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第83話 ピクシー・エクスプレス誕生!~小さな翼の大きな可能性~ 

『コールドボックス・マークIII』の登場により、

俺たち『ドラゴン便』の事業は、

まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで拡大していった。


アースガルド大陸各地から、

これまで不可能とされていた

デリケートな荷物の輸送依頼が殺到し、

リンドブルムのドラゴンステーションは、

連日、多くの荷物と人々でごった返している。

リュウガ一頭では、

到底さばききれないほどの量だ。


「うーん、やはり、リュウガだけでは限界があるな…。

もっと多くの『翼』が必要だ…」

俺は、事務所で山のような依頼書を前に、

再び頭を抱えていた。


リュウガ以外のドラゴンを仲間にするという構想は、

以前からあった。

だが、そう簡単に見つかるものではないし、

見つかったとしても、

彼らが俺たちに協力してくれるとは限らない。


そんな悩みを抱えていたある日のことだった。


「ピィ! キュルル!」


事務所の窓の外から、

賑やかで、そしてどこか楽しげな鳴き声が聞こえてきた。

見ると、ピクシー・ドレイクたちが、

ドラゴンステーションの広場の上空を、

まるで遊ぶように、くるくると舞い踊っている。

彼らは、氷晶の洞窟への冒険から戻って以来、

すっかりドラゴンステーションに懐き、

自由気ままに飛び回っては、

時折、俺たちの仕事の邪魔…いや、

ささやかな手伝いをしてくれるようになっていた。


その姿をぼんやりと眺めていた俺の脳裏に、

ふと、あるアイデアが閃いた。


(そうだ…!

なにも、大きな荷物ばかりを運ぶのが

『ドラゴン便』じゃないはずだ!

もっと小さな荷物、

例えば、街の中でのちょっとした手紙や、

薬屋から隣家への薬の配達みたいな、

そういう、きめ細かいニーズにも応えられるはずだ!)


(そして、そういう『ラストワンマイル』の配送なら、

リュウガのような大型のドラゴンよりも、

むしろ、ピクシー・ドレイクたちのような、

小型で俊敏な翼の方が適しているんじゃないだろうか…!?)


俺は、興奮を抑えきれず、

すぐにリリアさんとギドさんを呼び集め、

この新しいアイデアを打ち明けた。


「ピクシー・ドレイクたちに、

リンドブルム市内の配達を手伝ってもらう…?

ケンタさん、それは面白いかもしれませんね!」

リリアさんが、目を輝かせて言った。

「あの子たち、本当に賢くて、人懐っこいですから。

それに、小さな体なら、

街の狭い路地でもスイスイ飛んでいけますし!」


「フン、あのチビ竜どもにか?

まあ、確かに、あいつらの飛行能力はなかなかのものだ。

それに、簡単な指示なら理解できるくらいの知能もある。

だが、問題は、どうやってあいつらに

『仕事』として荷物を運んでもらうか、だな。

ただの遊びじゃ、事業としては成り立たんぞ」

ギドさんが、腕を組みながら現実的な指摘をする。


「もちろん、報酬は必要でしょうね」

俺は頷いた。

「彼らが大好きな、新鮮な果物や、

リリアさんが作る特製の花の蜜のゼリー。

それを、配達一件につき、いくつか支払うというのはどうだろうか?

そして、彼らが荷物を安全に運ぶための、

小さな専用の『配達ポーチ』みたいなものを、

ギドさんに作ってもらうんだ」


俺の提案に、

リリアさんもギドさんも、

興味深そうに顔を見合わせた。


早速、俺たちは、

ピクシー・ドレイクたちとの「交渉」を開始した。

最初は、ただ遊びに来ているだけだと思っていた彼らも、

俺たちが真剣な顔で話しかけ、

そして、美味しそうなおやつの実物を見せると、

次第に興味を示し始めた。


特に、群れの中でもひときわ体が小さく、

しかし好奇心旺盛な一匹のピクシー・ドレイク

(リリアさんが、その虹色の翼の色から『レイン』と名付けた)が、

最初に俺たちの申し出に「ピィ!」と応えてくれた。

レインが小さな配達ポーチを誇らしげに身に着け、

リリアさんから預かった一通の手紙を、

見事な飛行技術で近所の家まで届け、

そして報酬の木の実を嬉しそうに受け取る姿を見ると、

他のピクシー・ドレイクたちも、

次々と「自分もやりたい!」とばかりに集まってきたのだ。


こうして、

リンドブルム市内の短距離・軽量物専門の配達サービス、

その名も『ピクシー・エクスプレス』が、

半ば遊びのような形で、しかし確実に誕生した瞬間だった。


ギドさんは、ピクシー・ドレイクたちの小さな体に合わせた、

軽くて丈夫な革製の配達ポーチを、

それぞれの個体の翼の色に合わせて何種類も製作してくれた。

ポーチには、ちゃんと『ドラゴン便』の紋章も刻まれている。


リリアさんは、

ピクシー・ドレイクたちが運ぶ荷物の種類

(主に手紙や小さな薬、あるいは忘れ物など)をリストアップし、

それぞれの配達先を分かりやすく記した簡易的な地図を作った。

そして、配達を終えたピクシー・ドレイクたちに、

愛情を込めておやつを手渡すのが、彼女の新しい日課となった。


『ピクシー・エクスプレス』は、

その可愛らしさと、意外なほどの迅速さで、

あっという間にリンドブルムの市民たちの間で評判となった。

「うちの忘れ物を、あの小さな竜が届けてくれたんだよ!」

「薬屋の薬が、頼んですぐに届いた! まるで魔法みたいだ!」

そんな喜びの声が、あちこちで聞かれるようになった。


それは、リュウガが担う長距離・大量輸送とはまた違う、

地域に密着した、

きめ細やかで、温かい物流サービスだった。

そして、それは、

俺が目指す『ドラゴン便』の、

もう一つの大切な姿なのかもしれない、と俺は感じていた。


ピクシー・ドレイクたちの小さな翼が、

リンドブルムの街に、

新しい、そして優しい風を運び始めていた。

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