レサルカ爆撃
本日2回目の更新です。
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──レサルカ爆撃
ドラゴニア帝国最大の海軍都市レサルカ。
ここで建造された船が兵士を乗せて海に乗り出し、運河を上って機動するのだ。
そして、船には既に大砲が据え付けられていた。
一種の砲艦としても機能するように作られたそれが、兵士を満載し、出港しようとする。上空は飛竜騎兵によって守られ、守りに隙はない。
……かのように思われていた。
「なんだ!?」
「飛竜騎兵が落ちているぞ!」
飛竜騎兵はMiG-29戦闘機の放った短距離空対空ミサイルで撃墜され、機関砲の砲撃を受けて瞬く間に撃墜されていく。
そして、悪魔が姿を見せた。
侵入した12機のSu-24戦闘攻撃機は水平爆撃の要領でレサルカを爆撃した。
無数の500キログラム航空爆弾が船や兵士たちを吹き飛ばし、ナパーム弾がレサルカを火の海に変える。兵士が炎上し、船が炎上し、火薬に誘爆して大爆発を起こす。
『アーチャー・リードよりコントール。爆撃評価を行なってくれ。こちらの見た通りでは爆撃は成功している』
『コントロール、了解』
それからバイラクタルTB2無人偵察機が派遣され、爆撃評価を行う。
効果大との爆撃の結果が示された。
船の大部分は破壊され、兵士もかなりの数が爆撃に巻き込まれて死んでいる。
少なくともこれでリヴァーリが危機的な状況に陥ることが避けられた。
後は地上軍を以てして、海軍都市レサルカを占領するだけである。
レサルカはそれから3回に渡って爆撃を受けた。
一度は通常の航空爆弾だけで、一度はナパーム弾だけで。
海軍都市としてのレサルカは既に完全に死んだと言えた。
飛竜騎兵の厩舎も爆撃を受けて破壊され、航空優勢は相手に握られ、降り注いだ爆撃の炎を消すのには長い時間を要した。それでいて、彼らはまだ戦うつもりだった。
爆撃は軍の設備に限ったものの、レサルカへの爆撃は民間人を全く巻き込まなかったわけではない。数名の民間人が犠牲になり、彼らに衝撃と畏怖を植え付けた。
それでも、それでいてもドラゴニア帝国陸海軍は戦うつもりだった。
海軍は海軍歩兵を陸軍に提供し、レサルカの防衛を図った。
城門に軍艦から下ろした大砲が据え付けられ、歩兵が列を組んで城壁に並ぶ。万が一城壁を突破された場合の予備陣地も構築済みだった。
だが、ここまでやっても不安は残った。
彼らは敵の火力を目のあたりにしているのだ。
敵が地上を火の海に変えるのを彼らは見た。頑丈な軍艦が薙ぎ倒されるのを見た。無数の戦友が死ぬのを見た。衝撃と畏怖だ。レサルカへの爆撃は単純な物理的ダメージだけではなく、精神的ダメージも負わせていた。
そして、王立機甲連隊を先頭にスターライン王国陸軍が進軍してきた。
初めて見る戦車を前に城壁の兵士たちに緊張が走る。
そして、戦車の主砲が鎌首をもたげ、敵の城壁を砲撃する。
対戦車榴弾の爆炎と誘爆した大砲の炸薬。
「う、うわあああっ!」
それらは繰り返されたレサルカへの爆撃を思い出させるに十分だった。
脱走兵が出る。レサルカ防衛の任務を負った誇り高きドラゴニア帝国陸軍の兵士が任務を放棄して逃げようとするのである。それほどまでにレサルカへの爆撃は兵士たちに恐怖を植え付けていたのであった。
「逃げるな! 戦え!」
逃げようとする兵士たちを下士官と野戦憲兵がサーベルで切りつけ、戦列に戻そうとする。だが、兵士たちはそこまで素直に従わなかった。
「畜生! 死にたくない!」
兵士たちは下士官と野戦憲兵に発砲し、銃弾を浴びせる。
兵士たちが本気で逃げ始めていると知った司令部では、対応が話し合われるも、全ては机上の空論に過ぎなかった。あれだけの爆撃を受けた後に戦えというのは無理がある。このまま兵士たちに無秩序な逃亡を許し、戦線の崩壊を見過ごすのか?
