装甲車が売れまーす!
本日2回目の更新です。
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──装甲車が売れまーす!
新たに1個大隊と1個中隊相当の志願兵が生まれた。
それら志願兵をどのように編成するか。
第77独立装甲猟兵大隊大隊長アウディスは自分と同じような装軌式装甲車を装備した機械化部隊が欲しいと訴えた。
86式歩兵戦闘車は無限軌道を備え、塹壕でも難なく通行できる。だが、後続のBTR-70装甲兵員輸送車は装輪式装甲車のため塹壕でスタックすることが幾度となくあった。
ここは戦車と86式歩兵戦闘車を装備した部隊を増強すべしというのはアウディスの意見だった。機械化された突破部隊が自分たちだけではいざというときに作戦が頓挫することを彼は恐れてもいた。
シャリアーデはこれを承認。
初陣を終えて、訓練が完了している第8独立装甲猟兵大隊をT-72主力戦車1個小隊を装備し、86式歩兵戦闘車を1個大隊分装備した装甲部隊に改変した。大隊本部には整備中隊、補給中隊と新たに購入された兵器で編成された自走対空砲小隊、自走迫撃砲小隊もついている。
また第77独立装甲猟兵大隊と第8独立装甲猟兵大隊には新たにWTZ-3装甲回収車を装備した大隊本部隷下工兵小隊を編成。
さらに新たに志願した兵士たちを訓練し、第6独立装甲猟兵大隊を編成。これには第8独立装甲猟兵大隊が使用していた主力となるBTR-70装甲兵員輸送車を始めとする各種装備が与えられた。
残る志願兵は各大隊の補充に回され、かつ各大隊で余剰になった兵士を軍団整備大隊、軍団補給大隊に回した。
これで第6独立装甲猟兵大隊、第7山岳猟兵大隊、第8独立装甲猟兵大隊、第9戦闘工兵大隊、第13独立空中機動猟兵大隊、第77独立装甲猟兵大隊と6個戦闘大隊が編成された。2個連隊相当の部隊だ。
とは言えど、第9戦闘工兵大隊は各種お助け部隊として機動する必要があるし、第13独立空中機動猟兵大隊は完全に独立して行動するようになっている。
今は無理に連隊を編成しなくてもいいだろうということになった。
そして、次なる目標は小麦畑の広がるその先にある山岳地帯。
そこにある街道を制圧することが重要視されていた。
これについては敵も理解しているらしく、第29歩兵師団が壊滅したことで王都テルスの守りに2個師団、そして機動的運用する2個師団として第16歩兵師団と第90歩兵師団が街道付近の守りに投入された。
2個師団は街道の先にある都市ネレイドを補給拠点とし、縦深を持った防御陣地を展開した。今になって縦深防御を取り始めたのかと言えば、生き残りから、徹底的に話を聞き出し、敵が前線を突破したことでパニックが起きたということを知ったからである。
そこで前線が突破されても粘れるように縦深を持った防御陣地が展開されたのだ。
敵の兵器には確かにクロスボウもバリスタも通用しないが、歩兵にはクロスボウが通じる。歩兵をクロスボウで削り、戦闘力を喪失させよう。そして、孤立した敵の兵器には炎で攻撃を仕掛け、火攻めにすべしと考えた。
もちろん、これが楽観的な発想であることは東部征伐軍司令官ヴァルカ・ツー・ダコタ上級大将自身理解している。だが、今はこれしか方法がないのだ。
可能ならば敵歩兵の武器を鹵獲せよとも命じており、また今回の危機を受けて、帝国の帝国造兵廠でも新兵器開発が進められている。
早速次の戦いへと行きたいところだが、物資の補充を行わなければならない。
砲弾、銃弾、燃料、予備部品、エトセトラ、エトセトラが運び込まれる。
重要なのは武器だけではなく、食料も同じことだった。
これまでは現地住民から蓄えを分けてもらっていたが、軍隊の規模が大きくなるにつれて、そして都市から離れるにつれて、それは難しくなりつつある。
飲み水は井戸から補給するとしよう。だが、この先敵が井戸に毒を投げこまないとも限らなかった。敵はこれまで焦土作戦を行う暇もなく制圧されていたが、次も同じように進むとは限らない。
