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第26話 変わり者の紹介状

「これが、そのアイテムのリストよ」

 クーデルさんが差し出す封筒を受け取ったカレンさんは、すぐに確認してくれました。

「汚い字ですわね。店の主を名乗るなら、もっと字の練習をしておきなさいな」

「ごめんなさい、それ書いたの僕なんです……」

「個性的で愛嬌のある文字ですわ!」

 うーん、まだまだ勉強不足か。

 リストの内容は、取引に使っても構わないと判断した、三つのレアアイテム。


【フレイムローズ】

【サンダーバードの涙】

【ブラッディ・ハート】


 正直に言えば、僕らには使い道が分からない物だ。可燃性の高い薔薇に、ユニークモンスターのドロップアイテム、不吉な名前の真っ赤な宝石なんて、どうしろと?

「……ふむ、これは中々の品々ですわね。ただの宝石や貴金属程度でしたら、あまりお力にはなれないと危惧しておりましたわ」

 カレンさん曰く、一言に三級レアアイテムと言っても、その価値は品によってかなりの差があるものらしい。中でも便利なマジックアイテムはやっぱり需要も大きいとか。

「この手のレアアイテムを求める者なら、一人心当たりがありますわ」

「本当ですか!」

「ですが、おすすめは致しませんわ。あの方は、少々変わり者ですもの」

 カレンさんの言う変わり者って、ちょっと想像できない。

 でも、あの魔女さんよりはマシだと願いたいね。

「その者の名は、ロイズ・アラフォード。この国唯一の錬金術士ですわ」

「ぜひ紹介して下さい!!」

 キタよ錬金術士! アトリエは何処ですか!? 二つ名はありますか!?

「ミツルも相当変わってると思うわ……」

 クーデルさんが呆れたように溜息をついた。そういえば、魔女さんに会いたいって興奮した時も唖然とされたっけ。

「わたしも何度か取引をしたことがありますから、わたしの紹介状があれば話も早いでしょう。ソフィ、ソニア」

「「かしこまりました、ご主人様」」

 二人のメイドさん、ソフィさんとソニアさんは、エプロンのポケットから紙と羽ペン、インク壺と印鑑を取り出して、カレンさんの前にテキパキとセッティングした。

「あの、ひょっとしてそのエプロンのポケットって……」

「え? ……あぁ、【奈落石】を使っていますわ。ご存知ですの?」

「はい。最近手に入れました」

「それはおめでとうございますわ。あれは商人の必須アイテム、『豪商人へのチケット』と呼ぶ者もいますわ。豪商街の者は必ず持っていますし、わたしも二十個ほど所有しておりますわ」

 二級レアアイテムが二十個!? カレンさんの財力に改めて驚愕した。

 しかし『豪商人へのチケット』とは上手いことを言う。ナガレさんに感謝だ。


 カレンさんはその場で紹介状を書き上げると、封筒に黄色い蝋を垂らし、この世界の『7』を象った印を押した。多分【セブンス商会】の紋章だ。

「はい。できましたわ」

「あ、ありがとうございま……え?」

 受け取ろうとしたら、目の前でひょいと持ち上げられた。

 しかもカレンさんは、その封筒を自分の大きな胸の谷間に挟んでしまった。

「メイちゃん、あの手紙を奪い取って。なんならあの風船ごとでも構わないわ」

 ……クーデルさん、ここでメイちゃんの盗賊スキルを使わせないで下さいよ。

「風船とは失礼ですわね。これはれっきとした自前ですわ。なんでしたら、ミツル様にご確認頂きましょうか?」

 ここでもハニートラップ!? ズルいですよ!

「冗談ですわ、困ったお顔をカワイイですわよ。まだ仲介料のお話が終わっていないですわよね?」

 あ、すっかり忘れてた。

 この世界にお金があれば、儲けの何割かをお渡しするって契約ができるんだけど……。

「ミツル様、今宵はわたしとお付き合い頂けますか?」

「だ・か・ら! そんなのは許さないって言ってるでしょ!」

「まぁクーデルさん、何をそんなにお怒りになっているのかしら? わたしはただ、今宵一晩中ミツル様と熱いショーギ勝負にお付き合い頂きたいだけですわ」

「ふぇ? し、ショーギ?」

「えぇ、わたしがレアアイテムを賭けたギャンブルが大好きなのはご存知でしょう? もちろん、ミツル様が負けても何かを求めたりはしませんわ。商人から貴重な時間を頂くのですもの」

 そういえば、父さんも時間に関してはうるさかったっけ。


『時間は最大の資本。商人たるもの、時間は運用するものだ』


「日の出までの間に勝ち越した方が勝者ですわ。ミツル様が勝てば、この紹介状を喜んでお譲り致しますわ」

 なるほど、本当に一晩中将棋の相手をして欲しいのか。本当にギャンブル好きですね。僕もゲームは徹夜も平気なくらい好きですけど。

「ところで、クーデルさんは、一体ナニを想像したのかしら?」

「にゃ、にゃんでもにゃいわよ!」

 クーデルさん、猫度が上がってますよ。

 まぁ、僕はカレンさんの意図も分かっていましたよ。ヘンな想像なんてしてないですよ。当然じゃないですか。

「ミツル、顔、赤い」

「さぁカレンさん! 早く将棋を指しましょう! 来月の将棋大会の前哨戦ですね! いやぁテンション上がるなぁ!!」

 クーデルさんとメイちゃんにジトッと睨まれた。カレンさんめ!

「フフフ、本当にカワイイお方ですわ♡」

 カレンさんはイタズラっぽい笑みを浮かべてご満悦だ。絶対確信犯でしょ!

「ですが、今回はハンデ抜きでお願いできますね?」

 一転して真面目な顔付きになるカレンさん。イカサマやハンデを『される』方は好きではないというのが読み取れる。

 本当に、困った人だ。

「もちろんです。ゲームはフェアな方が楽しいですからね」



 結局、タイムリミットを告げる日の出までの間、三局しかできなかった。それだけ厳しい対局でした。

 どうにか勝ち越すことができた僕は、錬金術士さんに会うことができそうです。

お読み下さった方、誠にありがとうございます。

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