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エピローグ
黄昏の穏やかな影が沈む部屋の中、窓際にたたずんでいた少年が振り返った。表情の読めない顔にかすかな影が差す。
「手紙をよこして。」
話しかけられたのは、若い女性だった。うつむけた顔を長い黒髪が覆っている。膝の上、紙束をわし掴んだ手は骨が透けているような、不健康な白さだった。
少年は女性に近寄り、特に強引でもなく、優しくでもなく、無表情のまま手紙を奪おうとする。この無表情はこの少年を特徴づける、数々の奇妙なふるまいの一つとして有名だった。
無反応だった女性が突然彼の手を払いのけ、顔をゆがめて紙を引き裂き始めても、彼の顔にはわずかな変化もなかった。かすかにため息をつき、細い指先で執拗に引き裂かれた紙吹雪が薄闇に覆われている床に降り積もる前に、彼は部屋を出て行った。扉は静かに閉じられた。彼は何があっても冷静さを失わない。