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silent DESIRE (上)

夜だというのに真昼のように輝くネオン街広がる灰色の空の隙間を男は翔る

特徴は手には両手に握り締められた銀色の流星のように輝く短刀のみで、それ以外は深く被った帽子と黒い外套を着ているためか闇色のシルエットが写るばかり。それといって体格に特徴はなく標準体型の男という印象しか沸くことがない

突如耳元に通信機を着けているのかそこからノイズ混じりの声が響く

「ガガッ・・・聞こえてるブギー?」

通信から聞こえた口調は若い女以外の何者でもなかったが、しわがれた声はまるで老婆のようで非常にアンバランスに思える

その通信にブギーと呼ばれた男が受け答える

「うん聞こえてる。そろそろ目標地点に到達するところ」

コンクリート剥き出しの屋根を使って飛び跳ねるように伝う。何食わぬ顔であるが

いくら屋根が密集しているとはいえ一歩油断して足を踏み外してしまった場合最悪死は免れないだろう

「なら、丁度いいわね・・・今回のターゲットを表示するわ」

鈍い起動音を立てて男の右目にまるで浮き出るように薄い光で情報が表示され

それを確かめるようにゆっくりと確認するかのように呟く

「リ・ヤオ。人身・非合法薬物売買との前科あり小規模中国マフィアの幹部。現在はチャイナタウンにあるビルのワンフロワを貸切にして暮らしていると。クラスはB級楽な仕事だね、他にご注文は?」

