表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

カリーナ。忘れるな。

「なんども同じことを聞くのははばかられるんだけど、誰かなーって……あはは」


とにかく沈黙は良くないと思っての言葉だったのに、余計なことを言ったみたいで、これ以上釣り上げられないくらいに眉毛がつり上がってしまった。


「この、わたしを……わたしに!誰ッですって!?」


落ち着いた声質が、ヒステリックに叫び声に変わる。

いや、変えてしまったのは私だ。


私が覚えていないから行けないんだ。


「……いえ、そういうことなのでしょうね。まあ、いいわ。私はカリーナよ。2度と忘れないように」


腰に手を当ててビシッと指を刺される。


必死にコクコクと首を振る。


そうすると満足いったのか微笑んだ。


「自分の名前は覚えてる?」


「名前」


そういえば、分からない。


けど、記憶喪失とは違うような。まるで、初めからなかったような気がする。


あるいは抜け落ちたような。


「深刻ね。頼みたいことがあったのだけど……無理させられないしね」


自分の名前すらまともに言えない人に頼み事はそれは出来ないだろう。納得だ。


でもなんでだろう、すごく嫌だった。


嫌だったから言った。


「ま、任せてくれないかな。私にならできるって思ったんだよね。なら……」


最後までい生きれるほどの自信はない。

それでもこの人の、カリーナさんの期待?を裏切るべきじゃないと私の中のどこかが訴えていた。


「いいわ。でもあまりにも欠けすぎてるわ」


あまりにも必死で、哀れみが湧いたのかもしれない。

困ったように笑ったカリーナさんは顔を引き締めて「着いてきて」と言って歩き出してしまった。


慌てて靴かブーツかを、迷った末にブーツを履いて追いかけた。


あの時はあんなに足が遅いとか思ったのに、歩くと速い。


背中を見てわかった。


怯えていた。


私にだろうか。


私にだろうな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