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第53話 ゴードンの最期

「くそっ!

ワイバーン騎兵団までいやがったか!

ゴードンの奴、本気で俺たちを潰す気だな!」


ギドさんが、忌々しそうに空を睨みつけながら叫ぶ。

その額には、脂汗が滲んでいた。

陸の私兵だけでも厄介だというのに、

空からの脅威まで加わっては、

いくら俺たちでも分が悪すぎる。


リュウガも、空を舞うワイバーンたちの姿を認め、

低い唸り声を上げている。

翼の傷が、ズキリと痛むかのように。


「ケンタさん…!」

リリアさんの声も、不安に震えていた。


(ここまでなのか…?

せっかく、ここまで来たのに…)


俺の心にも、一瞬、絶望の影がよぎる。

だが、その時だった。


「諦めるな、ケンタ!」

「ドラゴン便の旦那! 俺たちもいるぜ!」


声のした方を見ると、

そこには、信じられない光景が広がっていた。


リンドブルムの街の方から、

松明や農具、粗末な剣を手にした、

大勢の市民たちが駆けつけてくるではないか!

その中には、以前俺たちが荷物を届けた商人や、

薬を運んだ村の若者たち、

そして、リリアさんの両親の姿もあった!


「み、皆さん…!

どうしてここに!?」

俺は、驚きと感動で言葉を失った。


「リリアちゃんから聞いたよ!

あんたたちが、あの欲深いゴードンと戦ってるってな!」

パン屋の主人が、麺棒を振り回しながら叫ぶ!


「俺たちは、ドラゴン便に何度も助けられた!

今度は、俺たちが助ける番だ!」

怪我を治してもらった老人が、震える手で杖を構える!


「そうだそうだ!

ゴードンの悪行は、もう我慢ならん!」

「リンドブルムの平和は、俺たちが守る!」


市民たちの声援が、

まるで地響きのように森全体に広がっていく!

それは、ギルドの悪評に苦しめられてきた彼らの、

魂の叫びだった!


「な、なんだこいつら…!

どこから湧いてきやがった!」

ゴードンは、予想外の事態に狼狽し、

顔を引きつらせている。


「見たか、ゴードン!

これが、リンドブルムの民の声だ!

お前の悪行は、もう許されない!」

俺は、市民たちの勇気に背中を押され、

再び剣を構え直した!


「リュウガ!

もう一度、飛べるか!?」


「グルルルルルァァァァァッ!!」

リュウガは、市民たちの声援に応えるかのように、

天を衝く雄叫びを上げた!

その翼には、奇跡的に、

再び力がみなぎっているように見えた!


「よし、行くぞ!

空の敵は俺たちが引き受ける!

ギドさん、リリアさん、

地上のゴードンを頼みます!」


「「おう、任せろ!」」

「はい!」


リュウガは、力強く地面を蹴り、

再び大空へと舞い上がった!

ワイバーン騎兵団が、

獲物を見つけた獣のように襲いかかってくる!


「黒煙弾、発射!」

俺は、ギドさん特製の黒煙弾を連続で発射し、

ワイバーンたちの視界を奪う!

その隙に、リュウガが鋭い鉤爪で敵の翼を切り裂き、

バランスを崩したワイバーンが、悲鳴を上げて墜落していく!


一方、地上では、

ギドさんとリリアさん、

そして市民たちが、

ゴードンの私兵たちと激しい戦いを繰り広げていた!

数の上では依然として不利だが、

彼らの瞳には、恐怖の色はない!

あるのは、故郷を守ろうとする、

熱い、熱い闘志だけだ!


追い詰められたゴードンは、

ついに最後の、そして最も卑劣な手段に出た!


「リリア! 危ない!」

俺の叫びも虚しく、

ゴードンは、混乱の中で孤立していたリリアさんの背後から忍び寄り、

その細い首に、冷たい刃を突きつけた!


「動くな!

動けば、この小娘の命はないぞ!」

ゴードンは、リリアさんを盾に、

卑劣な笑みを浮かべて叫んだ!


「リリアさん!」

「嬢ちゃん!」

俺とギドさんの動きが、ピタリと止まる。


「はっはっは!

どうだ、ドラゴン使いの小僧!

これでお前も終わりだ!

さあ、そのドラゴンをここに呼び、

そして、お前たちが盗んだ証拠を全て差し出せ!

さもないと…!」

ゴードンは、リリアさんの首筋に、

さらに強く刃を押し当てる!


絶体絶命。

俺は、怒りと無力感に奥歯を噛みしめた。

だが、その時――


「ケンタさん…!

私にかまわず…ゴードンを…!」

リリアさんが、震える声で、しかし強い意志を込めて叫んだ!

その瞳には、恐怖ではなく、

俺たちへの信頼と、

そして、悪に屈しないという誇りが宿っていた!


「リリアさん…!」


そうだ、俺は、

こんなところで諦めるわけにはいかない!

リリアの勇気を、無駄にはしない!


「リュウガ…!」

俺は、相棒に最後の望みを託した!


リュウガは、俺の心を理解したかのように、

一瞬、空中で静止すると、

次の瞬間、

これまで聞いたこともないような、

天を揺るがすほどの、

凄まじい咆哮を轟かせた!


その咆哮は、

ただの威嚇ではなかった。

それは、リュウガの魂の叫び。

仲間を守りたいという、

純粋で、そして何よりも強い想いが込められた、

奇跡の力だった!


咆哮の衝撃波が、

ゴードンを、そして周囲の私兵たちを吹き飛ばす!

リリアさんを捕らえていたゴードンの手が緩み、

彼女はその隙に、地面を転がるようにして脱出した!


「今だ!」

俺は、リュウガと共に急降下し、

ゴードンの眼前に降り立った!


「おのれ…おのれぇぇぇっ!」

ゴードンは、地面に這いつくばりながら、

憎悪に満ちた目で俺を睨みつけている。

その手には、まだ禁制品『月の雫』の小瓶が握られていた。

奴は、最後の悪あがきとして、

それを地面に叩きつけようとした!

禁制品が飛散すれば、この場にいる者全てが危険に晒される!


「させるかぁっ!」

俺は、ギドさん特製の剣を、

ゴードンの腕目掛けて振り下ろした!


ギャリン!

甲高い金属音と共に、

小瓶はゴードンの手から弾き飛ばされ、

地面に落ちて砕けることなく転がった。


そして、ゴードンは、

力なくその場に崩れ落ちた。

その顔には、もはや何の表情もなかった。

ただ、深い絶望の色だけが浮かんでいた。


リンドブルム運送ギルドの長年にわたる悪事は、

ついに、その終焉を迎えたのだ。


戦いが終わり、

森には、夜明けの静寂と、

そして、市民たちの歓喜の声が響き渡った。

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