表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/21

九話

月のウサギと機械時掛けの神41


逢魔零





式と向かい合う。


「式、もう一度聞く。棺ちゃんはどこだ?」


式は一歩引く。


「それは彼を倒したら教えてあげるよ」


式の後ろには僕がいた。


着ている服も、リストバンドも同じだった。


いや、僕とは違いエメラルド色の瞳はくすんだ灰色になっていた。


「俺の名前は逢魔零。もう一人のお前だ」


僕はリストバンドを見た。


「犬塚会長、信じますよ」


「「ウェポン」」


魔剣レーヴァテインが二つ現れる。


「いっけぇえええ!」


「……」


魔剣同士をぶつけ合う。


火花が散り、争いは続く。


「……」


「お前は、誰だ?」


「俺は逢魔零。もう一人のお前だ」


「僕なら棺ちゃんのところへ行かせてよ!」


「それは無駄なことだ。なぜなら棺と約束したのは俺だからだ」


「約束?」





「棺、俺は決めた」


「ん、何をですか?」


「俺はお前を救うヒーローになってやる」


「私を救うヒーロー?」


「そうだ。男の子なら女の子の一人や二人、救えなくてどうする」


「どうするの?」


「ん〜、とりあえずお前は俺が絶対幸せにしてやる」





「あれは君が……」


「そう、俺がした約束だ」


「だけど、僕の約束でもある」


「なら……」


「押し通る!」


「……」


魔剣同士がぶつかり合う。


二人にもう言葉は必要ない。


式は言う。


「君たちを見てると棺に妬けるな」


「……」


「……」


ガキンッ。キンッ!


「こんなにも二人の男にしたわれて」


「……」


「……」


ギンッ!


