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第84話 ステーションの賑わいとケンタの新たな決意

『ピクシー・エクスプレス』の誕生は、

リンドブルムのドラゴンステーションに、

これまでにない賑わいと活気をもたらした。


リュウガが長距離輸送から戻ってくるのを待つ間も、

ステーションの広場では、

色とりどりの翼を持つピクシー・ドレイクたちが、

小さな配達ポーチを誇らしげに身に着け、

楽しそうに飛び交っている。

彼らは、リリアさんから次の配達先を指示されると、

嬉しそうに「ピィ!」と一声鳴き、

風のようにリンドブルムの街へと消えていく。

そして、任務を終えて戻ってくると、

リリアさんから報酬のおやつをもらい、

仲間たちとじゃれ合ったり、

あるいは、ギドさんの工房の屋根で羽を休めたりしている。

その光景は、見ているだけで心が和み、

ステーションを訪れる人々にとっても、

楽しい見世物の一つとなっていた。


「ケンタさん、見てください!

ピクシー・ドレイクさんたちのおかげで、

街の中の配達が、本当にスムーズになりました!

以前は、私が直接お届けしていたような小さな荷物も、

今ではあの子たちが、あっという間に届けてくれますから!」

リリアさんが、受付カウンターの向こうで、

満面の笑みを浮かべて報告する。

彼女の手元には、

ピクシー・ドレイクたちのための、

色とりどりのリボンや小さな鈴が用意されていた。

どうやら、それぞれの配達ポーチに、

目印として付けてあげるつもりらしい。

彼女の細やかな心遣いは、

ピクシー・ドレイクたちにもちゃんと伝わっているようで、

彼らはリリアさんによく懐いていた。


「フン、あのチビ竜ども、

最初はただの邪魔者かと思っていたが、

なかなかどうして、役に立つじゃないか。

それに、あいつらがいると、

このステーションも少しは賑やかになって悪くないわい」

ギドさんも、工房で金槌を振るいながら、

珍しく機嫌の良い声を出す。

彼の工房の窓辺には、

いつの間にか、ピクシー・ドレイクたちのための

小さな水飲み場と、木の実を置くための皿が

用意されるようになっていた。

この頑固なドワーフも、

どうやら小さな翼の訪問者たちを

気に入っているらしい。


リュウガも、

ピクシー・ドレイクたちの存在を、

温かく見守っているようだった。

時には、彼らの小さな飛行訓練(という名の遊び)に

付き合ってやったり、

あるいは、その大きな翼で、

強い日差しや雨から彼らを守ってやったりすることもあった。

異なる種類のドラゴンたちが、

こうして自然に共存し、協力し合っている姿は、

俺が夢見る『ドラゴンステーション』の、

まさに理想の光景そのものだった。


だが、そんな賑わいと活気の中で、

俺の心の中には、

新たな、そしてより大きな課題が芽生え始めていた。


『ピクシー・エクスプレス』は、

確かにリンドブルム市内の物流を劇的に改善した。

だが、それはあくまで「ラストワンマイル」の解決に過ぎない。

アースガルド大陸全体の物流を変えるという、

俺の壮大な夢を実現するためには、

もっと根本的な変革が必要なのだ。


(今の『ドラゴン便』の主力は、

依然としてリュウガ一頭による長距離・大量輸送だ。

『コールドボックス・マークIII』のおかげで、

運べる荷物の種類は格段に増えたが、

それでも、大陸全体の需要に応えるには、

輸送能力が圧倒的に不足している…)


(それに、リュウガだけに頼り続けるわけにはいかない。

いつまた、今回のような過酷な冒険が必要になるか分からないし、

リュウガに万が一のことがあれば、

『ドラゴン便』の機能は完全に停止してしまう。

それは、あまりにも大きなリスクだ)


俺は、事務所の壁に貼られた、

アースガルド大陸の広大な地図を見つめながら、

深く考え込んでいた。

スキルウィンドウのマップ情報と、

これまでの飛行ログを重ね合わせ、

大陸全体の物流のボトルネックとなっている場所や、

新たな輸送ルートの可能性を探る。


(東部の広大な森林地帯…

そこにはエルフの集落があり、

希少な薬草や魔法の道具が産出されるという。

だが、森が深すぎて、陸路での輸送は困難を極める)


(南部の湖畔に点在する村々…

そこでは、新鮮な湖の幸や、

美しい真珠が採れるらしい。

だが、湖が広大すぎて、

村同士の連絡すらままならない状況だ)


(そして、北の果ての鉱山都市…

そこでは、アダマンタイトやミスリル銀といった

貴重な鉱石が採掘されるが、

極寒のツンドラ地帯を越えなければならず、

安定した供給は望めない)


これらの地域へ、

安全かつ効率的に物資を届け、

そして、それぞれの地域の特産品を

他の地域へと流通させることができれば…

それは、アースガルド大陸全体の経済を活性化させ、

人々の生活を飛躍的に向上させることに繋がるはずだ。


だが、そのためには、

リュウガ一頭の力だけでは、

どう考えても足りない。


(やはり…

リュウガ以外の、

もっと多くの、そして多様な能力を持つドラゴンたちとの

協力体制を築く必要がある…)


ピクシー・ドレイクたちとの出会いが、

その可能性を俺に示してくれた。

ドラゴンは、決して人間と敵対するだけの存在ではない。

心を通わせ、互いを尊重し合えば、

きっと素晴らしいパートナーになれるはずだ。


(森林地帯の輸送に適した、俊敏な小型のドラゴン…)

(湖沼地帯での活動を得意とする、水陸両用のドラゴン…)

(大量の鉱石を運べる、力強い陸上型のドラゴン…)

(そして、リュウガのような、長距離高速飛行に特化したドラゴン…)


そんな、多種多様なドラゴンたちが、

この『ドラゴンステーション・リンドブルム』を拠点として集い、

それぞれの能力を活かして、

アースガルド大陸の空と大地を駆け巡る…!


それが、俺の思い描く、

真の『ドラゴン便』の姿だった。


「よし…!」

俺は、固く拳を握りしめた。

目標は定まった。


まずは、このリンドブルム周辺から、

リュウガ以外のドラゴンたちの情報を集めること。

そして、彼らと接触し、

俺たちの仲間になってもらうための方法を模索すること。

それは、これまでのどんな挑戦よりも、

困難で、そして未知数な冒険になるだろう。


だが、俺の胸の中には、

不安よりも大きな、

燃えるような期待と興奮が渦巻いていた。


新たな仲間たちと共に、

このアースガルド大陸の物流に、

真の革命を起こすのだ!

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