな戦いではある。はたして、ミートGパワーFでどれだけ行けるだろうか。
思案に耽っていると、コーチから試験内容が発表された。
「では、試験の内容を発表する。お前らにはこの特注ピッチングマシーン『球悪童』と勝負してもらう。通常のヒットは4点、外野を越えるような長打は6点、ホームランは10点。得点の上位3人を次の大会のレギュラーとする。」