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この街
深夜になると私は活動を開始する。
抱き抱えているクッションは年々萎れていっている。
元々はまん丸だったのに、いまや潰れてしまっている。
時々丸くなるように調整はするけれど、結局は抱き抱えて寝るので元に戻ってしまう。
しおっしおの黒のシャツを床に置かれた洗濯済みの山のなからサルベージして着る。
ピシッとしてた方が様になるよな。そう思うも、そうする気は起きない。
正確には違うかもしれないな。
朧気な記憶がある。
その記憶がこの街は異常性があると告げている。
ただ、それは本当にそうなのだろうかという疑問もある。
つまりはよく分からない。
外は茜色の空、一面ピンクの壁のように見える桜並木、空からは儚い雪が降り注ぐ。
桜以外の気は真っ赤な葉を付けている。
この街はどこかおかしいのかもしれない。