そこで軍用の水浄化装置が導入され、軍団衛生大隊に装備された。
後は食料。
「行けると思うか?」
「どうだろうな。俺もまだこちらのものは口にしていない」
鮫浦が民間に放出された軍用レーションを前にトリャスィーロと話し合う。
「どうして悩んでるんです、社長。売ったらいいじゃないですか」
「そうは言うがな。俺たちと連中のたんぱく質のアミノ酸が同一かも分からないし、必要とされるビタミンなどが同一かも分からない。下手に代謝できないものを与えて、腹でも壊されたら大変だろう?」
「えー。でも、カリスト少佐とマース少佐、普通に食べてましたよ?」
「は?」
鮫浦たちが天竜を見る。
「私がレーション食べてたらおいしそうだから分けてくれって。それで分けてあげてましたよ。フロック曹長なんかも食べてましたねえ」
「体に異常は?」
「何も言われませんでしたけど、3週間ぐらい同じように食事しましたが」
鮫浦とトリャスィーロが顔を見合わせる。
「同じ人間、ということでいいのか?」
「医者か科学者に聞かないと分からない話だが、少なくともレーションは食える。そういうことだろう。売れるんじゃないか、レーション?」
「一応現地のものも食うように言って、補助的にレーションを使うか」
こうして食料補給の見込みはできた。
レーションは軍団補給大隊が物資集積所に砲弾などと一緒に輸送し、そこから各大隊の補給中隊によって大隊に分配される。砲弾や銃弾も同様に。軍団砲兵連隊である砲兵には軍団補給大隊から直接補給が行われる。だが、近々軍団砲兵連隊にも補給中隊が配備される予定だ。
倉庫からひたすら物資を運び出し、輸送する。
物資集積所が完全に満ちた状態で、スターライン王国抵抗運動は攻勢準備に入る。
敵は2個師団。街道を塞ぐ形で縦深を持った防御陣地を用意して出迎えている。
作戦計画の立案が始まる。
今回も短期決戦を求める。理由は補給線が伸び続けており、一度の戦闘で軍全体にかかる負荷が大きくなりつつあることから。戦闘が長期化し、使用する砲弾が増えると、兵站線がギリギリのところがパンクしかねない。
そこで短期決戦に持ち込む。
砲爆撃を短期時間に集中して行い、敵を制圧。第8独立装甲猟兵大隊及び第77独立装甲猟兵大隊が突破口を作り、その突破口を第9戦闘工兵大大隊、第6独立装甲猟兵大隊と第7山岳猟兵大隊が広げる。
第13独立空中機動猟兵大隊は都市ネレイドに降下して同都市を制圧するとともに敵の退路を遮断。また攻撃ヘリ部隊は近接航空支援に従事。
以上のことが決定した。
「何か質問は?」
ソーコルイ・タクティカルの作戦将校が尋ねる。
「第7山岳猟兵大隊のレアンだ。質問、いいだろうか。仮に敵を排除し、ネレイドを制圧したとして、次はどこに防衛線を引くのだろうか?」
第7山岳猟兵大隊大隊長のレアン・デア・ケンタウリ少佐にして子爵が尋ねる。
「次の防衛線はこのような予定になります。ネレイドを中心に右から第6独立装甲猟兵大隊、第7山岳猟兵大隊、第9戦闘工兵大隊。第8独立装甲猟兵大隊と第77独立装甲猟兵大隊は火消として後方に。第13独立空中機動猟兵大隊は空中機動戦力として運用し続け、敵の移動を妨害するなどして、ネレイドへの接近を阻止します」
「理解した。説明に感謝する」
レアンはそう言って頷いた。
「こちらの戦力ならばまず負けはありえません。ですが、抜からぬように。戦場ではどのようなことが起きるか分かりませんからね」
作戦将校は最後にそう言い、シャリアーデに視線を移す。
「皆の者。必ず勝利を。ネレイドが解放されれば、王都にまた一歩近づきます。王都までの道のりはまだ険しいですが、王都解放は夢ではありません」
「了解! スターライン王国万歳! 女王陛下万歳!」
そして、作戦が開始される。
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本日の更新はこれで終了です。
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