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十三話

月のウサギと機械時掛けの神61


反撃開始





犬塚会長は語る。


「あの後ゲームのディスクは回収された。けれど、一部のユーザーは隠し持っていたんだ」


刻は言う。


「それを俺たち世界中の舞浜生徒がコピー、つまり違法ダウンロードしたわけだ」


「で、ゲームにログインしたら舞浜ではなくここに飛ばされたというわけだ」


「時間切れだぜ。犬塚一果」


「上条式。……とりあえず今の彼女は無力だ。このカフェで匿ってくれ」


優男が言う。


「でもモンスターは世界中にいる。君たちは何か反撃の手はあるのか?」


「あります。一つ、僕たち舞浜生徒は全員が超能力者です」


刻は言う。


「二つ目、舞浜生徒は全世界にいる」


「じゃあ、始めましょうか。反撃を」


棺が僕の手をとる。


「行こうぜ」


僕はそれに一瞬戸惑ってから手を握り返す。


「うん、行こう!」





街中で戦闘が始まっていた。


「一般人の避難が優先だ!」


「誰か! 救護を頼む!」


「棺……」


「ああ、使えよ。俺を」


棺の手をとる。


光の柱が生まれ、大剣を棺から引き出した。


そして、


「ウェポン!」


左手には魔剣レーヴァテインを出現させた。


「行くぞ!」





「キド。行かなくていいの?」


「ああ、フラン。彼らならきっと大丈夫だ」


「キド。まさか君がキドだとわね」


「上条式?」


「月のウサギと機会時掛けの神の開発者にして、舞浜学園創設者」


「どうやら俺のことを知ってるみたいだな」


「ヒトゲノムの結晶化。それにともなう結晶化したヒトゲノムの武器化。異端科学のエキスパートのキド。ウワサではある実験をシュミレートするために月のウサギと機会時掛けの神を作ったとか?」


「正解だよ。俺は『赤目』で世界を変えるためにこのゲームを作った。結果的に失敗したがね」


「いや、成功だよ。君の思った通り『赤目』アリスの能力者逢魔集は現実世界で能力を使った」


「本当か?」


「ああ、それに僕ら『青目』も次々と能力を覚醒させてきている」


「だが、赤目は青目を絶滅させる」


「それは青目も同じさ」


「アリス……『目を開く』能力」


「彼で良かったのかい? アリスの意味も分からずに使っている逢魔集で?」


「あの子とデウスが選んだんだ。間違いはない」


「そうかい」


「ああ」


「ところで、カフェならコーヒーを一杯くれないかな?」








月のウサギと機械時掛けの神62


NPC





「あれ? あの子がいない?」


フロリアで出会った中性的な女の子と学園祭に来たが、離れてしまったらしい。


「まあ、いいか」


「白くん」


時同さんが話しかけてきた。


「えっと、あの、その……」


無かったことにしたはずなのに、彼女は……


「わたし、時同沙耶は白崎真白くんのことが好きです」


「……いきなりだね」


「ずっと前から好きでした。あなたに記憶を無かったことにされても、ずっと……」


「時同さん」


「わたし、気付いちゃったんだ。わたしがNPCだってこと」


ノンプレイヤーキャラクター。


操り人形ってこと?!


「もう、さよならしなくちゃ」


『世界を欺く』能力が時間切れになったのが分かった。


「時同さん……」


「なに?」


光の粒子になりながら、時同さんはそう言った。


「僕も、ずっと好きだった」


「……嬉しい」


その言葉を最期に、時同さんは消えた。


辺りが廃墟に変わる。


「うぁあああああああああああああ!!!!」


生まれて始めて、心の底から泣いた。


「許さない……」


モンスターが現れた。


「『世界を欺く』……」


モンスターは体の大半を無かったことにされ、死んだ。


その直後、無かったことにされた体が復活するが、死んだ今では意味はない。


「許さない……」





「はぁっ!」


魔法陣の足場を作り、空中へ跳躍する。


そして、大剣と魔剣でモンスターを切り刻む。


空中から飛行型のモンスターが現れた。


「集。俺の力も使え!」


刻の手をとる。


光の柱が現れ、刻からスナイパーライフルを取り出した。


「当たれ!」


照準をモンスターに合わせ、撃つ。


「ここでの戦闘は終わりだな」


「ああ」


僕は刻に問いかける。


「なんで犬塚会長の言うとおりにまたゲーム内に来たの?」


「ああ、実は逢魔博士がまだゲーム内に取り残されているプレイヤーがいることに気付いてな。このゲームを管理している。デウスエクスマキナにアクセスして強制ログアウトさせるつもりだったんだ」