「ワンフロアをブラッドバスにして頂戴」

つまるところ一人残らず生かして帰すなということだ

目標地点にたどり着いたのかブギーは廃棄されたと思われる廃ビルの屋上に立ち下を見下ろすと

そこはド派手な装飾と煌びやかな漢字の看板が連なり、目も眩む光のオブジェとなっていた

中国国籍の住人たちが作り上げたチャイナタウン。そのメインストリートだ

「・・・丁度いいわ、そこから『八尾広報公社』っていうビルが見えないかしら」

「ひょっとしてあれかな?メインストリートから少し離れているようだけど?」

先程までターゲットの情報を表示していた右目に今度はタウンのマップが表示され

青色の光でとあるビルを表示していた

「あってるわ。そのビルの5階よ」

「了解♪それじゃいくよ」

コンクリートの地面を踏み抜くかのように目標地点に向かい力強く眼下の街へと跳躍した

看板をケーブルをそして屋根を伝いながらまるで四足の獣のようにブギーは迫り

そして丁度目的のテナントがある5階のガラス窓をまるでハリウッド映画のように体制を低くして突き破った

「なんじゃぁッ!!」

突如現れた闖入者にざわめく男達。マフィアらしく全員厳しい顔つきをした常人ならば確実に動きが止まるところだが、だがブギーはその常人には含まれなかった

「貴様ぁ!どこの手のもんだァ!!」

「映画でも今時聞かないよそんな台詞。それに、答える義理もないとわからないかい?」

飄々とした調子に激昂したブギーの近くにいた男が胸元から拳銃を取り出す

明らかに耐用年数が過ぎているであろう古いマグナムではあるが確実に当たった場合ブギーは死ぬ

そんな凶器を構えられながらも飄々とした態度を崩さないブギーは何でもない様にただ言葉を告げる

「銃ってのはさどんだけ口径が小さくても狙いがつけられて当てられればいいんだ」

「はッどうしたよ、自分が死ぬってわかって頭がイッちまったのかよ。

でも、遅せぇとっとと死んじまいな」

「・・・でもそれは」

明らかに発砲した直後だった。銃声が鳴りマグナムから弾丸が射出されたまさにその瞬間にブギーは行動を起こした

まるでただ障害物を避けるかのように上体をずらし弾丸を避けまるで忍者の様に男の眼前に現れた

「当たらなければ意味がないって言ってるのと同じことじゃぁないかな」

「よけた?」

呆けている男の胸元に向かってカスッとまるで果物を切るような気軽さでナイフを深く突き刺した

当然のことながら心臓には動脈血が集中している。

まるで水風船を割ったかのように男の血が頭部を濡らし、その顔のまま男の体はドスンと音を立てて地面に沈んだ

「よし、まず一人だ・・・さて、お前らには悪いけどこれから2択の選択をしてもらう」

ナイフの血を払いながらまるで子供に言い聞かせるような自然さで言葉を紡ぐ、その異様さにマフィア達は立ち尽くすだけであった

「一つは希望を信じてオレに最後まで抵抗して苦しんで死ぬか

もう一つは絶望を理解して楽に死ぬかだ。と言いたいところだけど-------どうやら聞くまでもなかったようだね」

男達は武器を取りブギーを囲む、皆一様に目は殺意とそして恐怖に満ちていた

「それじゃあ、マフィアの皆さん。希望げんそうを信じて行き汚く死んでくれ」

飢えた獣のように近くの敵に飛び掛り牙を突き立てる

一方的な殺戮劇がスタートした

「それなりに広いつくりになっているようだね。逃げられたら厄介だしとっとと終わらせちゃいますか」


一方目標となっていたリ・ヤオはただ今絶賛殺戮劇が繰り広げられている現場から10mほど離れた部屋にいた。部屋は完璧な防音なのか刃物が肉を切る音や銃声など一切聞こえない

しかし、ヤオの顔は焦りがそのまま出ているかのように脂汗が滴り落ちていた。決して彼の丸々に肥えた体格のみが原因ではないだろう

焦りを呼び出した

「私はただ、成り上がろうとしただけだ!夢を見て何が悪い!」

「夢を見ることは悪いとは誰も言ってないだろうヤオ?ただ、お前は急に目立ちすぎた。それと運が悪かっただけだ・・・ああそれと、常に上を目指したその姿勢と組織を短期間でここまで大きくさせた事には評価しよう。部下にしてやろうとも思ったくらいだ」

電話の相手は少女のような声をした相手だが、その口調と電話からも伝わる威圧感と尊大さはまさに

悪魔か暴君もさながらといった具合だ

「だがな、ヤオ。私は部下に野心など求めちゃいない。忠誠と服従と能力その三つがあればいいのだ」

「・・・殺す気か?」

「ああ、当然の事だ。今更聞く必要がなどないだろう。むしろそれ以外の選択肢があるのか?

気に入らない邪魔な虫を踏み潰すことなぞ貴様だってやっているだろうに」

なんて事もない調子でふっと言ってのける。

「このクソ毒婦め!貴様は生まれながらにして悪そのものだな!」

「毒婦か、褒め言葉としてとっておこう。しかし、私は『悪』ではない私は私だ。悪すなわち私という考えは気に食わん。悪というつまらないたった一つの単語で私を語らないでくれないか?」

