第一話
背後から感じる気配。
誰……?
「──じゃあねー!また明日ー!!」
講義が終わると、荷物を即座に鞄にしまい、それぞれが帰路につく。
教授が、一人で黒板を消している様子をボーッと眺めながら、私も荷物をしまう。
ブー………ブー………と鳴り響くバイブ音。
「あ、マナーモードにするの忘れてた…。」
思わず、声に出てしまっていた。
その声に気づいたのか、後ろから声をかけられた。
「まじ!?講義中に鳴らなくて良かったね?」
「本当だよ(笑)」
荷物を背負った男子が、私に話しかけてくる。
その男子は、私の好きな人でもある。
「城戸くん帰るの?」
ここぞとばかりに私は、話しかける。
城戸稜弥くん。
暗めの茶髪に、爽やかな顔立ち。
成績優秀、スポーツ万能で女子から、かなりの人気がある。
私もその中の一人だ。
「うん!帰ろうかな!古宮さんは?」
私の名前は古宮安奈。
髪は染めてなく、真っ黒。
容姿もごく普通。
「私は~…。」
そう言いながら、先ほど届いたメールを確認する。
それを見た瞬間、私は目を見開いた。
「──古宮さん?」
「へ?あ、ごめん。私も、帰ろうと思ってたところ!」
私は、わざとらしいほどニコッと笑ってそう答えた。
「そっか!気を付けて帰ってね!」
「ありがとう!城戸くんもね!」
私は、乱暴に荷物を鞄にしまうと、準備が出来ていた城戸くんよりも先に、講義室を後にした。
早足で歩きながら、もう一度メールを確認する。
まただ。
また、このメールだ……。
誰が、こんなイタズラするの?
からかうだけなら止めてよ。
私は、ゴミ箱のマークをタップすると、すぐにメールを消去した。
『授業を受けてる姿も素敵だね。古宮安奈さん。』