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16話

月のウサギと機械時掛けの神76


文化祭前日。





文化祭前日。


「終わった〜」


六時すぎ、やっと射的の準備が整った。


「逢魔くんおつかれ、はい。ジュース」


「ありがとう。天王寺さん」


ジュースを受け取り、礼を言う。


「天王寺さんってさ、気配り出来るし、友達とか多いし、うらやましいよ」


「そんなことないよ」


「僕はほら、男子で一人だけ浮いてるし、桂さんには文化祭のことで迷惑かけっぱなしだし、最低だよね」


パチン!


一瞬、何をされたのか分からなかった。


天王寺さんが僕を平手打ちしたのだ。


「集くん。自分を最低だなんて言うのはやめてください」


「……はい」


一瞬言い返そうかと思ったが、天王寺さんが涙を浮かべているのを見て、素直に謝った。


「ごめんなさい」


「集くんは自分を卑下ひげしすぎなんだよ」


「でも、みんなにいつも助けられて……」


「それでも、集くんは一生懸命頑張ったんだよね」


「……うん」


「なら、集くんは誇っていいんだよ。自分は立派に生きてるぞってね」


「天王寺さん。ありがとう」


「なんでお礼を言うの?」


「大事なことを、思い出させてくれたから」


「じゃあ、そろそろ帰ろっか」


「そうだね」





夜。


エウレカ。


「誇っていい……か」


僕は迷っていた。


このままでいいのか?


『青目』がまたやって来るかもしれない。


そんな危険に、鏡代学園のみんなを巻き込んでいいのか。


戯言ざれごとだよな……」


まるでピエロだ。


僕は一体、どうすれば。


「王様。今ヒマ?」


「岡さん。こんな時間にどうしたの?」


「異端魔術の情報網に『青目』の情報が引っかかってね。報告しようかな〜って」


「『青目』!?」


「うわっ!? びっくりした。聞く?」


「ああ、聞かせてくれ」


「『青目』の主力が明日鏡代学園へ向かう」


「なんだって!?」


「まあまあ落ち着きなって。異端魔術ではこれに一切関知しないことに決めたから」


「なんで!?」


「『青目』は能力者の集団だよ。異端魔術のように戦う力ではなく守り、やす力じゃ勝ち目がないよ」


「でも。鏡代学園のみんなを避難させないと」


「それなら大丈夫。理由をつけて文化祭を一日ずらすから」


「でも、根本的な解決にはならない」


「なら、どうするの、王様?」








月のウサギと機械時掛けの神77


文化祭。





文化祭一日目。


そこには、『赤目』の僕らと周、暁、刻がいた。


「集……」


周がみんなを代表して言う。


「これは戦争よ。死人が必ずでる。それでも集は戦うの?」


「ああ、罪を背負う覚悟はある」


「そう」


そして、僕は……


パパパン!


