エピローグ
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──エピローグ
ついにスターライン王国女王シャリアーデとドラゴニア帝国皇帝エムリルの間で講和交渉が行われることになった。
スターライン王国は以下のことを要求した。
ひとつ。ドラゴニア帝国は賠償金として日本円にして8000億円をスターライン王国に金か銀、あるいはその他の価値あるもので支払うこと。
ひとつ。ドラゴニア帝国とスターライン王国は不可侵条約を締結する。
ひとつ。両国の国境30キロメートルは非武装地帯とすること。
ひとつ。ドラゴニア帝国は属領を全て独立させ、その内政に干渉しないこと。
以上のことがスターライン王国からドラゴニア帝国に突き付けられた。
「余の退位は要求しないのか?」
「次の皇帝はまだ敗北を知らない皇帝です。敗北を知っているあなただからこそ、この講和条約の履行を果たしていただきたい」
エムリルが尋ねるのにシャリアーデがそう返す。
「よろしい。講和を飲もう。しかし、賠償金のその他の価値あるものとは?」
「そのままの意味です。こちらで選びますので干渉はせぬよう」
「分かった」
こうしてレックス条約が結ばれ、この条約は今後数百年に亘ってスターライン王国とドラゴニア帝国の立ち位置を決めることになる。スターライン王国はドラゴニア帝国との通商を活発化させるも、ドラゴニア帝国とスターライン王国の間で戦争が起きることはもうなかった。
それから賠償金の代わりとしてハーサンの進言でマスケットの技術が取得された。国産マスケットからそれから1年程度で実用に足るものが完成した。
そして、戦争が終わってついに鮫浦たちが引き上げることになった。
「マース少佐殿。これを」
「これは?」
帰り際に鮫浦がハーサンに本を手渡す。
「私の暮らす東方の銃の進化の歴史について書かれた技術書です。参考になさってください。役に立つでしょう」
「ライフルに適した銃弾、ミニエー弾……。ありがとうございます、鮫浦殿!」
「それでは我々はこの辺りで」
トリャスィーロたちも引き上げるのに、ティノ、アウディスたちも見送りに来た。
それからシャリアーデも。
「帰られるのですね、東方に」
「ええ。帰ります。よいビジネスができたと思っております」
「はい。あなた方は救国の英雄です」
「その言葉はカリスト少佐たちに」
鮫浦はそう言うとトリャスィーロとグッドリックたちが倉庫側に引き上げたのを確認した。サイードと天竜も待っている。
「それでは!」
鮫浦は手を振って、倉庫のゲートを潜った。
「向こうに残した人間はいないな?」
「いません」
「では、ゲートを閉じるぞ」
シャッターがガラガラと閉じていく。
「どうなりましたかね?」
「恐らくだが、繋がりは途絶えただろう。開いてみろ」
「はいはい」
天竜がゲートを開くとそこは普通に倉庫の裏手だった。
「繋がりは切れたな」
「さようなら、ピンクダイヤモンド……」
「ふふふ。なんと今回の儲けは18億ドルだ!」
「わー!」
ピンクダイヤモンドは裏市場に流れ、そして現金に替わって鮫浦の口座に収まった。
「戦勝祝いだ! 今日は飲むぞ! トリャスィーロ! あんたも付き合えよ!」
「もちろんだ。勝利を祝おう!」
在庫も捌け、鮫浦たちは盛大に勝利を祝った。
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「はーっ。終わった」
3年後、再び東南アジアのあの倉庫のあった場所にて鮫浦は3度目のため息を吐いていた。そう、今回も取引が破談に終わったのだ。
「社長、たった10億ドルじゃないですか」
「10億ドルはたったって言葉が付くような額じゃないんだよ」
今度は10億ドル。北アフリカのとある政府に売ろうとしたものが、国連の介入があって売れなくなってしまったのである。
「で、またこの倉庫ですか」
「まあ、在庫を置いとくのにはいい場所として持っておいたからな」
「また異世界に繋がったりしませんかね?」
「そうそう上手くは──」
鮫浦が裏口のゲートを開く。
「おう……」
「わー! 社長、社長、巨人ですよ! 巨人とケモミミが戦ってますよ!」
「戦っているな」
「ということは?」
「武器が売れる!」
そして、武器商人たちは再び異世界へと繰り出していく。
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本作品はこれて完結です! これまでお付き合いいただきありがとうございました!
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