妹が婚約破棄されたので、反旗を翻してみた
初投稿です
長編「何人いる?」のネタバレが含まれております。ご注意ください。
ていうか「何人いる?」はこれの長編再構成バージョンです
「ウチの馬鹿が失礼な事して本当にごめんなさい」
突然第一王女に謝られた、そう言われても今更どうにもならないだろう。
俺ことリスホルン侯爵家次男のアルベルトと目の前にいる彼女ミレーユ姫は実は転生者仲間である、去年東方の国から大豆がもたらされた時知られた。うっかり味噌造りにチャレンジしたらそりゃバレるだろう。
だがそんな事はどうでもいい、今問題なのは彼女の兄であるマチアス王太子と俺の妹イザベルの婚約が破棄されて妹は国外追放にされたという事実だ。
とりあえず、現状を整理してみよう。
俺達が転生したこの世界では、貴族の子女は十五歳になると王都にある学園に集められる。そこで礼法や学問、男子なら銃や剣を学ぶことになる。王太子と俺は三年生、姫は二年生、イザベルは一年生だ。
去年イザベルが入学したとき、どこかの男爵家の隠し子とやらが同級生にいた。なんでもその男爵が召使に手を出して孕ませ、奥方がブチ切れて追放したにはいいがその後全く子供が生まれなかったんで呼び戻したらしい。
そんな庶民同然の暮らしをしてきた娘が貴族の常識など判るはずもなく、最初の頃は失敗ばかりだったんだが前向きな性格とやらが三年生に気に入られていつの間にやら学園銃士隊とか名乗ってる馬鹿な餓鬼ども全員を手なずけた…らしい。
研究馬鹿のひきこもりなんで世情に疎いから「らしい」が多いのは勘弁してほしい。
で、姫が言うにはこの世界は「恋銃士学園」とかいう三銃士あたりの世界をモチーフにした乙女ゲームとかいうものの中らしい。そして今王太子と新たに婚約した男爵令嬢がヒロインでイザベルは悪役令嬢とか言うゲームの中でヒロインに嫌がらせして蹴落とされる役割らしい。俺の前世は姫より結構前に死んでるんで、恋愛ゲームは生きてる時にぎりぎりあったが女性向けがあるとは知らなかった。
で、そのビッチをイザベルが嫌がらせをしていたと責められている。全くの冤罪だ、あのヘタレでどんくさいイザベルにそんな事出来るはずがない。ミレーユ姫が庇っても全く覆らないあたり根回しも完璧だったんだろう。俺は小さい頃疱瘡にかかって顔面に痘痕が残ってしまい、あまり社交的な所に出入りしてなかったから気付かなかった。イザベルには本当に申し訳ない。
「で、これからどうするの?」
「とりあえずイザベルはウチの領地で匿う。そのうちバレるだろうけど一年ほど時間を稼げれば何とかなるからね。第一イザベル見捨てたらシスコン兄貴に百回位殺されるよ」
丁度卒業したんでこっそりイザベル連れて自領に帰り、いざという時の準備開始。と言っても軍備を増やしたら王家を刺激するんで武器の改造を中心に行う。兄も喜んで協力してくれて、兵の動員計画や補給計画、新型弾の生産計画やその全ての管理を完璧に行ってくれた。わが兄ながら優秀すぎる、何者だろうあの人。
自領に帰って一年後に国王の訃報が届いた。暗殺されたとか噂が広まって新国王のマチアス一世は噂の鎮圧に軍を出して王都は今息が詰まりそうな状態だとか、で、ミレーユ姫が逃げてきた。
どうやら本当に前国王を暗殺したらしい。しかも結婚を反対したとかそういう理由ではなくただ例の男爵令嬢が贅沢したくて国庫を握りたかっただけだとか、最低だなこのビッチ。
こっちの準備も大体終わったんで、イザベルとミレーユ姫をリスホルン侯爵家で保護していること、先王を暗殺したマチアス一世は王の資格なく、ミレーユ姫が正当な女王であると兄に宣言してもらった。
マチアス一世はたいそうお怒りで、国軍の半分である五万を動員してリスホルン侯爵領に攻め込んで来た。当家はどう頑張っても一万を動員するのがせいぜいだったんで、国境の川沿いにある砦に兵を集めて迎え撃つ事にした。
