14話
月のウサギと機械時掛けの神66
転校生
「今日付けで鏡代学園に復学することになりました。月島友です」
今日、転校生としてやって来たのは月島さんだった。
「月島さん久しぶり」
「あぁ、風紀委員の逢魔集か」
「もう風紀委員じゃないよ。改めてよろしく」
「ああ、よろしく」
周が言う。
「月島。あんた今までなにをしてたの? 舞浜の女子生徒はみんな鏡代学園に入学したはずなんだけど?」
「調べ物をしていてね」
月島さんは僕を見て言った。
「放課後。二人きりで話がしたい」
「いいけど……」
放課後。
「バスで移動するぞ」
「うん、いいけどどこへ行くの?」
「秘密だ」
バスに揺られること三十分。
「着いたぞ」
「ここは……」
着いたのはカフェだった。
名前は『フロリア』
「やぁ、みんな来たね」
月のウサギと機会時掛けの神のゲームの中にいた優男が現れ、僕と月島さんをカフェの中へ案内した。
「まずは自己紹介しようか」
優男の他に数名の男女がいた。
いかにもといった剣道少女が手を上げる。
「私の名前は剣籐霧華。存在感を増やし、注目を浴びる『目を盗む』能力だ」
黒髪のツンツンした髪型の男が手を上げる。
「外神黒。記憶を操作する『目を殺す』能力だ」
優男が言う。
「木戸秋葉。気配を消す『目を隠す』能力です」
携帯ゲームをしていた少女がが手をあげる。
「秋瀬正臣。他人の能力を強化する『目が冴える』能力だよ」
そばにあったノートパソコンに女の子の画像と音声が出る。
「リア。他人の能力を取り替える『目を変える』能力デス」
茶髪の女の子が言った。
「長瀬湊です。他人の能力を打ち消す『目を醒ます』能力です」
優男、木戸さんは言う。
「僕らは『赤目』という異能の力を持っている」
「はぁ……」
月島さんが言う。
「アキハ。実際に見せた方が早い」
「そうだね」
木戸さんの気配が消える。
そして姿も消えた。
「あれ?!」
「『目を隠す』能力だよ」
木戸さんが僕に触れる。
その途端、僕は木戸さんを認識できた。
「俺ら『赤目』は能力発動中には目が赤くなる」
「本当だ」
木戸さんの両目は血のように赤く染まっていた。
「分かってくれたかな?」
木戸さんが能力を使うのをやめた。
「まだ、半信半疑ですけど。超能力ってやつですか?」
「いや、俺たちはデュナミスと呼んでいる」
「デュナミス……」
「この世界には大きく分けて二つのデュナミス能力者がいる。俺たち『赤目』と上条式の所属する『青目』だ」
「青目……」
「俺たち赤目と青目は互いに敵対している。最悪、街中で襲われる可能性もある」
月島さんが言う。
「というわけだ。逢魔集。帰り道は気を付けろ」
「あの、僕はデュナミスなんてないんですが……」
「あるだろ。禁断の実。アリスが……」
「俺たち風に言えば『目を開く』能力かな」
「よく意味が分かりません」
外神さんが言う。
「アキハの説明が説明になってないのはいつものことだ」
月のウサギと機械時掛けの神67
無人島
「ん、ここは?」
目が覚めると僕は海岸にいた。
携帯は圏外で、どうやら無人島らしい。
「確か木戸さんと話していて……」
思い出そうとすると頭に激痛が走る。
「ん、このポーチはなんだ」
白いポーチが僕の目の前に落ちている。
「中身は……なんだ、これ?」
四角い箱が八個入っている。
「まさか、最近読んだBTO○OMってやつじゃないよな」
BTOO○Mを簡単に言えば爆弾を使い互いに殺しあう爆殺遊戯というマンガだ。
アニメを見た感想を言わせてもらうと、僕はパラシュートで落ちてくるべきだと思う。
「起きましたか?」
ポケットの携帯からリアの声がする。
携帯を開くと女の子の画像が現れた。
「ワタシはリアのバックアップの一部デス。何かあったときのため、あなたの携帯に入っていました」
「ふーん。で、ここはどこなの?」