魔剣が悲鳴をあげる。


それは二人の決着が近いことを意味していた。


「次で最後だ」


「ああ」


「「我が名において命ずる。深淵の魔剣レーヴァテインよ、殺戮の使徒ジェノサイドよ……」」


「「出でよ、カラドリウス!」」


光が、辺り一面を支配する。


「ハァハァ」


「はぁ、はぁ」


魔剣レーヴァテインはすでに壊れている。


上条式は逢魔零に歩み寄ると、零の右手を自分の胸に当てた。


「使いな、王様」


「ああ、使わせてもらう」


引き出したのは白い大剣だった。


「終わりだ。逢魔集!」


「まだですわ!」


爆発が起きた。





月のウサギと機械時掛けの神42


光の柱。





突如として爆発が起きた。


そして僕を守るように周、暁、刻が立つ。


「案外トラップがしつこくてね」


「遅れましたわ」


「さあ、集。反撃だ」


「ああ」


助け起こそうとした刻の手を握ったとき、それは起きた。


「光の……柱……?」


僕を中心として光の柱が立ったのだ。


そして、


「俺の手にライフル銃が……」


刻の手には大型のスナイパーライフルが握られていた。


「アリスが……進化したとでもいうんですの?」


「分からない、だけど」


暁の手をつかむ。


「光の柱が……」


光の柱が生まれ、暁の周囲に濃い霧とワイヤーが現れる。


「集、私にも」


「ああ」


周の手を握る。


光の柱が生まれ、周の手に死神の鎌が現れた。


「逢魔、集……」


零がこちらを見る。


「形成逆転かな」


「いや、まだだよ」


式が消えた。


と、


「周! 暁! 刻!」


一瞬で三人が倒れていた。


「僕にかかれば三人を倒すことなんて朝飯前さ」


「逢魔集、これで最後だ」


零の大剣が迫る。


そして、僕は……





「やあ集、また会ったね」


何もない空間。


そこに彼と僕はいた。


「父さん、じゃないね」


「ああ、私は機会時掛けの神。デウスエクスマキナ」


「なんで父さんの格好をしているの?」


「君のイメージからそう見えているだけさ」


「なんで僕をここに? 早く戻ってみんなを助けないと……」


「天川周、神崎暁、日比谷刻は僕の権限で強制ログアウトさせた」


「でも、棺ちゃんに会わないと!」


「疑問点は全て上条式が答えたはずだが?」


「それでも、会いたいんです」


「なぜ?」


その問いに僕はフッと笑って答えた。


「だって、友達だからに決まっているじゃないですか」


「よく言った、少年」


デウスエクスマキナは消え去り、棺ちゃんが現れる。


「俺は、お前の友達か?」


「当然だ」


「なら、俺を使え。今のお前なら上条式や逢魔零に勝てる」


「ああ、分かった」


棺ちゃんの胸に右手を当てる。


「今こそ君の全てをさらけ出す」


「あぁ、そうだ。私の王様」


かつてないほど大きな光の柱が生まれた。








月のウサギと機械時掛けの神43


王様





式と零との決闘から一ヶ月。


僕らは新年を迎えていた。


「2014年1月1日、おめでとう!」


「イエーイ!」


「お、刻ノリがいいな」


「親父ももっと盛り上がれよ」


「平和ですわね」


「ええ、本当に」


月のウサギと機会時掛けの神は全世界で回収され、作った会社はヘッドギアを使った新しいゲームを試作中らしい。


安全で安心のものを、らしい。


月のウサギと機会時掛けの神の件もあって各国が会社に圧力をかけたのか、会社の規模は若干小さくなったようだが。


「あ〜、集がまた険しい顔してる」


「してないよ。周」


「してたって、絶対!」


僕の瞳はまだエメラルド色のままだ。


失くさないようにしよう。


これだけが、僕があの世界で生きた証なのだから。


「さあ、初詣はつもうでに行くぞ」


「あっ、ちょっと待ってよ」


慌てて車に乗り込む。


「集、お前本当にこれで良かったのか?」


八人乗りの車で、横に座っている刻が話しかけてくる。


「これで良かったのかって?」


「結局、俺らあの女に倒された直後に強制ログアウトさせられて最後はどうなったのか知らないんだよ」


「さあ、どうなったんだろうね」





『棺ちゃん、僕らはずっと友達だ』





「着いたぞ」


車に揺られ、飛行機に揺られ、着いたのは出雲大社だった。


「出雲大社かぁ〜、久しぶり」


「周は行ったことあるんですの?」


「昔、ね」


「縁結びの神様だからな。どうかウチの可愛い集に婿むこが来ますように」


「それを言うならよめだよ。父さん」


ポニーテールに着けた鈴をらし、反論する。


「ああ、そういえば集たちにはまだ話してなかったな。来週から月のウサギと機会時掛けの神のプレイヤーを集めた学校ができる。お前たちにはそこに通ってもらうことになる」


「まあ、実際休学したようなものですしね」


「それで、集の学校なんだが……」





一週間後。


「なぜだ……?」


僕は女子校に通うことになっていた。





「ごめーん。性別のらん間違えて女子にしちゃった。先生に話はつけてあるから、まあ楽しんできてよ」





「あぁ。なんだろ、涙が出てきた」


「ホームルーム始めるぞ」


担任の先生はなんと安藤先生だった。


「安藤夏子だ。私もプレイヤーの一人だ。担任になったのは私のリハビリも兼ねている。一年生諸君、よろしく」


パラパラと拍手が起こる。


