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空襲警報を鳴らせー!

本日1回目の更新です。

……………………


 ──空襲警報を鳴らせー!



「──以上の罪状から特設軍事法廷は被告に死刑を言い渡す。吊るせ!」


 ドラゴニア帝国陸軍野戦憲兵の声が響くのは都市エウロパだ。


 前線から這う這うの体で逃げて来たドラゴニア帝国陸軍の兵士たちのうち、スターライン王国に恨みを持ち、スターライン王国臣民に対して暴行や略奪、殺人を犯したものが、軍法に則り処刑されている。


 占領下の市民に対してであろうとドラゴニア帝国陸軍は犯罪行為を認めていない。犯罪行為は正当に裁かれ、犯罪を行なった兵士はその罪が軽度であれば懲罰部隊へ、重度であれば死刑にされていた。


 だが、被害者への補填までドラゴニア帝国陸軍は行わない。


 もちろん、兵士が略奪したものは可能な限り返却するが、殺人や暴行に対して賠償金が支払われることはない。


「全く第10歩兵師団と第21歩兵師団も余計なものを置いていってくれたものだ」


 急遽戦線の穴埋めに派遣された第35歩兵師団の師団長アールザ・ツー・ステルンベルギ中将がぼやく。今、帝国本土から5個歩兵師団と1個飛竜騎兵旅団が向かっているが、今は迅速に戦線の穴を塞ぐ必要性があった。


 そのため王都テルス防衛に当たっていた第35歩兵師団が穴埋めのために派遣されたのである。それから壊滅して消滅した第10歩兵師団と第21歩兵師団の残余戦力。


 この残余戦力がトラブルばかり起こす。


 彼らは自分たちを悲惨な目に遭わせたスターライン王国を憎み、犯罪行為に手を染める。略奪、暴行、殺人、エトセトラ、エトセトラ。ドラゴニア帝国陸軍は可能な限り、規律を維持した軍隊であろうとする。規律の乱れは、指揮系統の乱れを生み、現地住民との余計なトラブルの種となり、軍にとって不利益にしかならない。


 侵略戦争を繰り返してきたドラゴニア帝国陸軍だからこそ、占領のノウハウがある。現地住民を徒に刺激するな。それはドラゴニア帝国に対する統治への抵抗に繋がる。そういうノウハウが蓄積されてるからこそ、ドラゴニア帝国陸軍は余計なトラブルを嫌う。


 戦場で敵にやられたのが恨めしかったら、無防備な市民に当たるのではなく、今も抵抗を続けているスターライン王国抵抗運動に当たれというものだ。


 一部の意欲ある残存兵たちは実際に戦うことを選んでいる。


 山岳を越えて、勝手知ったる自分たちの占領していた土地に侵入し、破壊工作を行おうとしていた。


 だが、それもぷつりと連絡が途切れて、成功したのか失敗したのか分からない。


 それでも友軍のためにと今日も山岳を越えて、敵地後方に前進する。


「しかし、第10歩兵師団と第21歩兵師団はいったい何にやられたのだ?」


 それが目下最大の謎であった。


 敵の鉄の馬車、鉄の象、鉄の竜。とにかく、鉄製の武器に第10歩兵師団と第21歩兵師団はやられたらしい。それから猛烈な遠距離火力にもやられたと聞いている。


 スターライン王国抵抗運動はいったい何が変わったのだ? と思わざるを得ない状況だった。これまで敵は大規模魔術攻撃など行なってこなかったし、クロスボウも重竜騎兵のブレスも通用しない鉄の兵器なども持っていなかったはずだ。