「断固として戦い抜きましょう! このままレサルカを敵に明け渡すなど!」
「だが、我々ですらあの爆撃には恐怖したのだ。それを兵士たちに戦えとは」
「だからと言って、レサルカを渡してもいいと?」
参謀たちが話し合いというよりも精神論の押し付け合いになっているのをみて、ドラゴニア帝国陸軍レサルカ防衛軍司令官ユスリア・ツー・スコミムスはため息をついた。
「降伏する」
「し、司令官閣下! 今、なんと……?」
「我々は降伏する。兵士たちを無為に死なせるわけにはいかない。降伏を、実行する。隷下各部隊に降伏と武装解除を指示せよ。直ちに、だ」
「りょ、了解しました!」
こうしてレサルカは存外呆気なく陥落した。
王立機甲連隊を先頭に城壁を攻撃中だった部隊に向けて白旗が掲げられる。
「シェパードよりオーバーロード。敵は降伏した」
『了解。そのまま進軍せよ』
城門が開かれ、T-72主力戦車が堂々と城門を潜る。
見るものを圧倒する戦車と装甲車の群れが城門を通過し、予備陣地の柵を破壊し、周辺を警戒しながら進んでいく。
後からBTR-70装甲兵員輸送車をベースにした通信指揮車両が入り、第77独立装甲猟兵大隊のアウディスが姿を見せる。
「最上位の司令官にお会いしたい!」
アウディスが拡声器でそう告げる。
「私だ」
そこでユスリアが姿を見せた。
「全軍が降伏するのですね?」
「全軍が降伏する。少なくとも軍の指揮系統にあるものは」
「軍の指揮系統にない部隊が存在すると?」
「武装衛兵隊だ。連中は降伏を拒否している。そちらが彼らを攻撃しようとも我々は手出ししないことを約束する」
「了解。正式な降伏協定への調印を」
「分かった」
こうしてレサルカのドラゴニア帝国陸海軍部隊は降伏した。
だが、生き残った武装衛兵隊が抵抗を続けている。
王立機甲連隊は武装解除を王立機械化歩兵連隊に任せて、武装衛兵隊の制圧に向かう。武装衛兵隊は領主の砦だった場所に立て籠もり、そこから砲撃を加え、銃撃を行なっている。弾薬はたっぷりと溜め込んだようで絶え間なく砲撃が続く。
戦車がそれに向けて砲撃し、86式歩兵戦闘車が砦の方に向かっていく。
歩兵戦闘車から降車した兵士たちが砦の中に突入し、武装衛兵隊と交戦する。所詮はマスケット対自動小銃だが、砦の中は入り組んでおり、不意打ちを受けることも全くないわけではなかった。
死傷者が生じ、スターライン王国陸軍王立機甲連隊は戦車の砲撃支援とMi-24攻撃ヘリの援護射撃を受けて砦を制圧する。
戦闘開始から7時間後。スターライン王国の国旗が砦の屋上に掲げられ、制圧が宣言された。この戦いで王立機甲連隊は8名の死傷者を出し、一方の武装衛兵隊は900名以上の死傷者を出した。
血は十分に流された。スターライン王国陸軍はレサルカの占領を宣言。
武装解除された兵士たちは捕虜収容所になった砦に入れられ、ハーサンとティノがここで吹き荒れた爆撃の威力を目のあたりにして、感嘆とも、恐怖とも取れる息を吐いた。
「信じられるか? ドラゴニア帝国陸軍の1個師団以上がここで壊滅したんだぞ」
「信じられないよ。だが、事実なんだろう。鮫浦殿の提供してくれる武器は強い。途轍もなく強い。抗えるものがいないのではないかと思われるぐらいに」
「しかし、鮫浦殿たちの暮らす東方ではこれらの兵器に対抗する手段がある」
「帝国がそれを持たないのを祈るばかりだ」
ふたりはそう言葉を交わしながら、次の作戦の準備に取り掛かった。
次の目標は──帝都レックス。
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