ところで、知らない人も多いだろうから説明すると、この世界と地球の中世では硝石と木炭、硫黄を混ぜて作った黒色火薬を銃に使っている。木炭は割とどこでも作れるし硝石は侯爵領で採れる、ただ、硫黄だけはほとんど産出しない。国王―まあミレーユ姫いわく偽王らしいので俺も偽王と呼ぶことにしよう―も判っているんで去年から硫黄はこちらに殆ど入ってこない、備蓄もちょっと前の戦争でほとんど使ってしまってあまり残ってない。ああ大ピンチだ(棒)
斥候の報告によればあと何時間かで偽王軍がやってくるそうなので砦で防御の指揮をとってたら、イザベルとミレーユ姫がやってきた。
「お兄様、私が投降して領民に累が及ばないようお願いしてきます。今回のことはお兄様たちにも領民の方々にも何ら責任の無い事、私の命で領民が救われるなら安いものです」
「え?イザベルもしかして負けると思ってるの?」
「お兄様、いくら領民の方々が強兵として名を馳せていてもさすがに5倍の人数では勝ち目がないと思うのですが」
うんうん、普通はそう思うよね…普通なら。
隣で姫様が俺の銃を見ながら首をひねってる。
「ねえアルベルト、銃が私の知ってるのとちょっと違うみたいなんだけど、後なんで火薬がこんなにそろってるの?」
普通じゃ勝てないから小細工として銃にライフリング刻んで弾を球からミニエー弾(初期のライフル弾)に変えてみただけだよ。
火薬は黒色火薬が作れないから綿に硝酸でニトロセルロースを作り、アルコールとエーテルで初期の無煙火薬であるB火薬にしてただけです。
射程は3倍、煙で戦場が見えづらくなりにくいから指揮も取りやすい。背後に川が流れてるところに砦を築いたので包囲しづらい。塹壕と鉄条網で防御も完璧、おまけに大砲も少ないけど榴弾砲を用意して曲射可能にしてみました。
後日、どうして勝てたのかミレーユ姫に聞かれたので、
「ヤクザ五百人が拳銃持って、百人が守ってる米軍基地にカチコミかけたらどうなると思う?」
って答えておいた。
遠征軍が壊滅したらミレーユ姫を旗印に諸侯に呼びかけ…5倍の敵を壊滅したわが軍の説得力(肉体言語)の前に諸侯軍は偽王マチアス一世に反旗を翻し、あっという間に偽王を倒して俺はミレーユ女王と結婚した…あれ?
「今更だけど俺と結婚でいいの?兄貴の方が顔いいし兄貴と結婚して俺が侯爵を継ぐことになるのかと思ってたけど」
「侯爵の方が確かに顔いいけど、貴方なら前世談義できるし元日本人なのにやけに銃の構造に詳しいから国防には確実にプラスになるし」
「元々皇軍に銃を卸してた職人の家系で、見習い職人もやってたから銃に詳しいのは当然だけど、前世での年齢差から考えて前世談義がどれだけ出来るかは疑問だぞ?」
なにやら首をかしげる姫様、俺何かおかしなこと言ったかな…って、言ってる自覚あるんだけどね。
「…ちょっと待て、貴方前世では何年生まれで何歳で亡くなったの?」
「俺?大正三年生まれで齢八十六歳の大往生ですが」
と今まで秘密にしてたことを伝える、明らかに狼狽している姫はとても可愛らしいと思う。
「ゲームの話とか普通に理解出来てたじゃない、そんな年齢だなんて嘘でしょう?」
「技術屋だったしPC6XX1の頃からパソコンいじってたからねぇ、筋金入りのジジイゲーマーでしたが何か?」
「やっぱり侯爵と結婚したい、さすがに中身だけとはいえジジイはちょっと…」
姫は後ずさる、が、ここはもはや寝室。どこにも逃げ場などあるはずない。
「残念今更遅いwジジイの技術を見せてあげよう」
絶対逃がしません。
マトモに小説を書く事すら初めてなんで、拙いところがあると思いますが温かい目で見逃してやってください。
なお、雷管はアルベルトが子供の頃開発してます。本当は魔法を起爆薬の代わりにするマジックロック式マスケット銃をアルベルトが開発した事にしたかったのですが、説明が長くなりすぎるのでやめました。
追伸
再構築して連載はじめました。「何人いる?」というタイトルです。
そちらも宜しくお願い申し上げます。