第78話 絆の力と氷鏡の突破
『氷鏡の迷宮』の最深部。
そこに聳え立つ、巨大な氷の結晶。
そして、その周囲に配置された、
最後の、そして最も難解な謎。
それは、複数の台座の上に置かれた、
それぞれ異なる形をした氷の彫像を、
正しい順番で、正しい台座に配置するというものだった。
台座には、古代文字で何やらヒントらしきものが
刻まれているが、
その意味を解読するのは容易ではない。
「くそっ…これは、一体どういう意味なんだ…?」
俺は、額の汗を拭いながら、
古代文字が刻まれた台座を睨みつけた。
これまでの謎解きで、頭は完全にオーバーヒート寸前だ。
「ケンタさん、この文字…
確か、古い星詠みの書物で見たことがあります。
『天狼は北辰を指し、
海蛇は月影に潜む』…
もしかしたら、星座の配置と関係があるのかもしれません」
リリアさんが、記憶の糸を辿るようにして言った。
彼女の博識ぶりには、本当に驚かされる。
「星座、だと…?
なるほど、それならば、
この彫像の形も、何かの星座を模しているのかもしれんな」
ギドさんが、氷の彫像を一つ一つ手に取り、
その形状を丹念に調べている。
狼のような彫像、蛇のような彫像、
鳥のような彫像、魚のような彫像…。
俺たちは、リリアさんの言葉と、
ギドさんの分析を元に、
再び知恵を絞り始めた。
だが、謎はあまりにも複雑で、
なかなか正解へとたどり着けない。
時間だけが、無情に過ぎていく。
焦りと疲労が、俺たちの集中力を奪っていく。
「ダメだ…もう、何が何だか…」
俺は、思わずその場にへたり込みそうになった。
その時だった。
「ケンタさん、諦めないでください!」
リリアさんの、凛とした声が響いた。
「私たちなら、きっとできます!
ケンタさんのひらめきと、
ギドさんの知識と、
そして、私の…ほんの少しの記憶力があれば、
どんな謎だって解けるはずです!」
彼女の瞳には、
俺への絶対的な信頼と、
そして、決して諦めないという強い意志が宿っていた。
「…嬢ちゃんの言う通りだぜ、小僧。
ここでへこたれるようなタマじゃねえだろう?
わしらドワーフは、
どんな難解な鉱脈だって、
諦めずに掘り進めてきたんだ。
この程度の謎、屁でもねえわい!」
ギドさんも、力強く拳を握りしめ、
俺を励ますように言った。
仲間たちの言葉に、
俺の心に、再び闘志の火が灯った。
そうだ、俺は一人じゃない。
この最高の仲間たちがいる限り、
どんな困難だって乗り越えられるはずだ!
俺たちは、もう一度、
それぞれの知識と経験、
そして直感を総動員して、
最後の謎に挑んだ。
そして…
ついに、その瞬間が訪れた。
最後の氷の彫像を、
正しいと思われる台座に置いた、その時。
ゴゴゴゴゴ…!!!
広間全体が、地響きと共に激しく揺れ動き始めた!
そして、中央に鎮座していた巨大な氷の結晶が、
眩いばかりの青白い光を放ち始めたのだ!
光が収まると、
目の前には、
これまで閉ざされていた、
新たな道が、洞窟のさらに奥へと続いているのが見えた。
「やった…!
やったぞ、みんな!」
俺は、思わず叫んでいた。
リリアさんも、ギドさんも、
互いの顔を見合わせ、
喜びと安堵の表情を浮かべている。
俺たちは、ついに、
フィーリア様の最初の試練、
『氷鏡の迷宮』を突破したのだ!
それは、個人の力だけでは決して成し遂げられなかった、
まさに、仲間たちとの絆の力で勝ち取った勝利だった。
「さあ、行こう。
次の試練が、俺たちを待っているはずだ」
俺は、仲間たちと共に、
新たな道へと、力強く足を踏み出した。