「お断りだ!地獄に堕ちな糞ビッチ!」

「・・・今の発言は流してやる。それより、貴様にはその夢を追う姿勢と力に敬意を評し

ある男に殺させてもらうことにした」

まるで、示し合わせたかのように無音の牢獄から唯一出られる出入り口のドアがキィと音を立ててあけられた

現れたのは血を全身に被った黒いスーツの男その両手には幾人もの体を切り裂いたナイフが握られており

まるで、一種の鬼のように男。ブギーは現れた

その瞬間ヤオの体はまるで、巨大な獣に遭遇したかのように総毛立った

「始めましてだなリ・ヤオ。悪いが早々にさようならだ」

「きさまッ!オイ糞女!何でこいつがッ!!"ブギーマン"がお前に力を貸してるんだ!!!!」

そんな情けない姿を知ってか知らずか

「はっはははははっ!ブギーマンを知ってたかヤオ。なら話が早い、気を抜いたほうが楽に死ねるぞ」

「オレの名も有名になったものだなぁ・・・

さて、この世最後の恐怖をくれてやる。後に残るのは安心だけだリ・ヤオ」

「やっやめ・・・かっ、く・・・」

恐怖を顔にゆがめたまま一切の動作を行なうこともできずリ・ヤオの首は胴から一瞬で断ち切られた


仕事を終えたのを確認して再び室内を駆けだし窓から夜の街へとブギーマンは姿を消すという

手はずだったが

突如ついていたはずの電気が消える

「!?ッ」

闇夜に紛れブギーマンの体をナイフらしきものが襲い掛かった。

正確かつ適切な射撃はかわす先を読んでるのか反撃させる隙を選ばない

「チッ!なんだよこれぇ聞いてないよ」

ナイフを打ち落とすだけで精一杯だったブギーマンに近寄る影

大きさはブギーマンより小柄で細くその外見から女とブギーマンは判断した

どうやらナイフを投げているのはその人物らしく近寄ったためかナイフの速度と力が上乗せされる

「ならこいつでどうだい?」

手に握り締めたナイフを傷を受ける覚悟で相手に向かって投げ、顔に向かって拳を振るう。相手が怯むことを想定したからだ。

「っ止まらない!しまっ」

しかし、結果は想定外。骨を砕くような鈍い音がするはずだったが奇妙なことに

当たった感触はあるもののその一撃で人間ならば多少は怯むはずだが

影はそのままのスピードを維持したままブギーマンに向かって突進する。女と想定したはずだがそのタックルはその小柄な体のどこにそんな重量があったのかと思うほど、一流のアメフト選手も舌を巻く出来であり。呼吸が困難になったのか苦しそうに呻いた

その一撃を受けたブギーマンは体をくの字にして勢いあまって背後の窓ガラスから落ちていく

その時メインストリートからド派手な蛍光のネオンに照らされて今まで見えなかった影の正体が暴かれる

黒いボディースーツに覆われたまるで兎のような姿をした白髪赤目の少女だ。見たところ15,16ぐらいに見えるが、その年頃にある情緒豊かな表情など一切なく能面さながらといった感じである

しかし、襲い掛かってきた影の外観がわかっても問題は今まさに危機に陥ってる自身の事

(落下まで残り数秒このままだと確実にコンクリートと激突だ。なら多少の無茶はしなくちゃねぇ!!)

頭の中で自身で3カウントを始めきたるべきその瞬間に向けて体に意識を向け力を通し

「女の子と心中するのも悪くはないけど」

「・・・」

軽口にも何の反応もしめさない姿はまるで人形のようであったがそんなことは気にせず自身を鼓舞するために口を滑らせる

「君みたいな笑わない上に無口な、魅力の欠片もない子とはお断りさせてもらう、よっ!」

ブギーマンは女の肩を掴み少し体をずらした後、横腹を落下の軌道を変えるために蹴り飛ばすが、それでも落下の向きが下から右下に変わった程度だ、しかしそれでもブギーマンが生き残るには十分だった

メインストリートを輝かせる無数の蛍光看板。それを維持している太い無数の電線ケーブルにしがみついた、勿論中には劣化したものも多く含まれておりそんなものにしがみついていたならば、たちまち電線を保護している表皮が剥がれ電撃により焼き焦げていたであろう。彼はそれを承知でギャンブルに挑みそして勝利した

「あーヒヤっとした。それにしても・・・」

少女の落下した死体があるのではないかと思い。下をちらりと見るが

血の跡すらなくそこはただの闇であった

「何だったんだよ?あの女の子・・・一歩間違えれば確実に死んでたぞ」

わかっているのはただ一つ。この案件はまだ終わってはいない正確に言うなら新たな面倒事が発生したというのが正しいのであるが

「ブギー?何とか生きていたようね」

「ああ生きてるよ。とりあえずそっちに戻るからパンとハムエッグでも用意しといて。腹ごしらえでもして、さっきのあの女の対策でも考えなくちゃいけないからね」

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