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第44話 黒煙の死闘

バシュゥゥゥッ!!


ギドさん特製の黒煙弾が炸裂し、

強烈な刺激臭と共に、

濃密な黒煙が一瞬にして地下倉庫を満たした。


視界は完全に奪われ、

敵の怒声と、激しく咳き込む音、

そして何かがぶつかり合う鈍い音が、

混沌とした闇の中で不気味に響き渡る。


「ぐおおっ! 煙で前が見えん!」

「こんちくしょう! どこだ、奴らは!」

「構うな! 手当たり次第に斬り捨てろ!」


ゴードンの手下どもが、

混乱しながらも剣を振り回す気配が、

煙の向こうから伝わってくる。

奴らも必死だ。


「今のうちに、階段へ!」


俺は、煙に巻かれながらも、

ギドさんの手を強く握り、

地下へと続く唯一の出口である階段へと駆け上がろうとした!

だが、敵もさるもの、

そう簡単には逃してくれない。


煙の中から、

不意にギラリと剣先が突き出され、

俺の頬を掠めた!

ヒリヒリとした熱い痛みが走る。


「くそっ、こうなったら…!」


俺は、腰に差したギドさん特製の剣を、

震える手で抜き放った!

異世界に来て、何度目かの実戦。

だが、今回は相手が悪すぎる。

数も、経験も、明らかにこちらが不利だ。


「小僧! 臆するな!

ドワーフの戦い方を見せてやるわい!」


隣で、ギドさんが雄叫びを上げた。

その小柄な体からは想像もできないほどの

力強い気迫が迸る。

彼は、愛用の金槌を両手に構え、

まるで旋風のように敵の群れへと突っ込んでいく!


ガァン! ゴン!

鈍い打撃音と共に、

敵のうめき声が聞こえる。

ギドさんの金槌は、

的確に敵の鎧の隙間や関節を捉え、

一人、また一人と、

ゴードンの手下どもを打ち倒していく。

その戦いぶりは、まさに熟練の戦士そのものだ。

普段の偏屈な態度の下には、

こんなにも勇猛な魂が隠されていたのか…!


「ギドさん、すごい…!」


だが、敵の数は依然として多い。

煙が少しずつ薄れ始め、

俺たちの姿が再び敵の目に晒されようとしていた。


「小僧! ぼさっとするな!

お前は、あの忌々しいゴードンの首を狙え!

わしが道を開ける!」


ギドさんの怒声に、俺はハッと我に返った。

そうだ、俺の目的は、

この混乱に乗じてゴードンを討ち取ること…

いや、それよりも、

奴が持っているであろう『月の雫』の木箱と、

金貨の袋を奪い取ることだ!

それが、何よりの証拠になる!


俺は、煙と混乱の中、

ゴードンの姿を探した。

いた!

奴は、供の者たちに守られるようにして、

階段の近くで狼狽えている!

その手には、例の木箱と金貨袋がしっかりと握られている!


「ゴードンッ!!」


俺は叫び、

ゴードン目掛けて一直線に突進した!

立ちはだかるフードの男たちを、

ギドさんが金槌で薙ぎ払ってくれる!


「な、なんだ貴様ら!

この私を誰だと思っている!

衛兵を呼べ! 衛兵を!」


ゴードンは、恐怖に顔を引きつらせながら、

情けない声を上げている。

その姿は、もはやギルドの幹部の威厳など

微塵も感じさせなかった。


「お前の悪事も、ここまでだ!」


俺は、渾身の力を込めて剣を振り下ろす!

だが、ゴードンの前に、

あのリュウガの姿をスケッチしていた、

目の鋭い男が立ちはだかった!

男は、素早い動きで俺の剣を受け止め、

鋭い蹴りを俺の腹に叩き込んできた!


「ぐふっ…!」


強烈な衝撃に、俺は息が詰まり、

その場に膝をついてしまう。

なんて速さだ…!

こいつ、ただのチンピラじゃない!


「小僧! 大丈夫か!」

ギドさんの声が遠くに聞こえる。


男は、俺に構うことなく、

ゴードンを促して階段を駆け上がろうとする。

まずい! 逃げられる!


「行かせるか…!」


俺は、最後の力を振り絞り、

男の足首にしがみついた!


「邪魔をするな、雑魚が!」


男は、俺の頭を容赦なく蹴りつけようとする!

その瞬間――


キィィィィィィィン!!!


地下倉庫全体に、

耳をつんざくような、甲高い笛の音が響き渡った!

それは、リリアが吹いた、

ギドさん特製の『竜呼びの笛』の音だ!


「な、なんだこの音は!?」

「頭が…痛い…!」


ゴードンも、その手下たちも、

そして俺にしがみつかれていた目の鋭い男も、

一様に耳を押さえて苦しみ始めた!

その音は、人間にとっても耐え難い高周波音だったのだ!


「今だ、ケンタ!」


煙の中から、ギドさんの声が飛ぶ!


俺は、この好機を逃さなかった!

苦しむ男の腕から、

ゴードンが落とした『月の雫』の木箱と、

金貨の袋をひったくるように奪い取る!


「ギドさん! 行くぞ!」


俺たちは、混乱する敵を尻目に、

地下への階段を一気に駆け上がった!

地上へ出ると、

そこには、息を切らせて笛を吹き続けるリリアさんと、

そして…

翼の傷がまだ完全に癒えていないにもかかわらず、

俺たちを助けるために飛んできた、

リュウガの雄々しい姿があった!


「リュウガ!

リリアさん!

助かった…!」


俺は、リュウガの巨体に飛び乗り、

ギドさんも、リリアさんの手を引いてその後ろに続く!


「逃がすな! 追え!」

地下倉庫から、ゴードンの怒り狂った声が聞こえる。

だが、もう遅い!


「リュウガ!

飛べ! 全力で!」


「グルルルルルァァァァァッ!!」


リュウガは、天を衝くような雄叫びを上げ、

力強く翼を打ち、

満月の夜空へと、

俺たちを乗せて舞い上がった!


眼下には、

松明の灯りが揺らめく『赤獅子の杯亭』と、

そこから慌てて飛び出してくるゴードンの手下たちの姿が見える。


俺たちは、ついに、

奴らの牙城から、

決定的な証拠を掴んで脱出したのだ!


だが、戦いはまだ終わらない。

ゴードンは、必ず追ってくるだろう。

そして、この掴んだ証拠を、

どうやって白日の下に晒すのか…。


俺は、リュウガの温かい背中にしがみつきながら、

リンドブルムの夜空を駆ける。

その手には、

ずしりと重い、

禁制品の木箱と、金貨の袋。

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