猫を飼う
なんなんだ。このもそもそと動いているものは、一体なんなんだ。腹の上を恐る恐る触ってみる。………なにこれ。まだ家を出る時間じゃないからもう少しだけ寝ていたいけど、このふわふわした物の正体を知りたい。私は重たい瞼をわずかに開けた。
「にぁあ」
なんて可愛らしい猫なの。
………じゃなくて、あれ?どうして?これは夢か?
「きやぁあああああ!!お母さぁあああん」
私は慌てて飛び起き、階段を降りてキッチンまで走る。そんな様子をわかりきっていたかのように、母はほくそ笑んでいた。
「可愛いかったでしょう?」
ええとても。いいや、とんでもない!
「なんで、私の部屋に猫が………猫がいるのよ!」
私の顔がみるみるうちに熱くなっていく。
「うみが欲しそうだったから、拾ってきちゃったの。嬉しかったでしょう」
なんでそんなにしそうな顔でいうんでしょうか、うちの母親は優しいのかバカなのか………バカなんですかね。それはそれで、猫がさっきから擦り寄ってきて動くことができません。
「お母さん、どうしよ」
私は困った。
「とりあえず、学校行く支度したら?」
母の目線は私の瞳を通り越して、食器棚に置いてある時計を見ていた。私はそれに気づき部屋までの階段を走る。その後ろをのんきについてくる猫がなんだか可愛く思えた。
制服をきて学校に行く準備は万端。そして、ふと思ったことがある。今までペットを飼おうなんて誰一人言っていなかった。飼う予定すらなかったのに、どうして急に連れて来て飼ってるのだろう。確かに私があの猫を気にしていたことには間違いないが、なぜだろう。不思議で仕方がなかった。まぁ、いっか。
「さて、行きますか。よいしょっと」
玄関で靴を履く。
「んじゃ、行ってきまーす」
さぁ、今日も1日頑張りましょうかね。