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番外編2話 ケンタ式!異世界版「ハブ&スポーク」システム構築

ウィンドランナー隊の初陣となった、

霧笛の村への緊急医療品輸送の大成功。

それは、『ドラゴン便』の輸送能力の多様性と、

そして何よりも、仲間たちの成長と絆の強さを、

改めて俺に確信させてくれる出来事だった。


だが、同時に、俺は新たな課題にも直面していた。

ドラゴンステーションが本格稼働し、

リュウガによる幹線輸送と、

ウィンドランナーたちによる支線輸送という

役割分担が明確になるにつれて、

ステーション内での荷物の『仕分け』と『積み替え』の作業が、

日に日に複雑化し、そして滞留し始めていたのだ。


ヴェリタスや王都から、

リュウガが一度に大量の荷物を運び込んでくる。

それらは、薬草、鉱石、織物、書物、食料品…

ありとあらゆる種類と大きさの荷物が、

ごちゃ混ぜになってステーションの倉庫に運び込まれる。

そして、それらを、

今度はウィンドランナーたちが運ぶための

小型コンテナへと、

行き先や荷物の種類、緊急度に応じて、

迅速かつ正確に仕分けし、積み替えなければならない。


(これが、前職でいうところの

『クロスドッキング』に近い作業だな…。

入荷した荷物を、在庫として保管するのではなく、

すぐに仕分けして次の配送先へ送り出す。

スピードが命の物流センターでは、当たり前の光景だったが…

まさか、この異世界で、

それをドラゴンたち相手にやることになるとはな…)


俺は、事務所の壁に貼られた『飛竜戦略指揮盤』を睨みながら、

うーん、と唸った。

リリアさんが、献身的に荷物の受付と仕分け作業を

手伝ってくれているが、

彼女一人では、もはや限界が近づいている。

ピクシー・ドレイクたちも、

小さな荷物を運んだり、伝票を整理したりと、

健気に頑張ってはくれているが、

やはり根本的な解決にはならない。


「ケンタさん、どうしたんですか?

また難しい顔をして…」

リリアさんが、心配そうに声をかけてきた。

彼女の手には、仕分け待ちの荷物のリストが

びっしりと書き込まれた羊皮紙が握られている。


「いや、リリアさん。

このままじゃ、ステーションがパンクしちまうと思ってね。

もっと効率よく、荷物を仕分けして、

スムーズに次のドラゴンへ引き渡せるような、

何か良い方法はないものかと考えていたんだ」


「荷物の仕分けと、積み替え…ですか。

確かに、最近は荷物の種類も量もすごく増えましたから、

時々、どこに何があるのか分からなくなってしまうことも…」

リリアさんも、困ったように眉をひそめる。


(そうだ…!

あの時、確か俺は…

『ユニットロードシステム』の重要性を痛感したんだったな…)

俺の脳裏に、

ヴェリタスからの帰り荷の積み込みで苦労した時の記憶が蘇った。

荷物を、あらかじめ規格化された『箱』…

つまり『コンテナ』にまとめてユニット化し、

そのコンテナごと輸送し、積み替える。

それが、現代物流の基本中の基本だった。


「リリアさん、ギドさん!

ちょっと集まってくれ!

俺、とんでもないことを思いついたかもしれない!」


俺は、工房で新しいギアの開発に没頭していたギドさんを呼び出し、

三人で、事務所の大きな作業台を囲んだ。

そして、俺は、羊皮紙の上に、

再び、現代の物流センターの模式図のようなものを描き始めた。


「いいか、二人とも。

今の俺たちのやり方だと、

リュウガが大きな荷物カゴで運んできた荷物を、

一度全部降ろして、

それをまた、ウィンドランナーたちの小さなコンテナに

一つ一つ手作業で詰め替えているだろ?

これじゃあ、時間もかかるし、

荷物を傷めるリスクもある」


「うむ、確かにそうだのう。

特に、あの嬢ちゃん(リリアのことだ)が

大切に扱っている薬草なんかは、

何度も人の手に触れるのは良くないかもしれん」

ギドさんが、腕を組んで頷く。


「そこでだ。

リュウガが運んでくる荷物を、

最初から、ある程度、

行き先や種類ごとに『まとめ』ておくんだ。

例えば、この大きな『親コンテナ』の中に、

行き先別の小さな『子コンテナ』をいくつか入れて運ぶ。

そして、ステーションに着いたら、

その『子コンテナ』を、そのままウィンドランナーたちの

専用ギアにガチャンと連結して、

すぐに次の配達先へ出発できるようにするんだ!」


俺は、興奮しながら説明した。

これは、まさに現代の物流で言うところの、

トレーラー輸送における「ドロップ&フック」や、

鉄道コンテナ輸送の「積み替え」に近い概念だ。


「つまり、荷物を『ユニット化』して、

そのユニットごと輸送することで、

積み替え作業の手間と時間を大幅に削減する。

そして、それぞれのドラゴンが、

自分の得意な距離と積載量に合った『ユニット』を運ぶ。

そうすれば、もっともっと効率的に、

そして安全に、荷物を届けられるようになるはずだ!」


俺の熱弁に、

リリアさんとギドさんは、

最初はぽかんとした顔で聞いていたが、

次第にその表情は驚きと、

そして強い興味の色へと変わっていった。


「すごい…!

ケンタさん、それなら、

荷物の仕分けもずっと楽になりますし、

積み替えの時の間違いも減らせそうですね!」

リリアさんが、目を輝かせて言った。


「フン、なるほどな。

確かに、理に適っている。

特に、あのチビ竜ども(ピクシー・ドレイクのことだ)が

運べるような、本当に小さな『マイクロユニット』みたいなものも

用意しておけば、

街の中の、それこそ家から家への配達も、

もっとスムーズになるかもしれんな。

問題は、その『親コンテナ』と『子コンテナ』を、

どうやって規格化し、

そして、どうやって竜の体に安全かつ効率的に

固定するか、だが…

まあ、そこは、このわしの腕の見せ所だわい!」

ギドさんの目が、

再び職人のそれへと戻り、

工房の奥から、何やら新しい素材や工具を

引っ張り出し始めた。

どうやら、彼の創作意欲に、

またしても火が点いたらしい。


こうして、俺の現代知識と、

リリアさんの細やかな気配り、

そしてギドさんのドワーフとしての卓越した技術が融合し、

『ドラゴン便』独自の、

異世界版『ユニットロードシステム』と、

それを実現するための『モジュラー式コンテナ』の開発が、

静かに、しかし力強く始まったのだった。


それは、単に荷物を運ぶ効率を上げるだけでなく、

それぞれのドラゴンの能力を最大限に活かし、

彼らの負担を軽減し、

そして、『ドラゴン便』全体の輸送能力を

飛躍的に向上させる可能性を秘めていた。

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