17話
月のウサギと機械時掛けの神81
もう一人の主人公
「安心院さん。今日は鏡代学園で文化祭やるみたいだよ」
「みたいだな」
「行かないの?」
「私はポテチを食べるので忙しい」
僕と安心院さんはバベルの居住区の部屋にいる。
安心院さんの周りにはポテチやお菓子の袋が開けられている。
「安心院さん。そんなにお菓子ばかり食べたらふとるよ」
「う……大丈夫。私は胸に栄養がいくから」
「そう言う人ほど、お腹に脂肪がいくんだよね」
「う……白崎真白。運動をしよう。鏡代学園まで競争だ」
「安心院さん待ってよ」
鏡代学園。
「では、これより鏡代学園第一回文化祭を開始します」
ワー、パチパチ。
「では、生徒会長から一言」
マイクが生徒会長に渡る。
『みんな。三日間、存分に楽しみましょう』
「以上です」
そして、鏡代学園第一回文化祭が始まった。
鏡代学園校門。
「遅いぞ。逢魔集」
僕は月島さんに向かって言った。
「ごめん。文化祭の挨拶があってね」
「じゃあ、デートするぞ」
「本気?」
「ああ、もちろんだ。逢魔集」
「はい?」
「デートプランは考えてあるよな?」
「えーっと……」
横目にチラリとお化け屋敷が見えた。
「お化け屋敷に行こう」
「ふん。チープだが、それもいいな」
「さあ、行こう」
鏡代学園校門。
「安心院さん足早すぎ。ちょっと休ませて」
「まったく、だらしがないな」
そう言いつつ安心院さんはジュースを買って来てくれた。
「ありがとう」
「礼には及ばんさ」
「にしても、人が多いね」
「第一回らしいが、街中に宣伝のポスターが貼ってあったからな。街中の人が来ているんじゃないか」
「へぇ」
「白崎真白。お前はどこに行きたい?」
「どこっていわれても……」
チラリとお化け屋敷のポスターが見えた。
「お化け屋敷とか、どうかな?」
「なるほど。いいな、行こうか」
「うん。そうだね」
月のウサギと機械時掛けの神82
お化け屋敷
お化け屋敷。
「月島さん。どこにいるの?」
お化け屋敷に入った瞬間、右と左の道に分かれていた。
僕は右、月島さんは左を行った。
途中で合流するかもといった予想は裏切られ。僕はとりあえず出口に向かっている。
「白崎……」
ん?
後ろから声がした。
「白崎真白。どこだ?」
「安心院さん?」
後ろから来たのは安心院さんだった。
「やあ、逢魔集。白崎真白を見なかったかい。最初の分かれ道で左の方に向かったはずなんだが」
「僕も合流すると思っていたんですが……」
「また、入口に戻るか……」
「いや、一旦出ましょう」
「まあ、それもそうか」
僕と安心院さんは出口へと向かっていった。
「逢魔集。お前、死の線が視えるだろ」
安心院さんがポツリと言った。
「死の線?」
「崩壊線とも言う。いわば魔眼だよ」
「はぁ?」
「例えばこの壁を見てみろ」
言われて壁を見る。
「ただの壁ですけど」
なにもおかしいことはない、ただの壁だ。
「壁に線が視えるはずだ」
「ええ」
壁に赤い線が無秩序に浮かび上がって視える。
なんのことはない。
いつもの光景だ。
「線の通り、指でなぞってみろ」
「はい」
線の一本を指でなぞってみる。
と、
「壁が剥がれた!?」
「やはりな」
「安心院さん? これは一体?」
「『アイオンの魔眼』という。発現者は君が七人目だ。そして、現在生きているのは君だけだよ」
「アイオンの……魔眼」
「君にとっては物質の綻びが視えるのが普通なのかもしれないが、私には見えない」
「安心院さんはなんで僕が『アイオンの魔眼』を持っているって知っているんですか」
「それはだね……」
「やあ、久しぶり」
出口に着く。
そこには意外な人物がいた。
「犬塚会長!? それに神崎暁も!? なぜ?」
「僕ら、安心院さん。僕。神崎暁。黒芝はスフィアのメンバーだからさ」
「スフィア?」
「ああ、ヘヴンズゲート計画の要。この世界から出るために必要な人材だよ」
「この世界から出る?」
「ああ」
犬塚会長が懐から拳銃を取り出す。
「え?」
「死んでもらうよ」
パンッ!