足元に銃撃がきた。


「それじゃ、作戦通り各個撃破で……」


僕は正臣と青い目をした男たちを引きつける。


「俺の名はグリフォン。空間を引き裂く能力だ」


盾代わりにしていた柱が壊れる。


「正臣!」


「はい!」


正臣がボタンを押す。


すると、グリフォンたちの足元に設置した地雷が爆発した。


「空間を切り裂くっていったろ」グリフォンは無傷だった。


周が後ろからグリフォンを銃で撃つ。


「無駄だ」


銃弾が真っ二つになり、落ちた。


「死ね!」


周に不可視の斬撃が飛ぶのが分かった。


周はかろうじてよけた。


「正臣。君を使う!」


正臣の胸に右手を押し込む。


光の柱が生まれる。


そしてゴツゴツしたヴォイドを引き出した。


「イメージ」


ヴォイドが砕け、現れたのは巨大なアンチマテリアルライフルだった。


「周!」


「どこを狙っている。俺はこっちだぞ?」


僕は躊躇ちゅうちょなく周を撃つ。


周の体に銃弾が貫通し、押し出されるように大鎌が現れる。


「ヒトゲノム兵器を取り出す銃だと?!」


周が鎌を持つ。


途端に周の髪が白く、目が赤く染まっていった。


「私、理不尽な暴力が使える?!」


「なんの話をしている!?」


グリフォンが斬撃を周に向かって飛ばす。


周は避けない。


「理不尽な暴力……」


斬撃は周に当たる寸前、威力はそのままで方向だけを180度変えた。


「なに?!」


グリフォンはとっさに斬撃を生み、相殺した。


が、


「遅い!」


周の鎌がグリフォンを切り裂く。


「ぐ……」


「ここはいいから、みんなのところへ」


「分かった!」


僕はアンチマテリアルライフルで刻と暁を撃った。


「やっぱ、ライフル銃はしっくりくるな」


「私のワイヤーは鋭いですわよ」


二人は『青目』に突撃していった。


「正臣。ありがとう」


アンチマテリアルライフルが光の粒子に変わる。


「ねぇ、ハートの女王様って知ってる?」


何時の間にか後ろに青い目の女性がいた。


「お前……」


「ハートの女王様。一秒を十秒に延ばす能力よ」


「集。避けろ!」


頭を低くする。


頭の上を銃弾が通ったのが分かった。


「外神さん! 僕ごと殺す気ですか!?」


「生きてるだろ。さあ、俺を使え」


「分かりました」


外神さんのヴォイドを引き出す。


そして、


「ハートの女王様は健在よ」


ハートの女王様が銃を撃ってくる。


「イメージ」


ヴォイドが砕け、中から花弁のような複数の盾が現れた。


「外神さん。あなたの心の盾、


確かに受け取りました」


「俺が銃撃する。お前はガードを頼む!」


「了解!」








月のウサギと機械時掛けの神78


予想外





「あれれ〜、おかしいな?」


青い目の青年は言う。


「何が?」


青い目の少女はそう聞く。


「七卿以外の全戦力を投入したのに、あっさりやられちゃってるよ」


「流石はアリスといったところかしら」


「いや、ヴォイド兵器だろ。ヒトゲノム兵器を取り出すなんてチートな能力だし」


「ちょっと見に行く?」


「チェシャー猫。君が行けば? 殺してくれるかもよ」


「ハツカネズミ。君が行きなよ。どうせ、それも端末だろ」


「あははは。それもそうだ。けどね。いくら僕が端末を操る能力者だといっても、死ぬ痛みまで共有するからね。ある意味死ぬよりつらいよ」





鏡代学園。


「はぁはぁ……全員倒したか?」


「うん。そうみたい」


周が同意する。


「しかし、せっかく文化祭の準備をしていたのに、粉々になっちまったな」


外神さんの言う通り、文化祭の準備は文字通り銃撃と能力で粉々になっていた。


「どうすれば……?」


その時、ヘリがやって来た。


「僕が全て、『無かったことにする』よ」


「その声。白崎くん?」


「ああ。そうだよ〜、たしか逢魔くんだっけ、よろしく」


ヘリから降りた白崎くんは静かに集中し始めた。


「『目を逸らす』能力……」


白崎くんの目が赤く染まった。


学園の傷が消えていく。


いや、無かったことになっていく。


「ついでにその死体も生き返らせてあげるよ」


「白崎くん。こいつらは敵だ」


「でも、人間だ」


ヘリから中性的な女の子が出てくる。


「安心院さん」


「安心院……さん?」


「ああ、私は安心院さんだ。それでだ、いくら敵でも生き返らせた相手を即座に殺したりしないさ」


「でも……」


「いざとなったら長瀬ながせみなとの『目を醒ます』能力で能力をうち消せばいい。いや、無理か」


「何が無理ですって?」


湊が言う。


「だから、君の『目を醒ます』能力じゃ、無かったことをさらに無かったことに出来ないってことだよ」


