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思い出
何処までも広がる青
肌を突き刺すような風の抵抗を感じながらも
それらを全て無視して、空を駆ける
周りの景色を置き去りにし
ただ一点の青を求めて
より速く、より高く、より華やかに
己が持つ全てを駆使して、誰よりも先に
青の頂へと到達するために
張り裂けんばかりの歓声が、肌を震わせる
喜び、興奮、達成感
あらゆる感情が心を揺する
無理な身体の酷使で悲鳴をあげているはずなのに、全てが帳消しになる瞬間
選手を見る嬉しそうな観客
悔しがる好敵手
俺の世界は、こんなにも色で満ち溢れていた
ーーーザーッ…
「優勝おめでとう。また負けちまったな」
自分と瓜二つの少年が笑う
いつからだろう
俺の世界から色が無くなってしまったのは