ま・さ・か
いよいよ、ランキング選の日を迎えた。
いつもは、ルナちゃんにデレデレのダメ男だが、今日の尾間加瀬は一味違うぞ。
一年生の無名投手が彗星のごとく現れ、超強豪高校のエースとして大活躍。
本来その役目はルナちゃんのハズだが、僕のプレーヤースキルをもってすれば今の能力だとしてもランキング1位になることは可能だ。
ルナティックミサイルの1件で、若干ゲームの内容と実際の内容に齟齬があることがわかった。
ワンチャン、あるんでねーの?
ウッシッシ、と気味の悪い笑みを浮かべていると只野が話しかけてきた。
「ついに、このときが来たでござるな、尾間加瀬殿!拙者この日のためにひたすら走塁に力をいれてきたでござる。スタメンは無理だとしても、奇跡のベンチ入り目指して頑張るでござるよ!」
ゲームの情報で言うと、只野がベンチ入りするのは夏大終わって、新チーム発足後だ。まだ、ベンチ入りは出来ないハズだが。
「そうだな。やってみなきゃ、わからんからな。お前お得意のポテンヒットを連発すれば、ワンチャンあるかも知れんぞ。」
「失礼でござるぞ、尾間加瀬殿!あれは、わざと詰まらせているのでござる。立派な技術でござるぞ!」
「まあ、そういうことにしといてやるよ。じゃあ、お互い頑張ろうな。」
「ござる。」
只野と談笑していると、ルナちゃんがグラウンド入りするのが見えた。
「ルナちゃーーん!おっはよう!!」
犬のように、タッタッタッと駆け寄る。
ルナちゃんは僕に気づくと、意地悪してやろう、という感じの嫌な笑みを浮かべた。
一瞬、優しく頬が緩んだように見えたのは、きっと僕の気のせいだろう。そういうことにしておく。
「おはよう、駄犬。今日もキャンキャンうるさいわね。」
「あはは、ごめん。しっぽも振るべきだったよ。それより、今日はランキング選だね!きっと、ルナちゃんなら投手1位になれるよ!頑張ってね!」
「はぁ、なに当たり前の事言ってるのよ?私以外にエースが勤まるわけないでしょ?ワケ分かんないこと言ってないで自分の心配をしなさい、駄犬。」
「ルナちゃんに教えてもらったこの2ヶ月で僕もかなりパワーアップしたからね!ルナちゃんと一緒にベンチ入り目指して頑張るよ!」
僕がそう言うと、ルナちゃんは優しい笑みを浮かべて
「そう?じゃ、頑張りなさい。」
と、言ってくれた。
まあ、あわよくば僕が投手1位の座をかっさらおうとしてるんだけどな、わっはっは。
格好いい姿を見せて、ツンデレからデレデレに変えてやる。
そう決意して、投手の試験場所へ向かおうとしたその時
「尾間加瀬くん。」
佐出監督が話しかけてきた。
「あっ、監督!ちわーーっす!」
顔こえー。こんなんが桃香ちゃんの父親なんてな。信じられん。無理がある。
「君は、たしか投手希望だったね。」
「あ、はい。そうですが‥‥」
「娘から聞いたよ。バッティングが良いんだって?なら今回は外野手の試験を受けなさい。」
えっ、どゆこと!?どゆこと!?