「GPSを使って位置を特定しました。ここは日本海にある地図に載っていない無人島デス」
「だろうと思った」
僕はポケットから携帯用の太陽光発電機を取り出した。
「今のうちに充電しとこう」
「用意がいいデスね」
「まあね、中学生まではサバイバル生活をしていたから」
昼。
「充電も出来たし、森の中に入るか」
「森林浴デスね」
「……」
「冗談デス」
「だよね」
一瞬携帯をかち割りたくなったのは秘密だ。
「湧き水発見! これであとは食料だけだな」
海岸に戻り、簡易的な釣り竿を作る。
そして、魚を釣っていたら夜になった。
「ライターで火を起こしてっと」
魚を焼き、食べる。
「うん。美味しい」
「確かにサバイバル技術はスゴイデスね」
「リア、黙って……」
海岸の奥に誰かいる。
「誰だ!」
「お腹すいたよ〜」
金髪の女の子はそう言うとこちら側へふらふらと歩いてきた。
「食べる?」
「え、いいの?!」
「まだ魚はあるしね」
「ありがとう」
「いいんデスか?」
「まあ、悪い人じゃなさそうだしね」
「ありがとうございました。わたしの名前は榎本紗江っていいます」
「僕の名前は逢魔集。こっちは、リア」
「始めまして、リアデス」
「わー、すごい」
「で、あなたは一体何者なんですか?」
月のウサギと機械時掛けの神68
爆殺遊戯
あれから時間が経ち、僕はようやくこの島に来た理由を思い出していた。
外神さんの、
「アキハの説明が説明になってないのはいつものことだ」
と、言ったセリフの直後、カフェにスタングレネードが投げ込まれたのだ。
そして、僕はみんなを逃がすために時間稼ぎとして足止めをした。
そして捕まったのだ。
「君も『赤目』か?」
僕にそう質問した青年の両目は青く光っていた。
「さあね」
「話を変えよう。俺は『赤目』を隔離するために島を買った」
「それで?」
「その島で三日間生き延びることが出来たら解放してやろう」
「三日間、生き延びるだけでいいんだな?」
「ああ、だが、君たち三人の他にハンターがいる。まあ、せいぜいあがけ」
「思い出した……」
「なにが?」
紗江に思い出したことを話す。
「あ、そうだったね。けど、残りの一人って誰なんだろう?」
「さあ、僕も覚えてない」
「ちなみに君のデュナミスは?」
「わたし、多分、『目を凝らす』能力だと思う」
「どんな能力なの?」
「あんまりたいした能力じゃないよ。それより朝飯の準備が先だよ」
「そうだね」
僕は釣りをしながらリアに聞いていた。
「ねえ、リア。『目を凝らす』能力ってなんだろうね」
「さあ、ワタシにも分かりません」
「あ、釣れた」
朝食後。
「とりあえず警戒するのはハンターだよね」
紗江がポーチを取り出す。
「わたしの爆弾は多分クラッカータイプ。どこかへぶつかれば爆発する」
「僕のはタイマータイプかな。ボタンを押して時間差で爆発する」
パンッ!
足元に銃弾が当たる。
「ヤバイ。ハンターだ!」
僕と紗江は海からボートでやって来るハンターから逃げるため、森の奥に逃げた。
「やるしか、ないか……」
「集?」
「紗江。僕が合図したら僕の爆弾を僕の足元へ投げてくれ」
「うん、分かった」
紗江にポーチを渡し、僕はハンターを待つ。
「来たか」
ハンターがやって来た。
「……」
無言で撃ってくる。
「容赦ないな。紗江!」
「……」
10。
9。
8。
7僕は後ろに足を向ける。
6。
5。
4僕は後ろへ走り出す。ハンターは僕を追いかけようと走る。
3。
2ハンターは足元の爆弾に気付く。
1。
「ゼロ」
爆発が起きた。
「やった!? ハンターを倒したよ!?」
「ああ、そうだね」
ハンターの死体に十字をきる。
「なにしてるの?」
「ただの弔い」
月のウサギと機械時掛けの神69
ヴォイド
「どうしよう?! もう爆弾がないよ!?」
ハンターたちから逃げ続けて三日目。
最終日に僕らはハンターたちに囲まれていた。
「……死ね」
パパパン!