「デウスエクスマキナ……」


「集、次行くぞ!」





「ん、ここは?」


気付けば僕、白崎真白は学園の屋上にいた。


そして、もう一人の僕がいた。


「人を、待っているんです」


「そうだね」


彼が待っている人というのが、


僕だと直感ちょっかんで分かった。


「やっと会えた」


「僕をずっと待っていてくれたんだね」


「ああ。幼い頃、交通事故で時同沙耶を失った僕は彼女と全く同じ思考回路を持つNPCを作った……」


「それが時同さん……」


「そう、彼女は代わりだったんだよ」


「違うよ」


「?」


「彼女は、時同沙耶はたしかに一つの人間だった」


「そうだな……」








月のウサギと機械時掛けの神63


ヘヴンズゲート





数日後、モンスターを全て倒し終わり、刻たちが残りのプレイヤーを強制ログアウトさせ、僕たち以外はログアウトした世界で僕は式のとなりにいた。


「扉を開いてくれ」


「ああ、ここに来たときに開けたゲートのことかい?」


「ああ、そうだ。棺」


「一つだけ封印を解いてやるよ」


棺が式に手をかざす。


「うん。開いてあげるよ」


扉が現れた。


「帰ろう」


僕の横に棺、式、そして、フランベルジェさんが立つ。


「フランベルジェさん?」


「彼女も連れて行ってくれ」


優男に言われ、僕らは扉をくぐった。





「これでこの世界には俺たちだけになったね」


「……」


「無口になったね」


俺は目の前にいる少年、白崎真白に向かってそう言った。


「僕はもう一人の僕に会いました」


「ドッペルゲンガーか?」


「はい。多分僕の影、なんだと思います。僕は嫌いなことを全て、記憶すら彼に押し付けてきた」


「だから?」


「僕はもう逃げません。時同沙耶からも、アリスからも」


白くんが光の柱に包まれる。


「ありがとうございました」


その言葉を最後に、白くんはログアウトした。





「デウス。彼はヘヴンズゲートを通過するときにアリスのことを忘れると思うかい?」


「さあな」


「いずれにしろ。俺の実験、ヘヴンズゲート計画は続いている。いずれ彼もアリスに出会うだろう」


「この世界は、間もなく無に帰る」


「そうか。じゃあ、デウス。最後の命令だ。俺のメッセージをこのゲームのプレイヤー、詳しく言えば舞浜学園の生徒全員に伝えてくれ」


「断わる」


「創造主の命令に逆らうのかい?」


「伝えたければ自分で伝えることだ」


「やっぱ、俺が自殺するって気付いちゃったか」


「僕はゲームのオブザーバーとして様々な人間を見てきた」


「デウス……」


「そして、アリスに魅入られた少年、逢魔集と出会った。また、『目を逸らす』能力、白崎真白と出会った」


「白くんは見ていて楽しかったな」


「彼らを見ていて僕が思ったのは人間の可能性の無限さだった」


「ああ、白くんは『目を逸らす』能力者でありながら最後は『真実』を見ようとした」


「僕は彼らにあるものをたくした」


「まさか?!」


「そう、スティグマだよ」


「そうか……」


『それでは、さよなら』


デウスのその言葉を最後に俺はログアウトした。





月のウサギと機械時掛けの神64


フランベルジェ





扉の向こう側で待っていたのは意外にも父だった。


「集、心配かけやがって、胸触らせろ!」


「なぜそうなる!?」


手をワキワキと動かしている父を蹴り飛ばす。


「痛いな〜、ただのスキンシップじゃないか」


「どの口が言うんだ?」


父の気配が鋭くなる。


「日比谷棺。フランベルジェはこちらで保護させてもらう」


「棺はまあ、分かるけど。なぜフランベルジェさんまで?」


「フランベルジェというプレイヤーは存在しない。つまり……」


「棺と同じってこと?」


