19話 隣国の三姉妹登場!
チェスターズのデビュー日をいよいよ三日後に控えたその日。
私は最終確認をしておきたいという王妃様に呼ばれ、国王様の執務室へと向かっていた。
デビューイベントで人目に晒される彼らのセキュリティーや、舞台演出、物販についての擦り合わせということで、出席者は国王夫妻、メンバーの三人、宰相、騎士団長、魔術師団長、私、他数名……。
って、父母会か!
親子の多さに心の中で突っ込みつつ、廊下を進む私。
王宮の空気がバタバタと慌ただしいことを感じてニマニマしてしまう。
とうとうデビューの日がすぐそこまで……。
ここまでよく頑張りましたよ、私!
ファンクラブの会員数は複数口入会する人が多いおかげで、すでにチェスター王国の人口と同じくらいまで増えているそうですし、デビュー曲の予約もすごいことになっているとか。
イベントの当選者を発表した時なんて、阿鼻叫喚の光景が繰り広げられていましたからね。
さすがプレミアチケット、でも転売はダメ、ゼッタイ!
デビューシングルは音楽だけが録音された水晶と、音楽と映像両方が録画された水晶が発売される。
いわゆるCDとMVである。
日本ではシングルだとCDにMVが特典として付いてくるイメージだが、今回は全くの別売りにした。
まあ、私が日本で生きていた頃は、もうCDは売れない時代に入っていたのだが。
せっかくなので、特典として全12種のチェスターズの生写真がランダムで付いてくる初回限定版を作ってみたら、反響が大きすぎて慌てて増産しているところだ。
調子に乗って、デビュー曲のメイキングを特典映像として付けることも提案したら、すぐに採用されてこちらは初回限定版Bとして売り出されることになった。
当日はイベント会場と委託を受けた販売店で一斉に売り出される予定で、今から王宮広場の周辺にはたくさんの仮設テントの販売所が組み立てられている。
順調ですねぇ。
もうかなりの収入が見込まれていますし、これが国外まで波及してくれれば無事に借金も返済出来そうです。
なーんて呑気に考えている時にそれは起こった。
なんと、今回の借金問題の諸悪の根源と言われている隣国の三姉妹と、廊下でバッタリ出くわしてしまったのである。
こ、この派手な女性たちは……もしかしなくても例の姉妹では?
ひえぇ、なんでここに?
まさかの衝撃に立ち止まり、目を見開いている私に、三姉妹の長女は傲慢な様子で声をかけてきた。
「あら確か貴方、ルカリオ様の幼馴染みとかいう宰相の娘ではなくて?」
王女はいかにもな金髪縦ロールにバッチリメイク、豊満な身体を見せつけるように露出度の高いドレスを着ている。
妹たちも似たような服装とメイクで、三人は周囲から超絶浮いていた。
うわぁ~、ギャル?
この世界にもギャルがいたとは……。
年は16、15、14の年子でしたよね?
発育が随分よろしいみたいだけれど。
関わってはいけないと本能が訴えているし、思いっきり逃げたいところだが、そんなことが出来るはずもない。
曲がりなりにも彼女たちは他国の王女で、私は侯爵令嬢なのだ。
「ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。わたくし、アイリス・マーティンと申します。おっしゃるとおり、父は宰相を務めております。以後、お見知りおきを……」
全くお見知りおきして欲しくないが、仕方なくカーテシーを披露する。
すると、私を上から下まで観察するように眺めた彼女は、「たいしたことないわね」と言った後、勝ち誇ったように笑い出した。
え、嫌な感じなんですけど。
「お姉様のほうが断然美しいですわ。ルカリオ様がこの人に思いを寄せているなんて、きっと宰相に弱みでも握られているんだわ。私のキース様も、一緒にいるのはボランティアに違いないわ」
「レン様ったら、いくら交友関係が狭いからってどうしてこんな方に。私たちで彼らの目を覚ましてさしあげましょう」
「それはいいわね!」
次女と三女までもが一緒になって高らかに笑っているが、見た目といい言動といい、嫌われる要素が満載過ぎて呆気にとられてしまう。
私は自分の腹立たしさが消えていくのを感じていた。
人間、ドン引きするほど凄いものを見ると、苛立ちどころではなくなるらしい。
確かに彼女らは別の意味で目が覚めるほど特殊な外見をしているし、『国宝級嫌な女ランキング』があったら殿堂入り間違いなしだろう。
怖いもの見たさで三姉妹を見つめていると、私の反応が思ったものと違ったのか、長女がコホンと咳払いをして話を続けた。
「今、ルカリオ様のお部屋を訪ねたらお留守でしたの。私たち、チェスターズというグループについて知りたいのですけど、貴方彼らの幼馴染みなら何かご存じではなくて?」
「まあ! オズナリー王国までもうお話が届いているのですか?」
さすがストーカーと言われているだけあって、ルカリオに関する情報が早い。
まだ国外へは情報を流していないにも関わらず、どこかから聞きつけたらしい。
「当然知ってますわ。ルカリオ様とキース様とレン様の映った水晶を見ましたもの」
「それで居てもたってもいられなくて、私たちはここまでやってきたのですわ」
妹たちの補足により、私は三姉妹の状況を完全に理解した。
「貴方、彼らについて知っていることがあるなら全て話しなさい。私たち、チェスターズの為ならいくら支払っても構わなくてよ」
「私たちの愛の深さを見せつけてやりますわ!」
「水晶をあるだけお出しなさい!」
ほうほう、お金に糸目は付けないと……。
それではバンバンお買い上げいただきましょうか!
私は応接室へと彼女たちを誘った。