「なら、今からやってみる」


湊が集中する。


湊の目が赤く染まっていく。


「『目を醒ます』能力……」


シーン。


何も変化がない。


「『目を逸らす』能力……」


白崎くんが死体となった『青目』の死体へ能力を使う。


「死体が、生き返った!?」


目の前で死体が生き返ったのだ。


「能力は『無かった』ことにしてあるから、無害だよ」


それを聞いて僕は、


「あの、グリフォンさん」


「何かな?」


グリフォンと名乗った男に問いかける。


「なんで僕らを狙うんですか?」


「カナリアだ」








月のウサギと機械時掛けの神79


カナリア





「カナリア?」


意外な言葉につい聞き返してしまう。


「ああ、カナリアの、彼女の歌を聞いたら、何か彼女の言うことを聞きたくなって、それで、すまない」


「いえ」


「カナリアか……」


意外な声がした。


「月島さん。今までどこに居たんですか?!」


月島さんは安心院さんを見る。


「ああ、私なら気にしないでくれ」


「じゃあ、説明するぞ。私が鏡代学園に来るまで調べ物をしていたというのは知っているか?」


「ええ、まあ」


「調べ物とは『青目』の頂点に立つ七卿セブンスロードと呼ばれる者たちについてだ」


「七卿……」


「白うさぎ (The White Rabbit)。ハツカネズミ (The Mouse)。カナリヤ (The Canary)。チェシャー猫 (The Cheshire Cat)。三月うさぎ (The March Hare)。ヤマネ (The Dormouse)。そして帽子屋 (The Hatter)。 の七名からなる『青目』の中核だ」


「そんな人間が居たんだ」


「おや、君はすでに一人と、帽子屋と会っているぞ」


「え?」


「帽子屋 (The Hatter)。 上地式だよ」


「で、七卿を潰せば『青目』は


絶滅するのかな?」


「木戸さん。そんな暴力的な……」


「それよりもだ。逢魔集」


「はい」


「私と明日デートしろ」


「は?」





夜。


エウレカ。


「王様はやっぱ、スゴイね」


「岡さん。なんの話ですか?」


「銃や爆弾を渡したのは私たちだけど、それで能力者の集団を壊滅させるってスゴイよ」


「はぁ……」


「どしたの?」


「実は明日、デートに誘われて」


「よかったね。王様」


「いや、月島さんのことだから何か裏があるんじゃないかと思って……」


「案外本気かもよ」


「え!?」


「だから、王様のことが本気で好きかもってこと」


「まさか。それに僕には射的の手伝いがあるから一日中デートするわけじゃないし」


「でもさ、王様」


「なに?」


「私は王様のこと、好きだよ」








月のウサギと機械時掛けの神80


文化祭





文化祭二日目。


「いや〜、昨日はなんでか知らないけど文化祭出来なかったから。今日からボクたちが頑張ろう」


「ですね」


綾小路あやのこうじかえで笹瀬川ささせがわあきが意気投合している。


「アッキーもカエデも頑張ってね」


「安藤先生は何かしないんですか?」


「私? 生徒が何かしないか監視」


「思いっきり酒のんでますよね」


「ノンアルコールだから大丈夫」


「アルコール濃度1%って書いてありますよ」


カエデがそう言う。


「え、本当? 私家に帰れないじゃん。車で通っているのに」


「夜になればアルコールが抜けるんじゃないですか」


「でも飲む」


「なんで!?」


「アッキーもカエデも逢魔も、羽目はめ外さないようにね」


「「「この教師にだけは言われたくない」」」





文化祭開始まで一時間。


「よし、射的の準備が終わったよ」


「逢魔くんありがとう。やっぱり力仕事は逢魔くんね」


「あんまり力は無いけどね」


「にしても、暑い。逢魔くん。ジュースを買ってきて。炭酸ならなんでもいいから」


カエデからお金をもらい。ジュースを買いにいく。


「おはよー、王様」


岡さんがいた。


「今日は目が青くないんですね」


「あれ、コンタクトレンズだから」


「へぇ、そうなんですか」


「知らなかった?」


「ええ」


「文化祭。私たちも行くからね」


「射的をしていますから。よかったら来てください」


「うん」





「ジュース買うの遅い」


「ごめん。知り合いがいてさ。話してて」


「ならしょうがないね」


「そういえばアッキーは?」


「あれ? どこだろ?」


「探してくる」


「うん」


「アッキー、どこ〜!」

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