銃弾が僕を貫いた。
血が雨のように噴き出す。
「集。死んじゃいやだよ」
「……ご……めん……」
紗江の両目が赤く染まる。
「……『目を凝らす』能力」
そして、僕の視界は暗転した。
「どうしよう。集、もう爆弾がないよ!?」
「えっ!?」
僕は、僕が撃たれる数分前にいた。
「まさか、時間を巻き戻したのか!?」
時間逆流。
それが、『目を凝らす』能力。
なら、僕も、試すしかない。
「紗江。君を使うよ」
「え!? 集?」
左手で紗江の手を握り、右手を紗江の胸に押し込んだ。
光の柱が生まれる。
「うぅ、あぁ……」
引き出したのは天然の鉱物のようなゴツゴツした物体。
『ヴォイドにイメージを流し込め』
イメージをする。
時間を操る。
時計。
ゴツゴツした物体が粉々に割れ、内部から出てきたのは腕時計だった。
「止まれ!」
腕時計の針が止まる。
そして、辺りの時間も止まった。
「紗江!」
紗江に触れる。
すると、紗江の時間が動き出した。
「集。これは一体?」
「とりあえず、ここから離れよう」
紗江と一緒に海岸へ逃げる。
そこには、青い目の青年と僕と同じくらいの年の少年がいた。
「やあ。遅かったね。彼はとっくに着いていたよ」
紗江が言う。
「人の命をなんだと思っているの!」
「ハンターたちのことかい? 元々死刑囚だった彼らに君たちを殺せば無罪にしてやると言ったのは確かに俺だけどね。彼らはとっくに死ぬ運命だったんだ。少し早く死んだだけだよ」
「この、外道!」
「紗江。気持ちは分かるけど抑えて」
「くっ……」
「僕たちを家に返してください」
「ああ、そんなことも言ったね。いいよ。このゲームも余興のつもりだったし。いいよ」
『このままでいいのか?』
「……いいわけがない」
「集?」
『なら、俺の名を呼べ』
「?」
『忘れたのか? 俺の名は……』
「逢魔……零……」
途端に視界が暗転した。
再び視界が明るくなったとき、青い目の青年と横にいた少年は死んでいた。
そして、僕の手は赤く染まっていた。
「紗江……」
「あなたが、いきなり飛びかかっていって、少年が何か能力を使ったんだけど弾いて、あなたが、二人を殺したの……」
「僕が、殺した……」
違う。
殺したのは逢魔零だ。
『違わねえよ。俺はお前。お前は俺。一心同体だ』
「うぅ……」
胃から胃液がこみ上げてくる。
僕は紗江の前で、吐いた。
死について耐性は出来ていたはずなのに、僕はいつもこうだ。
大事なことを他人に押し付ける。
そんな生き方がズルいことくらい知っている。
だけど、
「集。奴らの乗って来た船がある。帰ろう。わたしたちの家へ」
「うん。そうだね」
僕は船に向かう。
「リア。船をジャック出来る?」
「できマスよ」
「じゃあ、頼む」
月のウサギと機械時掛けの神70
帰ってきた。
「ただいま〜」
僕が無人島から帰ってきたのは文化祭二週間前だった。
「集。探したんだぞ」
父は僕から(逢魔零のこと以外の)話を聞くと、安全面からバベルから学校に通うように言ってきた。
「分かった。バベルから通うよ」
「それで、榎本紗江。君も例外的に鏡代に通ってもらうことになるが。いいね」
「わたしは元々友達なんていないし。いいわよ」
「あの、父さん」
「なんだ、集?」
「父さんは話を信じるの? 『赤目』とか、デュナミスとか?」
「話を信じるもなにも、月のウサギと機会時掛けの神は『赤目』を覚醒させるためのゲームだったからな」
「えっ!?」
驚く僕を置いて、父は歩き始めた。
「ついて来なさい」
向かった先はバベルの居住エリアだった。
「木戸さん!?」
「やぁ、集くん」
そこにはカフェ『フロリア』にいたメンバーが揃っていた。
「まず、なんの話からしようか」
父が木戸さんを見る。
「分かりました。俺から話します。俺があの、月のウサギと機会時掛けの神のゲームを作りました」
「えっ!?」
「集、今は黙って聞きなさい」
「俺は当時、隕石からヴォイドという未知の物質を取り出す研究をしていました」
「研究の結果、ヴォイドはヒトゲノムに反応して様々な効果をもたらすことが分かりました」
「そこで俺はヴォイドを人工的に作り出す研究を始めました」
「その結果、一人の少女がヴォイドを吸収し、人からヒトゲノムを武器としてコンバートすることに成功しました」
「俺はその能力を少女の名前、アリスと名付けました」
「しかし、アリスはその後失踪しました」
「俺は、残りのヴォイドを使い、ヴォイドにアクセスできるヘッドギアを開発しました」
「もし、アリスと同じ現象が起これば、ヘッドギア経由でヴォイドを吸収できるように」
「そして、それを実験するために完成させたのが月のウサギと機会時掛けの神です」
「やはりそうか」
父はヘッドギアを取り出して言った。
「君たち『赤目』のヘッドギアは短時間で大容量の通信記録があった。おそらくそれが」
「ええ、ヴォイドを吸収し、『赤目』を覚醒させた瞬間です」
「この地球上にはもう天然のヴォイドは存在しません。宇宙からヴォイドが降ってくるのを待つか、それとも俺たちの中に寄生しているヴォイドを取り出すしかない」
父は言った。
「集。お前が望むならヴォイドを撤去して普通の学生にしてもいいと思っている」
「無理です。ヴォイドは身体中に寄生しています。加えて集くんはすでに能力を使った。ヴォイドと一心同体なんです」
「木戸秋葉……」
「逢魔博士。次はあなたの番じゃないですか?」
「父の番?」
「ヘヴンズゲート計画。話してくれますよね」




