14話 私のファンが増えました……?
二人の大臣と話をしていると、会話を耳にした他の官僚たちも、口々に自分の妻や娘のことを話し始めた。
アイドル計画に感化された女性たちは、早速身近なところで家族に協力を仰いでくれたようだ。
「こんなに生き生きとしている妻を見るのは久しぶりでして。ならばとことんやってみろと背中を押しましたよ」
「娘が興奮して寝られないほどで……。あ、アイリス嬢、よければ私にもチェスターズの映像を見せてはいただけないだろうか?」
「私もぜひ拝見したい!」
父に確認するように視線をやると、黙って頷いたので、私は水晶の映像を流した。
国王夫妻はまだ現れていないが、二人はもう見たことのある動画なのだから構わないだろう。
食い入るように、鋭い眼差しでチェスターズを値踏みする官僚たち――
まるでオーディションの審査員のような厳しい目付きに、私の方が心臓がバクバクしてきてしまう。
「なるほど……」
映像が終わると、部屋は静けさに包まれた。
何を考えているのか、彼らは思案したままじっと動かない。
えーと、これは?
女性たちと反応が違い過ぎて困ってしまいますね。
こんなものには賛同出来ない!とか言われて、やはりボコボコに……
私が不安に押し潰されそうになっていると。
「まずは水晶の確保からか」
「いや、複製する為に魔術師を優先的にこの計画に回して……」
「流通経路を見直す必要があるな」
「今の状況で予算をどれほど出せるか……」
気付けば、具体的な手段についての議論が繰り広げられていた。
展開の早さに驚くばかりである。
さすが国を動かす方々、頼りになりますね。
でも、彼らを突き動かしたのはチェスターズの魅力だけでなく、ファンになってくれた女性たちの情熱だと思うとなおさら嬉しいです。
私が、国が一丸となって『アイドルグループを作って借金返済しちゃいましょう計画』を成功させようとしている姿にジーンとなっていると、騎士団長が大きな独り言を呟いた。
もはや隅々にまで聞こえるほどの声だ。
「なんだ、もううまくいったみたいだな。じゃあこっちの水晶は必要なかったか」
ん?
こっちの水晶とはなんのことでしょう?
私の疑問と同じく、不思議に感じたらしいある大臣が尋ねる。
「そちらには何が記録されているのですか?」
「俺もよくわからんが、うちの息子が持ってけって。なんか渡すまでやたら葛藤していたが、計画が駄目になったらアイリスの頑張りが無駄になるとかブツブツ言って、もしもの時はこれを流せとかなんとか……。悪い、実はよく聞いてなかった!」
ガハハと笑う騎士団長に、困惑気味の私たち。
一体何の映像なのかと訝しんでいると、魔術師団長が水晶を奪い取り、すかさず魔力を流した。
はたして頭上に現れたのは――なんと私だった!
ちょっ!
これって、私がおみくじクッキーの歌を踊らされた時のやつじゃないですか!
突然歌って踊り出した私の映像に、難しい顔をしていたはずの大臣たちも呆気に取られている。
お父様なんて、顎がはずれそうになるほど口が開いてしまっていた。
「いえ、これは見ても何の参考にもならないと申しますか、見ないでいいですから! というか、見ないでーっ!」
自分の姿を手を振ってかき消そうとしながら叫ぶ私は見事に放置され、最後の「フゥー!」までしっかり流されてしまった。
え、なにこれ?
羞恥プレイですか?
消えてしまいたい……。
恥ずかしさで私が体育座りで小さくなっていると、チェスターズの時とは違う、明るい笑い声が聞こえてくる。
「かーーわいいなぁーー。これはキースもメロメロになるわ。あいつ、よくこれを貸そうと思ったな。……ああ、だからあんなに葛藤してたのか! 若いな。アッハッハッハ」
「レンよりもアイリス嬢のほうがよほどアイドルの素質がありそうですが、これを世に出すのは危険ですね」
「うちの娘のこんな可愛い映像を、お前の息子が持っていることこそが危険だ! よこせ!」
騎士団長と魔術師団長、お父様がまたワイワイやっている。
「踊るとはこういうことか。なるほど、新しいな」
「非常に可愛らしかったですね。現状、危険すぎてとても令嬢にはさせられませんが」
「妻が応援したくなると言っていた気持ちがわかったような気がするな」
私のダンスもどきで、アイドルの良さをわかってもらえたのはありがたいが、私のメンタルはズタボロである。
「オホホホホ! これで皆様もアイドルのファンになるという心理が理解できたのではなくて?」
いつからそこにいたのか、王妃様が国王様と共にドアの側に立っていた。
「俺は昔からアイリスちゃんのファンだけどな」
騎士団長が言うと、口々に自分もファンになったと言い出す国の重鎮たち……。
へ?
私にファンがついても意味がないのでは?
しかし、これを機に私には権力を持つ支援者が増え、益々計画はスムーズに進んだのだった。
――どういうこと?