「心配するな。基本的人権は守るし、他の研究者たちには秘密にしておく」


「分かった。信じるよ」


「ありがとう」


父は頭をくしゃくしゃと撫でて言った。


「今日はもう遅い。三人ともバベルに泊まっていきなさい。式くんはちょっとこっちに来なさい」


「僕は逃げたりしないぜ。能力だって封印されているんだぜ」


「集、さっさと行きなさい」


「……はい」


バベルの宿泊施設に向かいながら、ふと、後ろを振り返ると父が真剣な表情で式に何かを言っているのが分かった。


と、


「集も居ましたの?」


「暁。どうしてバベルに?」


「暁だけじゃなく、私たちもいるわよ」


暁の後ろから周、犬塚会長、刻が現れた。


「みんな、なぜ?」


「なぜって私たちがゲームへログインしたのがバベルからだったからよ」


「逢魔博士が手配してくれてね」


「久しぶりだな妹 (仮)」


「(仮)ってなんだよ。バカ兄貴」


棺と刻は本当の兄妹のように話している。


「そっちのちびっ子は?」


周に言われ、フランベルジェさんが僕の後ろに隠れた。


「フランベルジェさんだよ。ちょっと人見知りかな」


「ふーん。よろしくね。フランベルジェ」


「……よろしく」


周の差し出した手にフランベルジェさんはちょこんと手をのせた。


「今日これから『本当にゲームクリアしたぜ祝賀会』の二次会やるんだけど。来る?」


「棺、フランベルジェさん。どうする?」


「俺は行くぜ」


「わたしも、行きたい、です」


「じゃあ、行くか!」


「おー、飲みまくるぞ!」


「天川くん。生徒会長としての質問ですが、ジュースですよね?」


「二次会行くぞー!」


「まったく……行こう。棺、フランベルジェさん」








月のウサギと機械時掛けの神65


迫り来る脅威





あの事件から一週間後。


今日も僕は普通に女子校に通っている。


「おはよー」


「おはよう」


「おはようございます」


周と天王寺てんのうじさんが挨拶あいさつを返してくる。


「逢魔くん。ちょっといいかな」


クラス副委員のかつらさんが話しかけてきた。


「なに?」


「文化祭の出し物についてなんだけど。なにかないかな?」


「クラスでアンケートを取るとか? ダメかな?」


「ううん。いいと思う」





放課後。


「……というわけでアンケートをとります。最も票を集めた出し物をします!」


そして、


「我がクラスの出し物はなんと……」


「「「……」」」


「射的になりました!」


「「「おぉ!」」」


「ついで二位が水着喫茶みずぎきっさです」


「はぁー」


胸を撫で下ろす。


水着喫茶にならなくて良かった。


「じゃあ、私と逢魔くんで商品を買って来ますね」


「異議なし」


「デート頑張れ〜」


「で、デートじゃありません!」


「じゃあ、桂さん。買い物に行こっか」


「そうですね」





デパート内。


「うーん」


「どうしたの、桂さん?」


「いえ、こっちの五点セットを買うか四個バラバラに買うか悩んでて」


「五点セットにしたら? 色違いでも商品が多い方がいいよ」


「ですね」





帰り道。


「今日は付き合わせちゃって……」


「いいよ。僕もクラス委員なんだし。むしろ僕が失敗したときにフォローしてくれたり、いろいろありがとう」


「いえ、クラス委員ですから」


「じゃあ、また明日」


「さよなら」





「あなたはだれ?」


「俺は王様……いや、道化師クラウンだ」


「そう。あなたはまるで王冠クラウンを捨てた王様のよう」


「俺はアリスを探し出す。そして、彼女の願いを叶える」


「さぁ、行きなさい」


「あぁ、行こう」


「「次の世界へ」」

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