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花の聖女様  作者: Mii
3/8

3.ティシアン領主邸

投稿が遅くなってしまいました!

これからも投稿が遅くなるかもしれませんが、温かい目で見守ってくださると嬉しいです


このお話を見つけてくださりありがとうございます〜!

楽しんで頂けたら嬉しいです

「リリーお嬢様、あれが治安警備隊の本部ですよ。」


ベルが手で指した方向を見る。



他の建物よりは大きな2階建てくらいの建物と、細長く高い塔が建っている。

塔には、望遠鏡を持った治安警備隊の隊員が立っている。


この2つの建物は頑丈そうな柵で囲われていた。



「初めて見た。

がっしりしている建物なのね。」


「そうですね。

なんだか頼もしいです。」



治安警備隊の本部の門が開いて、馬車が出てきた。

黒い馬車だ。馬車は箱型で、雨でも頭が濡れないようになっている。

「門が開いたわ。

誰が乗っているのかしら?」


「この大陸では黒い馬車は治安警備隊や騎士しか使えないと決まっています。

それに、御者席に、御者ではなく隊員が乗っています。」

よく見れば御者席にいる人は鎧を着ている。


「治安警備隊が巡回するのかもしれませんね。」


「そうね。」

私はこくこくと頷いた。




御者席に座っている隊員がこちらを見た。

巧みに馬車を操り、道を通って来て、この馬車の隣に並んだ。


私の馬車の御者に話しかけている。



「何かしら?

もしかして、乗っているのは…?」


ベルと顔を見合せた。



馬車のカーテンを半分閉めていたから、そのカーテンを開けた。




あの兄妹が窓に手をつけてこちらを見ていた。


「やっぱり私が思った通りみたい。

こんにちは!」

ほほえんで手を振った。


2人が手を振り返してくれた。


「元気そうでよかったわ!

確か、大きな怪我や病気がなければ治安警備隊の方が今日領主邸に送ってくれるという話だったわよね?」


「そうでしたね!」


「きっと領主邸に向かっているところだわ。

安心…。」



お互いの馬車が右側に移動して、止まった。


ドアが開いた。


御者が立っている。

「リリーお嬢様、兄妹に大きな病気や怪我はないようです。


隊員の方が公爵家の紋章が付いたこの馬車を見つけ、話しかけてくれました。


兄妹がリリーお嬢様に会いたがっていたみたいで、こちらの馬車に乗せて連れて行ってはどうか?とのことです。

どう致しますか?」


「嬉しいわ。

じゃあ乗ってもらいましょう。

この馬車は公爵家用で全員乗れるから大丈夫ね。」


「では連れてまいります。」


「お願いします。」



御者が礼をして出ていった。



少しした後、御者が2人を連れてきてくれた。


「わあ、とても綺麗。」


「すごい。」


「そうなの?領主邸にある馬車は全部こんな感じよ?


どうぞ入って。」


「「失礼します、ありがとうございます。」」


馬車の座席に座った兄妹に、ティシアン家の紋章が縫われたクッションを渡した。


「ふかふかよ。」


「「本当だ。」」


「では馬車を動かしますね。


リリーお嬢様が事件に巻き込まれたということは、領主様の耳に入っていると思います。

領主様がご心配なさっているでしょう。


なので、少し急がせて頂きます。」


「そうね…。

ありがとう。」




ドアが閉まった。



ルイスがハッとした顔をしている。


「どうしたの?」


「公爵家の領主様にはどう挨拶したらいいのですか?

