真ん中の席で堂々とイチャつく人達。
───このクラスには、全員が行く末を見守っているカップル(ではない)がいる。
「和泉くん、この前おすすめしたお菓子はもう食べた?」
「うん、美味しかったよ」
「いいなぁ、今朝コンビニ行ったら売り切れてたんだよね」
「それなら、ちょうど余ってるからあげるよ」
「え、いいの!?……ああ、いや流石に悪いよ」
「遠慮しないでよ、気になるんだったら一緒に食べよう?」
「うっ、なんて誘惑……じゃあ、お言葉に甘えていただきます」
これである。
少し目を離した隙にすぐにイチャイチャしやがるこの二人。取っつきにくいわけじゃないが、そこまで目立つようなタイプじゃない伊波さんと和泉は、このクラスじゃあ揃うとすぐにイチャつくことで有名だ。
これだけならただのバカップルで、わざわざ行く末見守り隊なんてよく分からん奴らは出来ない。
─この二人、付き合うどころかお互いが想い合っている事すら察していないのだ。
高校生だぞ?
一緒に登下校して、席が隣で、昼食だって机くっつけて食べてる事もあるんだぞ?
それもう付き合ってるだろ!!
授業中にちょっかい掛け合って?(後ろの席なのでよくみえる)
目線が合ったら微笑みあって?(後ろのry
ただのバカップルじゃねーか!!(血涙)
とはいえ、おそらく伊波さんは友達(にしては視線に熱を感じる)として接しているだろうが、和泉はもう真っ黒だろう。
なにせ、二人の関係が気になりすぎたクラスメイトが、たまらず和泉に直接聞いた時に
『付き合ってないよ、まだね。だからそっとして欲しいな』
なんて、背筋が凍るような目線を向けて言っていたのだから。
あれはまさしくゴミを見る目だった。
和泉的には、徐々に距離を詰めている絶妙な時に伊波さんに余計なちょっかいかけるなよ、的な牽制だったのだろう。
その時のクラスメイト全員、魔王に子リスを捧げているような心境で気が気じゃなかったが、あの二人の力関係はむしろ逆なのだ。
「やっぱり美味しいね、このお菓子。作った人はアインシュタインが土下座するレベルの天才だよ」
「そっちの方面は詳しくないんじゃないかな、流石に」
「?……和泉くん全然食べてないじゃん」
「そう?伊波さんが美味しそうに食べてくれるから気付かなかったよ」
「また、そういう事を……。一緒に食べるって言ったでしょ。ほら」
「えっ、あ…あぁ、ありがとう」
「?…………!いや、ちがっ、別に深い意味はないよ!」
「…………うん、分かってる。けど、勘違いする人もいるから気を付けようね……」
はい、というわけで本日のクエストも伊波さんの不意打ち(はい、あーん)によって、魔王が無事に討伐されました。
こんな感じの二人なので、入学当初はカップルに向けられていたような好奇の視線も、すぐに焦れったいもの(伊波さんには心配二割)を見る目に変わっていった。
末永く爆発しろ。
(流石伊波さん。また魔王に勝ったよ。これはもう秒読みじゃない?)
(それ何回目よ……待って、付き合ったらこれ以上、ってコト!?)