【ショートショート】こちらテレビ局、正義の偏向報道課《火星人が攻めてくる……のを隠す!?》【二転三転】
「嫌です! 僕は偏向報道なんてしたくありません!」
「新人くん、これは人々の心を守るためなんだよ。偏向報道課は、正義のためにあるんだ」
課長と新人スタッフは、テレビ局の一室で言い争っていた。
「真実を報道すべきです!」
「じゃあ、火星から宇宙人が攻めてくるのを、そのまま報道しろというのかい。そんなことしたらパニックだよ」
「では火星人が来た時、市民は何も知らずに襲われるべきだと!? 火星人の存在は知らせるべきです!」
新人スタッフは《知ること》の大切さを説く。
「確率は低いが、宇宙で米軍が火星人を食い止める可能性もある。だったら、火星人の存在なんて、知らない方が幸せじゃないか」
課長は、《知らないこと》の大切さを説く。
「しかし!」
「うーむ……」
その時……
バンッ! 部屋の扉が勢いよく開かれ、武器を携帯した集団がなだれ込んできた。
「しまったっ! 見つかった!」
「火星人!?」
後日、街頭テレビにて。
『テレビ△□のスタッフが、精神病棟に緊急入院となりました』
アナウンサーは、課長と新人スタッフについて知らせている。
『2人は偏向報道課を名乗り、《火星人が攻めてくる》と主張していました』
専門家が続けて語る。
『火星に知的生命体の痕跡は、ありませんがねぇ。今は完全に、人類に管理されている星ですし』
一人の男が、テレビに目もくれず、自宅を目指していた。愛する妻に会うためだ。
「ただいまー」
「あなた。火星は……いえ、今は第2地球と呼ぶのでしたね。そちらへの出張はどうでしたか?」
「ああ。テラフォーミングのおかげで快適だよ。20年も前にあんな開発をした人達はすごいねぇ」
「人類の力は凄いですね」
「しかし火星人がいなかったのは残念だな」
「うふふ、火星人って、どんな生き物なんでしょう」
「火を吹くんじゃないか? ハハハ」
「故郷を奪われた気持ちは、貴方には分からないのでしょうね」
男は、炎に焼かれて消えた。