「じゃあ、お前ら自己紹介しろ」


周が立つ。


「天川周です……」


そして、自己紹介が無事終わり、


「さて、まずはクラス委員を決めなきゃならんが。誰かやりたいやついないか?」


じーっと、僕に視線が集まる。


「うぅ、帰りたい……」


女子校に通うにあたって学校側から出した要件がある。


そのひとつが、女子校の制服を着ることだ。


「転校したい……」


ひらひらしたスカートを押さえ、言った。


「じゃあ、多数決をとる。クラス委員に推薦すいせんしたいやつの名前を書いてこの箱に入れろ」


そして、多数決の結果。


「クラス委員になりました。逢魔集です。よろしくお願いします」


パチパチパチパチ。


安藤先生の時とは比べ物にならないほどの拍手が鳴りわたる。


「……なぜ?」








月のウサギと機械時掛けの神44


女子校





「はぁ〜」


男性教師用のトイレに入り、つぶやく。


「体育の着替えとか、どうしよう」


問題は山積みだ。


「それもあの変態のせいだ」


父さんがいたら絶対に殴っている。


「にしても、女子校って緊張するな〜」


トイレから出て、クラスへ向かう。


クラスではなにやら話し合っていた。


「クラス委員さん」


女の子に声をかけられる。


「はい?」


「このクラスに男子がいるらしいんです!」


「うん。まあ、そうだね」


「女子校に潜入する不届き者を成敗せいばいしましょう!」


「えっ!?」


急いでクラスから離れる。


そして、父さんに携帯をかける。


「父さん。クラスに男子が居るって話題になっているけど!?」


『言っただろ。教師には話を通してあるって。生徒は自分でなんとかしろ』


「そんな……」


『じゃあ、切るぞ』


ツーツー。


切れた携帯をしまい、どう生徒に説明したものか考えていると、


「見つけました! 男子です!」


ボーイッシュな女の子が捕まっていた。


「だからボクは女の子だって!?」


「口ではなんとでも言えるわ!」


「あの〜」


「「なんですか!」」


「僕が、男子です……」


「え、だってあなた腰もくびれてて声も高いし、なにより顔が……」


「でも男子です」


周や暁も加勢する。


「そうですわ。この人は男子です」


「ええ、私たちが証人しょうにんよ」


「えっ!? でも、え……」


絶句する女の子。


「そういうことなんで……」


「なぜ女子校へ?」


「それは……」





説明中。





「そうですか。それは災難でしたね」


「うん」


「わたしは綾小路あやのこうじかえで。カエデと呼んで下さい」


「ボクは笹瀬川ささせがわあき。アッキーって呼んでよ」


「よろしくお願いします。カエデ、アッキー」





体育の授業中。


僕は女子に混じってバレーをしていた。


「カエデ、トス!」


「はいっ!」


「集。上げて」


「オッケー」


「これが、青春ってやつかな?」








月のウサギと機械時掛けの神45


コンタクトレンズ





僕はエメラルド色の瞳を隠すため、カラーコンタクトレンズをしている。


だが、


「あれ? 無い?」


おかしいな?


確かに寮の机の上に置いたはずなんだけど……


「集! 早くしないと遅刻するわよ!」


「先に行ってて、周」


「集も遅刻しないようにね!」


「どこだ。どこにあるんだ。コンタクトレンズは」


「お探しの物はこれかい?」


「アッキー?」


笹瀬川秋ことアッキーが、僕のコンタクトレンズの箱を持っていた。


「どうして君が? っていうかなんで僕の部屋に?」


「合い鍵さ。ボクの母さんがここの寮母さんだからね」


「コンタクトレンズを返してくれ」


「へー、素の目は綺麗じゃん。なんで隠すの?」


「だって、変でしょ。こんな瞳……」


アッキーは一瞬うつむいて、笑った。


「はははは、変、変だからって?!」


「何かおかしいことでも?」


「うん。だって君はもう変な人なのに今更目の色くらいでどうこう言ったりしないよ!」


「本当に?」


「本当に!」


「じゃあ、分かった。今日からコンタクトレンズは止める」


「うんっ、じゃあ行こうか。学校へ」





学校。


「あなたたちは同世代の少女たちから一年間遅れています。なので、この一年間で二年間分を叩き込みます」


「うわー、しんどそう……」


「笹瀬川さん。私語はつつしんで下さい」


「はいっ!」





放課後。


「逢魔くん、話があります。教員室に来て下さい」


「はい?」


先生に連れられ、僕が来たのは教員室だった。


「明日のミス鏡代きょうだいコンテストの件ですが……」


そういえば、ここは鏡代女子校っていうんだっけ?


「あなたもエントリーされてますよね」


「はい?」


「だから、笹瀬川秋の推薦でエントリーされていますよね」


「はぁ……」


「それで、男子のあなたがなぜエントリーしたか聞きたいのですが?」


「そういうのは私に任せるのが筋ってものでしょう」


何時の間にか安藤先生がタバコを吸って横にいた。


「安藤先生! ここは禁煙です!」


「ごめんごめん、でも、逢魔のことは私に一任されているはずだけど?」


「くっ、分かりました」


「あのミスコンって?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