 東部征伐軍司令部では、敵は東方から新兵器を購入したと言っているが、ちょっとした新兵器程度でここまで戦局が覆るものだろうかと思わされる。


 何はともあれアールザのやるべきことはシンプルだ。戦線の維持。それだけだ。


 この都市エウロパの前方にある谷を敵に突破させない。それが重要であった。


 帝国本土から増援が来るまではあと数日。その間、スターライン王国抵抗運動を谷の向こうに押さえ込んでおく必要があるのだ。


 今のドラゴニア帝国陸軍のスターライン王国駐留軍は第35歩兵師団だけと極めて脆弱な状況にある。敵の規模は報告を統合する限り1個連隊相当。歩兵3個連隊と1個魔術連隊に加えて、1個騎兵大隊を保有する第35歩兵師団とまともにぶつかれば、第35歩兵師団が勝利すると誰もが予想するだろう。


 だが、敵は2個師団もの戦力を1個連隊の戦力で粉砕したのだ。油断はできない。


 いざとなれば都市エウロパに立て籠もり、籠城戦を行う予定だった。都市エウロパは東方の守りの要だった都市で、周囲は堀に囲まれているし、分厚い城壁も有する。これを攻略するのには最低でも3ヶ月はかかるだろう。


 もちろん、籠城戦となれば食料も不足するし、市民の不満も蓄積する。いいことなどない。できれば避けたいところである。


 だが、だがだ。敵の戦力が不透明過ぎる。


 1個連隊に過ぎない部隊がどうやってたった1日でドラゴニア帝国陸軍2個歩兵師団を撃破したというのだ? それも敵の損害はほとんどないというではないか。


 アールザは落ち着かないものを感じつつ、敵の奇襲に備えて、兵士たちに塹壕を掘らせ、前線を守る構えを見せていた。もちろん、全軍を常に戦闘状態に置くのは下策だ。それは兵士を不必要に疲労させ、いざ戦闘となったときに動けない状態に陥る可能性を持っているのだ。


「敵は1個連隊。本当に1個連隊か? どこかに兵力を隠し持っているのではないか?」


 アールザがそう考えていた時だ。


 突如として轟音が響いた。


「な、何事だ!?」


「確認中!」


 非常事態に対するドラゴニア帝国陸軍の動きは素早い。


「兵舎が攻撃された模様! 被害甚大!」


「敵の大規模魔術攻撃か!?」


「不明です!」


 もちろん、これは大規模魔術攻撃などではない。


 MiG-29戦闘機による爆撃である。上空からレーザー誘導爆弾を投下し、ドラゴニア帝国陸軍第35歩兵師団の兵舎が立ち並ぶ野営地に大打撃を与えた。


 ドラゴニア帝国陸軍の見張り兵は空を飛行するMiG-29戦闘機に気づいて司令部に報告する。『敵の航空戦力が飛行していくのを確認した』と。


「先ほどの攻撃は敵の航空戦力によるものである可能性が極めて高いとのことです」


「まさかドラゴニア帝国陸軍が航空優勢を失い、敵に空から攻撃されるなどとは……」


 衝撃は大きかった。


 これまでドラゴニア帝国陸軍は常に航空優勢を握っていた。


 だが、よく考えれば第601飛竜騎兵師団も第602飛竜騎兵師団も壊滅したのだ。その代替として派遣が決定した第603飛竜騎兵旅団は未だ到着していない。


 スターライン王国の空は、スターライン王国の民のために存在している。


 敵が飛竜騎兵のように低高度で攻撃を行うならば、まだ撃墜の見込みはある。だが、見張り兵の報告では敵航空戦力は遥か上空を飛び、そこから正確に攻撃を命中させて、帰還していったのである。


 被害統計は取り始めたばかりだが、その時点で1個大隊の歩兵戦力の壊滅が知らされている。これからさらに被害が広がっているのが確認されるだろう。


「全軍に今日から壕で寝泊まりするように命じよ。精神的損耗は覚悟の上だ。たとえ精神的に損耗しようとも、物理的な損耗よりマシだ」


 アールザはそう命じた。


 彼自身も司令部の前に壕を掘り、そこで寝泊まりしてみせた。


 だが、攻撃はこれだけでは終わらない。


……………………

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