孤児院には募金して下さる貴族の方が来たことはありましたけど、よく分からないです。」


「お父様は領主としてしっかりしている人よ。

でも、優しいところもあるわ。

何か聞かれたら答えるくらいでいいと思う。

大丈夫よ。」


ふむふむ、と2人が同じテンポで頷いている。

思わず笑うところだった。




「それより、2人とも身なりがかなり綺麗になったのね。

服は前みたいに継ぎ接ぎもなくて、体の汚れも怪我もないように見えるわ。」



ルイスが窓を見た。


隊員の方に礼をして、手を振っている。

ルイスに微笑んで、敬礼をしている。

それから、隊員の方の馬車が角を曲がって行った。


「隊員の方が服もお風呂も食事も用意してくださったんです。」


「小さな怪我も全てヒーラーの方が治してくれました。」


「優しい方たちね。」


「「優しい方ばかりでした。」」






馬車がカタンと音を立てて止まった。


「着いたみたい。

ようこそ、領主邸へ。」


窓からは大きな金の門が開いていくのが見える。


馬車が止まり、ドアが開いた。


御者が置いてくれた台に足を乗せて降りる。



振り返って2人を見た。


「私の手を掴んで。台は慣れないでしょう?」

左手をエラに伸ばし、右手をルイスに伸ばした。


「「は、はい。」」


「意外と馬車の車輪は大きいから、台が必要なのよ。」


にこっと微笑んで、手を引っ張り、2人を下ろした。


「「ありがとうございます。」」


「どういたしまして。」


領主邸の方向に顔を向けた。



「お帰りなさいませ、リリーお嬢様。」

使用人たちが並んで迎えてくれている。


「ありがとう。」


「「貴族だあ…。」」




執事のイーサンが私の方へ歩いてきた。

イーサンは今日も白い髪に眼鏡をかけている。

お父様が言うには、イーサンが使用人の中で1番年をとっていて、私が産まれる前からここで働いている。


「リリーお嬢様、領主様がお呼びです。

領主様は執務室におられます。

リリーお嬢様と兄妹とベルを連れてくるように仰せつかっております。」


「分かったわ、ありがとう。」



イーサンが2人に顔を向けた。


「初めまして。

執事のイーサンと申します。

主にスケジュールの管理をしています。

もう歳でして。気が付けばこの邸で1番年上になってしまいました。

白髪で眼鏡の人を見つけたらその人は私です。」


イーサンの言葉にみんな少し笑った。



「こちらへ。

領主様がいらっしゃる部屋へお連れします。」


執事が金でできた玄関のドアを開けてくれた。


真ん中にある絨毯の敷かれた階段で、2階に上がる。

右に曲がった。



イーサンが執務室のドアをコンコンとノックした。


「領主様、リリーお嬢様のお帰りです。

お呼びになられた者を全員連れてまいりました。」


「分かった。ご苦労だった。

入ってくれ。」


イーサンがドアを開けた。



1番奥には大きな窓。カーテンが開けられた窓からの春風が心地よく頬をなでる。

窓の前には机がある。上には山積みの資料、ガラスペンが置いてある。

その手前の大きなテーブルを挟んで、ソファーが1つづつ並んでいる。


右のソファーにはお父様がいる。


お父様は茶髪で、身長はお父様の年齢の平均くらいある。

公爵家の長男であり、ティシアン領の領主。

魔力の大きさは4。最大が5で、ほとんどの平民は1。貴族は大体3。そう考えるとなかなか強い。

属性は風だ。



「お父様、ただいま帰りました。

心配をかけてごめんなさい。」


「リリーのせいじゃない。

今日御者もメイドのベルもいるからと、護衛を付けなかったことが悪かった。

とにかく無事で良かった。

座りなさい。」


「ええ。」


「領主様、すみません。

私が隣にいながら……。」

ベルが下を向いている。


「ベルも悪くない。

リリーは正義感があるし優しい。

困っている人を見たらすぐに手を差し伸べる子だ。

瞬発力がないと止めることができない。」


「そうですね。」


「ええ??」

お父様もベルも何を言うの!


あ!今はこんな話をする時じゃないわ。

咳払いをした。

手で兄妹を指す。


「「こ、こんにちは。」」


かなり緊張しているみたいだ。


「こんにちは。放置してしまって申し訳ない。

君たちは私たちの向かいのソファーに座るといい。」


「「はい。」」



「何があったかはすでに聞いた。

もうこんなことが起こらないように対応させる。

残った問題は君たちについてだけだ。」


「は、はあ。」

「は、はい。」


さすがお父様。対応がとても早い。どうやって治安警備隊と連携して情報を入手したのだろう?


「働く場所がないならここで働くといい。」


「「ありがとうございます!」」


「いいんだ。

人手がほしい役職がある。できればその役割になってほしい。


それはリリー専用の護衛とメイドだ。」


「私専用??」


「ああ。

今、リリーと一緒に王立学園に通える使用人が必要なんだ。


今まではリリーがこの邸にいれば安全だったが、これからは学園に通う。

学園は平民も貴族も平等と考える。大人の護衛を率いて学園内で過ごすことは出来ない。

馬車で通う時だけ、この屋敷にいる護衛をつけて、学園内では使用人と基本一緒にいるようにしたい。」


「それなら同い年の護衛をつけることも出来ないのではないの?」


「抜け道がある。

同い年の使用人を一緒に学園に通わせればいい。


学園には3つコースがある。

1貴族コース、貴族のみしか受けられない。

2領主コース、次期領主・長女か長男でないと受けられない。

3使用人コース、使用人を目指す人が通える。」


「使用人コースに通ってもらうのね!

でも、2人は私みたいに入学のための試験を受けていないわ。」


「入学試験を受けていなくても、貴族の成人した推薦人が3人いればよい。

こちらで用意できる。

入学までにはあと3日ある。

今日中に、推薦書と、リリーの入学用書類の予備を王立学園に送れば間に合うだろう。


リリーはどう思う?」


「……まだ頭が追いつかなくて。」



「リリー様、」

凛とした声がする方に顔を向ける。

ルイスの真っ直ぐな瞳が私を見つめていた。


「僕たちは孤児院で育ちました。

読み書きは教えてもらいましたが、学校に通ったことがありません。

妹を通わせてあげたいのです。


僕には訓練の経験がないです。

ですが、助けてもらった恩があります。

絶対に守ります。

どうか僕を護衛にしてください。」


「わたしも、経験はありませんが、お役に立つために頑張ります。

どうかメイドにしてください。」


2人の顔をそれぞれ見つめた。

こう言われたら言えることは1つしかないわ。


「分かりました、2人を私の使用人にします。」


2人の顔がほころんだ。




「学園生活で必要な費用は全て公爵家が払う。お給料も払う。

公爵家の跡継ぎだが、いつも襲われる訳じゃない。

護衛の仕事も適度にして、安心して楽しく通えばいい。


仕立て屋を屋敷に呼ぼう。

制服を大至急で仕立ててもらわねば。」


「「ありがとうございます!」」

2人の目が潤んでいる。




誰かが手をたたいた。


「そう決まったなら今からメイドの仕事を覚えてもらうわ!」


ベルが気合いたっぷりの顔をしている。


「意外と大変よ?

覚えることはたくさんあるわ。」


「はい!」




「ルイス、君もだぞ。」


護衛のチャドがルイスを見ている。


「はい!」




学園生活が一気に楽しくなりそう!

私はそっとほほえんだ。

読んでくださりありがとうございました〜!

よければブックマーク等してくださるとありがたいです

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