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第71話 北の秘境を目指して

俺たちは、新たな冒険への準備を整え、

ステーションの中央広場に集まっていた。

目指すは、北の果てに眠るとされる『永久氷石』…

いや、ギドさんの見立てでは、

それよりもさらに上位の冷却効果を持つという

『深淵の水晶』が隠されているかもしれない、

『氷晶の洞窟』だ。


「ケンタさん、準備はできましたか?

凍傷治療薬と、体を温める効果のある薬草、

それから、非常食も多めに用意しておきました」


リリアさんが、いつものようにテキパキと、

しかしどこか冒険への期待に目を輝かせながら、

俺の背負う革袋に最後の荷物を詰め込んでくれる。

彼女が用意してくれた薬や食料は、

これまでの旅でも、何度も俺たちの命を救ってくれた。

今回も、きっと大きな力になってくれるだろう。


「ありがとう、リリアさん。

いつも助かるよ。

君がいなければ、俺はとっくに野垂れ死んでるかもしれないな」

俺が冗談めかして言うと、

リリアさんは「もう、ケンタさんったら!」と

頬を膨らませたが、その顔は嬉しそうだった。


「フン、小僧。

お前たちのための、新しい『旅装』だ。

ありがたく受け取れい」


ギドさんが、工房からいくつかの武具や道具を運び出してきた。

それは、今回の極寒の地への冒険のために、

彼が特別に製作してくれたものだった。


俺には、軽量でありながら保温効果も高い、

特殊な魔獣の毛皮を使った防寒着と、

雪や氷の上でも滑りにくいように、

靴底に金属の爪が取り付けられたブーツ。

そして、愛用の剣も、

低温化でも切れ味が鈍らないように、

ドワーフの秘伝の油で磨き上げられていた。


リリアさんにも、同じように防寒効果の高いマントと、

薬草を低温から守るための、

小さな『コールドポーチ』が手渡された。


そして、リュウガのためには…。


「どうだ、リュウガ。

お前のための、新しい『冬毛ふゆげ』と『氷爪ひょうそう』だ。

これがあれば、氷の上でも滑ることなく大地を駆け、

吹雪の中でも体温を奪われることはあるまい」


ギドさんが、リュウガの巨体に、

まるで第二の皮膚のようにフィットする、

白い毛皮のような特殊な素材で作られたボディアーマーと、

それぞれの足先に装着できる、

鋭い氷の爪のようなアタッチメントを取り付けていく。

その姿は、まるで伝説の氷雪竜のようだ。


「グルルゥ!」

(これは暖かいし、動きやすい!)

リュウガは、新しい装備にご満悦の様子で、

嬉しそうに喉を鳴らした。


「それと、ピクシー・ドレイクのチビどもにも、

ささやかな餞別だ」

ギドさんは、どこからか小さな革袋を取り出すと、

俺たちの周りを興味深そうに飛び回っていた

ピクシー・ドレイクたちに向かって、

キラキラと光る木の実のようなものをいくつか放り投げた。

ピクシー・ドレイクたちは、

それを器用に空中でキャッチすると、

嬉しそうに「ピィピィ!」と鳴きながら、

ギドさんの肩や頭の上で戯れ始めた。

どうやら、彼らも俺たちの旅に

こっそりついてくるつもりのようだ。

まあ、賑やかでいいか。


「よし、準備は万端だな」

俺は、新しい旅装を身にまとい、

仲間たちの顔を見回した。

リリアさんの瞳には、冒険への期待が、

ギドさんの顔には、職人としての自信と、

そしてほんの少しの心配が浮かんでいる。

そして、リュウガの黄金色の瞳は、

果てしない北の空を、力強く見据えていた。


「ケンタさん、リリアさん、ギドさん!

いってらっしゃい!

ドラゴンステーションのことは、

私たちに任せてください!」


ステーションの職員として新しく雇われた若者たちや、

これまでの依頼でお世話になった商人たち、

そして、多くのリンドブルムの市民たちが、

俺たちの出発を、広場で見送ってくれていた。

その声援は、温かく、そして力強い。


「みんな、ありがとう!

必ず、無事に帰ってくる!

そして、『ドラゴン便』を、

もっともっとすごいものにしてみせるからな!」


俺は、集まってくれた人々に手を振り、

リュウガの背に跨った。

リリアさんとギドさんも、

それぞれの荷物を抱えて後に続く。


「行くぞ、リュウガ!

目指すは、北の秘境、『氷晶の洞窟』だ!」


「グルルルルルァァァァァッ!!!」


リュウガの雄叫びが、

ドラゴンステーションの広場に、

そしてリンドブルムの空に、高らかに響き渡った。

それは、新たなる冒険の始まりを告げる、

希望に満ちた咆哮だった。


俺たちを乗せた瑠璃色の翼は、

朝日を浴びてキラキラと輝きながら、

一路、北の空へと、

力強く羽ばたいていった。


その先には、

どんな試練が、

そしてどんな出会いが待ち受けているのだろうか。

俺の胸は、

不安と期待で、

大きく、大きく高鳴っていた。



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