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第85話 新たな仲間を求めて~森の賢者と風の噂~

リュウガ以外のドラゴンを仲間にする――

その新たな目標を胸に、

俺は、まず情報収集から始めることにした。


リンドブルムのドラゴンステーションは、

今や多くの商人や旅人が行き交う、

情報交換のハブとなりつつあった。

俺は、事務所のカウンターに立ち、

依頼の合間に、それとなく客たちに

ドラゴンに関する噂や目撃情報を尋ねて回った。


「ドラゴン、ですか?

いやはや、ケンタさんのところのリュウガさん以外には、

とんと見たことも聞いたこともありませんなぁ」

ヴェリタスから来た商人は、首を横に振った。


「昔、じいさんから聞いた話だがね。

東の『静寂の森』の奥深くには、

森の精霊に仕える、緑色の鱗を持つドラゴンが

棲んでいるとかいないとか…

まあ、ただの言い伝えだろうけどね」

リンドブルムの古老は、遠い目をして語った。


なかなか有力な情報は得られない。

ドラゴンは、やはりこの世界でも

伝説に近い存在なのだろう。


リリアさんも、薬屋の仕事を通じて、

街の人々から情報を集めてくれていた。

「ケンタさん、市場の魚屋さんから聞いたんですけど、

南の大きな湖…『月鏡湖げっきょうこ』って言うんですけど、

そこで、時々、水面を滑るように飛ぶ、

不思議な姿の竜を見たっていう漁師さんがいるらしいです。

でも、誰も近づいたことはないって…」


月鏡湖の水棲ドラゴンか…

それも興味深い情報だ。


ギドさんも、ドワーフのネットワークを駆使して、

何か手がかりを探ってくれているようだった。

「小僧、ドワーフの古い伝承によれば、

北の『竜骨山脈』の奥深くには、

大地を揺るがすほどの力を持つ、

巨大な『アースドラゴン』が眠っているという話がある。

まあ、ただの寝物語かもしれんがな。

もし本当にいたら、鉱石の大量輸送には

もってこいかもしれんが…

起こしたら最後、リンドブルムごと

踏み潰されかねんわい」

ギドさんは、冗談めかして笑ったが、

その目は真剣だった。


様々な情報が集まってくるが、

どれもこれも、信憑性に欠けるものや、

あまりにも危険すぎるものばかりだ。


(やはり、そう簡単にはいかないか…)

俺が少し落ち込みかけていた、その時だった。


「ピィ! キュルル! ピィ!」

事務所の窓辺で、

ピクシー・ドレイクのレインが、

何かを訴えるように、

しきりに俺に向かって鳴き声を上げている。

そして、小さな翼で、

ある方向を指差すようにして飛び回っている。


「ん? どうしたんだ、レイン?

あっちに何かあるのか?」

レインが示すのは、

ドラゴンステーションの西側に広がる、

『囁きの森』のさらに奥深く、

これまで俺たちも足を踏み入れたことのない、

鬱蒼とした原生林の方向だった。


「ケンタさん、レインちゃん、

何か伝えたいことがあるのかもしれませんよ?

あの子たち、本当に賢いですから」

リリアさんが、優しく微笑んで言った。


俺は、レインのただならぬ様子に、

何かを感じ取り、

リュウガと共に、

ピクシー・ドレイクたちが示す方向へと

向かってみることにした。

ギドさんとリリアさんも、

心配そうに、しかし興味深そうに、

俺たちの後をついてくる。


森の奥深くへと進むにつれて、

周囲の空気は、

次第に神秘的な雰囲気を帯びてきた。

木々の間からは、

見たこともないような色鮮やかなキノコや、

淡い光を放つ不思議な植物が顔を覗かせている。

まるで、精霊たちが住む聖域に

迷い込んだかのようだ。


やがて、俺たちがたどり着いたのは、

森の最も奥まった場所に佇む、

一本の巨大な、天を突くかのような大樹の前だった。

その大樹は、何千年もの時を生きているかのように、

圧倒的な存在感を放ち、

その枝葉は、周囲の空を優しく覆い尽くしている。


そして、その大樹の根元に、

一人の老人が、静かに座っていた。

腰まで届く真っ白な髭を蓄え、

深い皺が刻まれた顔には、

森の賢者のような、

穏やかで、そして全てを見通すような

不思議な光が宿っていた。

その老人は、俺たちの姿を認めると、

ゆっくりと顔を上げ、

優しい笑みを浮かべた。


「…よくぞ参られた、風の運び手よ。

そして、瑠璃色の竜と、小さな翼の者たちよ。

わしは、お前たちが来るのを、

ずっと待っておったぞ…」


その声は、

まるで森の木々が囁きかけるように、

穏やかで、そしてどこか懐かしい響きを持っていた。


この老人こそが、

俺たちが探し求めていた、

新たな仲間への、

そして『ドラゴン便』の新たなる未来への、

重要な鍵を握る人物なのかもしれない…。


俺は、ゴクリと唾を飲み込み、

目の前の、謎めいた老人に、

深々と頭を下げた。

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