表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/146

第27話 牧場への道とヴェリタスからの便り

リンドブルム運送ギルドの不穏な動きに警戒を強めつつも、

俺たち『ドラゴン便』の日常は続いていた。


ギドさんに依頼した雨具やハーネスの改良は

まだ時間がかかりそうだが、

リリアさんが提案してくれたリュウガの食費問題解決の糸口――

牧場への訪問は、すぐにでも実行に移すべきだと俺は考えていた。


「リリアさん、例の牧場の件だけど、

いつ頃なら行けそうかな?」


数日後の朝、集荷ポイントでリリアさんに声をかける。


「あ、ケンタさん!

父からも返事が来ていて、

牧場主のバルガスさん、

一度会って話を聞いてくれるそうです!

明日なら私もお店を少し抜けられますけど、どうでしょう?」


「本当か!

それは助かる!

明日、ぜひお願いするよ」


リュウガの食費は、

俺の財布を直撃する最重要課題だ。

これが少しでも解決すれば、経営はずっと楽になる。


翌日、俺とリリアさんは、

リュウガの背に乗って

(もちろん人目を避けて森から出発し、

村の手前で降りて徒歩で向かう)、

リリアさんの父親の知り合いだという

バルガスさんの牧場へと向かった。


牧場はリンドブルムから半日ほど馬車でかかる、

のどかな丘陵地帯に広がっていた。

柵に囲まれた広大な敷地には、

牛に似た『ミルカウ』という家畜や、

羊のような『ウールシープ』が

のんびりと草を食んでいる。


「わあ、広いですねぇ…!」


リリアさんが感嘆の声を上げる。

俺も、その規模に少し驚いた。


牧場の入り口で待っていると、

屈強な体つきの、日に焼けた中年男性が現れた。

彼が牧場主のバルガスさんだろう。


「おお、リリアちゃんじゃないか!

よく来たな。

隣にいるのが、例の…

大きなペットを飼ってるっていうお友達かい?」


バルガスさんは豪快な笑顔で俺たちを迎えてくれた。

リリアさんの父親とは旧知の仲らしく、

話はスムーズに進みそうだ。


「はい、バルガスおじさま!

こちら、ケンタさんです。

私の…えっと、仕事仲間でして」


リリアさんが少し照れたように俺を紹介する。


「ケンタです。

本日はお時間いただき、ありがとうございます」


俺は深々と頭を下げた。


「はっはっは!

固い挨拶は抜きだ!

さあ、立ち話もなんだ、こっちへ来な!」


バルガスさんに案内され、

俺たちは牧場の中にある彼の家へと通された。


テーブルには、自家製だというチーズや干し肉、

そして黒パンが並べられている。


「それで、ケンタさんとやら。

リリアちゃんのお父さんからは聞いたが、

随分と大きなペットを飼ってるとか?

一体どんなもんなんだい?

それに、肉を定期的に分けてほしいって話だが…

うちも商売でやってるんでね、

タダってわけにはいかんが、まあ、リリアちゃんの頼みなら、

少しは勉強させてもらうよ」


バルガスさんは、興味深そうに俺の顔を覗き込む。


「ありがとうございます!

実は…そのペットというのが、

非常に大食漢でして…。

市場で買うと、どうしても高くついてしまって…」


俺は正直に窮状を訴える。

もちろん、リュウガがドラゴンだということは伏せておく。


「なるほどなぁ。

大きなペットってのは、維持費も大変だろうよ。

よし、分かった。

うちで出るクズ肉や、

少し傷んで市場には出せないような肉なら、

格安で分けてやろう。

それなら、お互い損はないだろ?」


「本当ですか!?

それは、本当に助かります!」


願ってもない申し出だ!

これでリュウガの食費問題は、

かなり改善されるはずだ。


「ただし、条件がある」


バルガスさんは、ニヤリと笑った。


「うちの牧場も、最近ちょっと人手が足りなくてな。

特に、力仕事ができる若い男手が欲しいんだ。

もしよかったら、週に一度でもいい、

牧場の仕事を手伝ってくれないか?

そしたら、肉の代金はもっと勉強させてもらうぜ?」


「牧場の仕事…ですか?」


「ああ。

柵の修理とか、家畜の世話とか、色々ある。

どうだい?

体力には自信ありそうだが」


バルガスさんの目は、

俺の体つきを値踏みするように見ている。


(なるほど…ギブアンドテイクってわけか。

悪くない話だ。

俺も前職で体力仕事は散々やってきたし、

異世界の牧場仕事も経験になるかもしれない)


「分かりました!

ぜひ、やらせてください!」


俺は快諾した。


こうして、俺は週に一度、

バルガスさんの牧場で働く代わりに、

リュウガの食料となる肉を格安で手に入れるという

契約を結ぶことができた。

これは大きな前進だ!


牧場からの帰り道、

リリアさんが嬉しそうに言った。


「よかったですね、ケンタさん!

これでリュウガさんのご飯も安心ですね!」


「ああ、本当にリリアさんのおかげだよ。

ありがとう」


「いえいえ!

私にできることなんて、これくらいですから。

でも、ケンタさん、牧場のお仕事、

大変じゃないですか?」


「大丈夫だよ。

体力には自信があるからな。

それに、新しいことを覚えるのは嫌いじゃない」


俺たちはそんな会話をしながら、

リンドブルムへの道を急いだ。


数日後、

俺が牧場での初仕事を終えてボロ小屋に戻ると、

リリアさんが一枚の羊皮紙を持って待っていた。

その表情は、少し興奮しているように見える。


「ケンタさん!

ヴェリタスの商人さんから、

お手紙の返事が届きましたよ!」


「本当か!?」


俺は慌てて羊皮紙を受け取った。

先日、ヴェリタスの商人へ宛てて送った、

定期便の条件交渉に関する手紙の返信だ。

リュウガに運ばせたのだが、

思ったよりも早く返事が来たな。


封蝋を破り、中身に目を通す。


そこには、俺が提示した条件にほぼ合意するという内容と、

さらに具体的な輸送品目や頻度についての提案、

そして近いうちに一度リンドブルムを訪れて

直接契約を結びたいという旨が記されていた。


「やった…!

これで、ヴェリタスとの定期便が

本格的に動き出すぞ!」


俺は思わずガッツポーズをした。

安定した高額収入源の確保。

これは『ドラゴン便』の経営にとって、

まさに光明だ!


「すごいですね、ケンタさん!

これで『ドラゴン便』も、

もっと大きくなりますね!」


リリアさんも自分のことのように喜んでくれる。


「ああ!

これで、ギドさんに依頼している新しいギアの開発も、

もっと本格的に進められる!

リュウガも、もっと快適に飛べるようになるはずだ!」


俺は隣にいるリュウガの首を叩いた。

リュウガも何か良いことがあったと察したのか、

嬉しそうに喉を鳴らす。


リュウガの食費問題に解決の兆しが見え、

ヴェリタスとの定期便契約も現実味を帯びてきた。

課題はまだ多いが、確実に未来は開けつつある。


だが、そんな俺たちの小さな成功を、

快く思わない者たちがいることも、

俺は忘れてはいなかった。


運送ギルドの影。

そして、集荷ポイント周辺を嗅ぎまわる不審な男。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