月のウサギと機械時掛けの神83
待っていた。
「待っていたわ」
僕が目を覚ますとベッドの上だった。
そしてとなりには黒髪の美少女がいた。
「私の名前は黒芝鼎。初めまして。逢魔零」
「僕の名前は逢魔集です……」
「なるほど、やっぱりヘヴンズゲートを抜ける際に記憶を失ったみたいね」
「あの、ここは?」
「舞浜学園の保健室だけど?」
「舞浜学園ってゲームの中の学園のはずじゃ……?」
「まずはどこから話そうかしら」
「私が話しましょう」
保健室のドアが開く。
そこにはアリスさんがいた。
「久しぶり。でしょうか? 逢魔さん」
「アリスさん、なぜここに?」
「ここが、私のいた世界だからです」
「えっ!?」
「デウス。お話ししてあげて」
アリスさんの差し出したスマートフォンから男性の声がした。
「我が名はデウスエクスマキナ。デウスと呼んでくれ」
「デウス。僕らは初対面じゃないよね」
「ああ、『月のウサギと機会時掛けの神』で会っているな」
「やっぱり。デウスエクスマキナ。機会時掛けの神なんだね」
「ああ、そうだ。そして、この世界が本当の世界でもある」
「本当の世界? それってつまり、あの世界がゲームだってこと?」
「厳密には違うが、まあ同じようなものだろう」
「ゲームの中のゲーム……」
「逢魔零。お前が全ての元凶だ」
「逢魔零って言うのはやめてくれないかな。僕は逢魔集だよ」
「逢魔。お前が作ったあるシステムが原因となって世界人口の98%が今、あのシステムに取り残されている」
「あるシステムって?」
「EDEN……エデンだ」
「エデン……」
聞いたことのない名前だ。
「実際に見た方が早いでしょう」
アリスさんの言葉にデウスはしゃべるのをやめて、一枚の画像を映し出してきた。
「これは……」
東京タワーの横にでかい円柱形の柱が立っている。
「バベルの塔。No.5」
「バベルの塔?」
「あの中に人間はデータとして生きている」
「だが、私たちレジスタンスはバベルの塔からリアライズシステムを使い。あなたを蘇らせた」
「リアライズシステム」
ふと、右手のリストバンドに目がいった。
「ウェポン」
月のウサギと機械時掛けの神84
リアライズシステム
ウェポン。
その一言で魔剣レーヴァテインが現れた。
「確かに、リアライズシステムは
生きている」
デウスが言う。
「話を戻すぞ。逢魔。お前が作ったシステムにより人間はデータとして仮想世界に閉じ込められ、生きている」
アリスさんが言う。
「舞浜の外にはエデンの端末たちがうようよしているわ」
「舞浜はなんで安全……? なんですか?」
「地図に載っていないからだ」
「舞浜は元々超能力者を隔離するための学園。なら、地図から消すくらいのことはやるでしょう」
「超能力者っているんですか?」
「ええ。ここは月のウサギと機会時掛けの神と同じと思っていいわ」
「デウス。僕がヘヴンズゲートを通る時に記憶を失ったって話だけど、元に戻す方法はないの?」
「あるぞ、だが危険だ」
「危険なの?」
「肉体的なダメージはない。だが、精神的にダメージを受ける可能性がある」
「そう」
「やるか?」
「ああ。やるよ」
「分かりました」
アリスさんが取り出したのは見覚えのある機械だった。
「ヘッドギア?」
「ええ。これで深層意識へアクセスします」
「……」
「付けてください」
ヘッドギアを付ける。
「では、よい旅を」
スイッチが入り、意識が暗転する。
鏡代学園。
「安心院さん。今までどこにいたの?」
僕がお化け屋敷から出てくると、安心院さんは出口で待っていた。
「遅いぞ。私は三分も待っていたのに」
「三分くらい許してよ……」
「それはそうと白崎真白。『青目』と『赤目』について話をしたな」
「うん」
「ならいい」
「安心院さん。なんでそんなこと聞くの?」
「それは……ふぁああ」
安心院さんがあくびをした。
「安心院さん?」
辺りを見渡すと生徒や文化祭の参加者が眠りについていた。
「一体何なんだ?」
みんなが眠りにつく中、一人の老人だけは眠らず、歩いていた。
「あの?」
「ふむ、やはり王には効かんか」
老人の両目は青く染まっていた。
「『青目』ッ!?」
「わしはヤマネ。周囲の人間を眠らす能力者じゃよ」
月のウサギと機械時掛けの神85
真実
「はぁ!?」
魔剣レーヴァテインを逢魔零に向かって振り下ろす。
ガキン!
「おいおい。その程度かよ」
零は同じく魔剣レーヴァテインで僕の魔剣を弾きかえした。
ガキッ!
「まだだ。負けられない」
「なら……」
数時間前。
「ん……ここは?」
「気が付いたか?」
僕は何もない空間にいた。
一面真っ白で、どこまで続いているか分からない。
そして、僕の前に逢魔零がいた。
くすんだ灰色の瞳。
違うのは髪の長さくらいか。
僕がポニーテールにしているのに対して零はショートカットだ。
「俺を倒したら、記憶を返してやる」
「そう」
ここまで来たらやるしかない。
「もっとも、偽りの記憶だけのお前は勝てないがな」
数時間後。
「はぁはぁ」
「言ったろ。偽りの記憶だけのお前は勝てないって」
「ここにくるまで、いろいろなことがあった」
魔剣を握り直す。
「最初は舞浜に来たら爆発と共に棺が現れた」
ガキンッ!
魔剣と魔剣がぶつかり合う。
「その次は風紀委員選抜選挙をした」
「くっ!?」
「生徒会長選挙もあった」
零の魔剣にヒビが入る。
「どこに、どこにこんな力が……」
「神崎暁とバトルをしたこともあった」
「ぐ……」
「Kの事件では、零が初めて出てきた」
「……」
「その後、犬塚会長が操られた時にはデウスに助けられた」
「……ク」
「寮が燃えて女子寮に移り住んだこともあった」
「……だから、どうした!」
魔剣同士を再度ぶつけ合う。
「上条式が転校してきたこともあった」
「だから何だ!」
「月のウサギ。日比谷棺ちゃんを探すために再びあのゲームをプレイした」
「何が言いたい!?」
「それからもいろいろあった」
「だから何だ!」
「僕は偽りの記憶だけじゃない!」
光の柱が生まれる。
「『目を開く』能力……」
左目が紅く染まるのが分かる。
視界がクリアになり、崩壊線がよりはっきり視える。
「逢魔零。君を倒す」
「逢魔集。お前を潰す」
「「勝負!」」




