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2話 幼馴染とお礼

「いただきます!」


「どうぞ召し上がれ」


 翌日の夜。僕の姿はというと、幼馴染にして現在9歳である少女、ルヴィアちゃんの家にあった。


 なぜここにいるのか。というのも実はおおよそ週に2度ほど、僕は彼女の家にお呼ばれをし、そこで一緒に夕飯をいただいているのである。


 その際僕は家にある食材を持っていっている。しかし当然だがそれはかなり少ない量だ。

 その上毎日僕を招待できるほどルヴィアちゃんの家も裕福ではないため、結果的に週に2日ほどの頻度にはなっているが、それでもこの交流が僕を孤独から救ってくれていた。


 そんなあたたかな家庭の中に混じり、温かい食事をとっていると、ここでルヴィアちゃんのお母さんであるクレノアさんが口を開いた。


「昨日は鑑定式お疲れ様」


「ありがとうございます」


「結果は……残念だったな」


 続くように声を発したルヴィアちゃんの父、デルフさんの言葉に被せるようにクレノアさんが続く。


「まぁ、わからないわよ。もしかしたらファンくんなら『鍛冶』でも上手く活用するかもしれないわ」


 クレノアさんの言葉にデルフさんも納得とばかりに強く頷く。


「それもそうだな」


「そうよ。ファンなら問題ないわ!」


 デルフさんに続き、ルヴィアちゃんも赤髪のツインテールを揺らしながら確信を持って頷いた。


 そんな強い信頼を感じる彼女たちの言葉に僕は思わず柔らかい笑みを浮かべる。

 その表情を見て、デルフさんが首を傾げる。


「なんだ、ファンは戦闘系スキルを望んでいたから落ち込んでいるかと思っていたが、なんだかあまり悲観した様子じゃないな。むしろどこかワクワクした雰囲気を感じる」


 その声に僕は待ってましたとばかりに力強く言葉を返す。


「えぇ。僕はこのスキルでよかったと心の底から思ってますから」


「ほう。まさか本当に活用法を見つけたのか?」


「普通の使い方ですけど、有用だと判断したんです。あ、そうだ! その証明と日頃のお礼も兼ねてこれから実践しますよ。……なにか使えなくなったナイフとかありますか?」


「普段料理で使うナイフでいいのかしら?」


「はい! それお借りしてもいいですか」


「いいけど……気をつけてね」


 おそるおそる渡されたナイフを受け取る。そして僕はそのナイフを昨日と同様の要領で修繕を行った。


「……こ、これは」


「きれい……」


 修繕を行う最中、方々からそんな声が聞こえてくる。しかしそれを耳にしながらも集中して鍛え直すことおよそ10分。


「よし、できました!」


 僕の目の前にはまるで新品のように輝くナイフの姿があった。


「こちら、試し切りをしてもらってもいいですか」


「わ、わかったわ」


 言葉の後、クレノアさんはそのナイフを手に取ると、台所で干し肉を切った。


「まぁ! こんな切れ味の良いナイフは初めて使ったわ!」


「なっ! 俺にも試させてくれ!」


 そう言うとデルフさんは急いで立ち上がり、クレノアさんの方へと向かう。そして同様に干し肉を切ると、その勢いのままに僕の前へとやってきた。


「ファン! その力で武器の修繕もお願いできないか?! 金でも食事でも相応の礼はする!」


 その勢いに若干気圧されながらも、僕は申し訳なさげに声を上げる。


「すみません。武器は魔力量の関係でまだ修繕できないんです」


 魔力量は魔力をたくさん使ったり、レベルが上がることで増える。

 中でもレベルが上がった時の上昇量の方が格段に多いというのが一般常識だ。ただレベルの方は途中から上がりにくくなるようだが。


 僕はガックリとしたデルフさんに向け、言葉を続けた。


「レベルが上がってできるようになったら真っ先に直しますね」


「ありがとう! その時が楽しみだ!」


「レベルといえばファンくんも10歳になったし、明日から狩りに参加するのよね?」


「はい、そうなんです! 緊張はするけど、すごく楽しみで──」


 その後も僕と幼馴染一家の交流は続いた。


 ただルヴィアちゃんはこの日あまり会話に参加してこなかった。それでも僕と彼女の両親の会話を聴き、ニコニコと楽しげな笑みを浮かべていた。


 その笑顔はまるで僕が認められているのが嬉しいとでも言わんばかりで、その姿に僕の心はより温かくなるのであった。

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