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本当の友

作者: Art

僕には幼なじみがいる。

コイツは、内気で病弱な僕を殺すんじゃないかと言わんばかりに連れ回した。

病弱な僕なんかと遊んでも面白くないはずなのに、どんな時でもコイツは僕の事を誘ってくれる。

優しいやつなのか、それともただ単にバカなのか。

そんな一癖も二癖もある幼なじみとのちょっとしたお話だ。


保育園の頃から高校までコイツとはずっと一緒だった。

そんな破天荒で暴れ馬みたいなコイツに引っ張り回されたせいか、それともコイツに影響されたせいか、僕は内気な性格から明るい性格に変わり、病弱だった身体も健康そのものになった。


健康になってからはコイツとは、色んなバカをやった。

雨の中をずぶ濡れになるまで遊び、共に高熱を出し、学校を休んだ。

遠足の時に、鼻にじゃがりこを突っ込み走り回った。

落とし穴を作り、先生を落とした。

テストで2人とも0点を取り、高らかに笑いあった。

秘密基地を作り、そこに親からパクったエロ本を貯め、2人で読み漁った。

唯一無二の親友、相棒、悪友、色んな呼び方が出来る。


そんな常に一緒だった、そいつとは高校を卒業後離れ離れになった。

僕は、大学へ、ソイツは一足先に社会へ出た。

忙しない日々が続き、次第に連絡が取れなくなっていった。


僕は、常にギリギリを生きていた。

周りに追いつけるように、取り残されないように必死にもがいた。

大学四年になり、就活シーズン真っ只中、色んな会社を受けたが全て落ちた。

やっと受かったと思った会社はブラックそのものだった。

始発で会社に行き、終電で帰る、上司からはいびられ、同僚からはバカにされ、後輩からは影で笑われる。

僕は、疲れ切っていた。

もうこんな人生、終わりにしようと首に縄をかけた。



俺には、幼なじみがいる。

ソイツは、体が弱くて、声はか細い、息をふきかけたら吹き飛ぶんじゃないかと思うぐらいひょろひょろな奴だった。


ソイツはよく先生に怒られていた、他の人ができることがソイツはできなかった。

最初は、どうでもいいと思っていたが常に一人でいるソイツを見て見ぬふりをする事など出来なかった。

俺はソイツを連れ回した、雨の中、風の中、はたまた嵐の中連れ回した。

もちろん病弱なソイツはよくダウンした。

その度に、ソイツの親が文句を言いに来た、俺はかーちゃんに頭をこずかれる。


そいつがダウンから立ち上がると直ぐに俺の所に来て、

「遊ぼうよ。」と話しかけてくる。

病弱なのか、元気なのか、どっちなんだよと思う。

だが、そんな事は遊びを断る理由にはならない。

また、連れ回した、すると、段々そいつは元気になっていった。


元気になったソイツは、俺を連れ回し始めた。

共に色んなバカもした。

気づけば、ソイツは俺の親友になっていた。

だが、ずっと一緒という訳にもいかない。

それぞれが違う道を歩み出した。

母子家庭だった俺は高校を卒業後、直ぐに社会へ出た。

ソイツは大学へいった。


高校卒業後の別れ際に、「社会に出ても俺たちはずっと親友だ!」と抱き合った。


そこからは波乱万丈の日々だった、高卒の社会人、勿論一番下の人間。

最初は失敗ばかりで心が折れそうだった。


すると、珍しく幼なじみのソイツから連絡が入った。

ソイツも大学で苦労しているらしい、電話越しにも分かる疲れきった声、お互い、日頃の不満やストレスを思いっきり吐き出しあった。


スッキリした後、電話を切ろうとしたら、最後にソイツが

「頑張ろうぜ、相棒」

と小さく言った、それを聞いた途端、救われた気がした。


心が折れそうだった俺は元のとおりに戻っていた。

そこからは怒られながらも常に挑戦した。

周りからも少しずつ認められるようになった。

会社でもそこそこの成績を残せるようになってきた。

彼女もできた、順風満帆な生活だった。


ある日、幼なじみのソイツを見たという噂を聞いた。

詳しくその話を聞いてみると、ソイツの顔は青ざめており、目の下にはクマができて、見るからに倒れそうだったという話を聞いた。

気づけば俺は急いでソイツに電話をかけていた。



首に縄をかけた瞬間、携帯が光った。

携帯を見るとそこには、幼なじみのコイツからの電話だった。

僕は電話に出る、すると電話が壊れるんじゃないかと思うぐらいでかい声で、「今どこにいる!」という声が聞こえた。

僕は小さく口を開き、「秘密基地」と喋る。

コイツは、「秘密基地か!待っとけ!今すぐに行く!」と喋り電話が切れた。

どうせ今から死ぬんだ。今から来て何ができるって言うだ。

死のう、こんな意味の無い人生に生きている価値なんてない

首に縄をかけ、椅子を倒そうとした瞬間、けたたましく扉が蹴破られる。

ワイシャツまで汗でビショビショのコイツがいた。


息を切らしながらコイツは話す。

「昔、お前言ってくれたよな、頑張ろうぜ相棒って、俺はあの言葉にすげー救われた、俺は一人じゃないんだと気づけた、お前の何気ない一言に俺は助けられたんだよ。」と喋る

続けてコイツは、「なら次は俺の番じゃねぇーのか、てめぇを救えんのは唯一無二の相棒である俺様だけよ。」

そう言ってくれた。

僕は泣いた、わんわん泣いた。

相棒であり、親友であり、悪友のコイツは、何も喋らず、ただただ静かに僕のことを強く抱きしめてくれた。





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