全軍再編成のお時間です
本日1回目の更新です。
……………………
──全軍再編成のお時間です
ドラゴニア帝国軍を山岳の向こう側に追い払ったスターライン王国抵抗運動は新たに臣民たちを解放した。4つの村落と1つの都市。それらがドラゴニア帝国から解放された。臣民たちは解放者であるスターライン王国抵抗運動を歓迎し、抵抗運動の兵士たちにも。ソーコルイ・タクティカルの兵士にも、花束が送られた。
中にはスターライン王国抵抗運動がドラゴニア帝国軍の後方の状況を知るために敢えて残していた人間もおり、それらが合流して報告を行う。
ドラゴニア帝国軍は陸空ともに大打撃を被って敗走したのは確かであり、スターライン王国抵抗運動の勝利は間違いないことであるということ。それから亡命してきたイーデンたちが後方に移送されたことなどが報告された。
そして、それと同時に勝利に沸く都市や村々では抵抗運動に志願するものたちが多く現れ、2個中隊規模の志願兵を新たにスターライン王国抵抗運動に迎えた。
ということで、ここで全軍の装備を更新し、再編成を行いましょうということになる。
まず再編成の対象になったのは第77独立装甲猟兵大隊。
戦車部隊を2個小隊に増強しT-72MIZ主力戦車8両を装備、さらに大隊本部中隊に戦車回収車2両追加しWTZ-3装甲回収車を装備。全歩兵部隊は機械化し86式歩兵戦闘車30両で機械化歩兵大隊を編成。ZSU-23-4シルカ自走対空砲小隊はそのまま。
次に第7山岳猟兵大隊。
全軍をBTR-70装甲兵員輸送車で機械化。余ったウラル-4320トラックは大隊本部整備中隊、補給中隊、82ミリ迫撃砲を運用する迫撃砲小隊、ピックアップトラックから85式対空砲を移した自走対空砲小隊などで使用。それでも余った分は後述する軍団整備大隊、軍団補給大隊に回されることなる。
次に第9戦闘工兵大隊。
これも全軍をBTR-70装甲兵員輸送車で装甲化。さらにIMR-2戦闘工兵車4両とMTU-72架橋戦車4両を装備。余ったトラックは本部整備中隊、補給中隊、迫撃砲小隊、自動対空砲小隊などで使用する他、軍団整備大隊、軍団補給大隊に提供された。
そして、各戦闘大隊を補助するための軍団部隊が作られた。
ソーコルイ・タクティカルの砲兵3個中隊と牽引用のMT-LB装甲牽引車。そして1個大隊の軍団整備大隊と軍団補給大隊、軍団通信中隊。
軍団と名のついているものの実質の規模は4個戦闘大隊+αであり、軍団と名乗っているのは敵に実質的な規模を知られないための欺瞞措置である。敵も数に押されて負けたと考えれば納得し、それ以上追及しないかもしれないという考えからであった。
そして、第13独立猟兵大隊は──
「これが我が社の提供するヘリです!」
「おおっ!」
元は第601飛竜騎兵師団が陣取っていた陣地が片付けられ、ハーサンたち土魔術師によって航空基地として整備し直されたそこに多数のヘリが展開していた。
「まずはMi-24スーパーハインドMk.III。輸出用に再設計されたモデルですが、オリジナルのMi-24ハインドを上回る性能です。後でパフォーマンスをご覧に入れましょう」
鮫浦はシャリアーデとティノにそう紹介しながら、次のヘリに移る。
「こちらはMi-8輸送ヘリ。我々の国でのベストセラーです」
Mi-8は確かにベストセラーの輸送ヘリだ。地球では既に旧式化している点を除けば。
だが、相手は所詮飛竜騎兵というワイバーンどもである。連中に追いつかれることはないし、連中に追いつかれても迎撃する手段はある。
相手には地対空ミサイルもないし、なんなら対空火砲だって確認できない。電子装備が旧式でも恐れる必要などない。その点は中東でゲリラ狩りをしていたあの将軍と同じだった。あの将軍は正規軍と戦う戦力とは別に反政府ゲリラを掃討するための武器として、このMi-8輸送ヘリを求めていたのだ。
Mi-8輸送ヘリはそれそのものがガンシップとして利用できるし、航空爆弾を無誘導ながら投下する能力を持つ。中には無差別として批判されたものの大量の爆薬に釘やネジを詰め込んだドラム缶爆弾を投下した機体も存在する。
そのMi-8輸送ヘリが1個大隊分24機。Mi-24攻撃ヘリは4機ずつのローテーションを想定して、12機。それだけの数のヘリがこの航空基地には揃っていた。
Mi-24攻撃ヘリにも僅かながらだが、兵員輸送能力があると考えると、第13独立猟兵大隊の空中機動戦力化は訓練次第で完了したと言える。
「現時点を以てして第13独立猟兵大隊は第13独立空中機動猟兵大隊とします」
シャリアーデがそう宣言する。
「ティノ・デア・カリスト少佐。第13独立空中機動猟兵大隊の指揮を任せましたよ」
「はっ! 命を賭してでもやり遂げる次第です」
大隊の空中機動戦力化に興味があり、何度も上申していたのはティノだ。彼がこの任務を果たさずして誰が果たすというのか。
「それでは女王陛下、カリスト子爵閣下。Mi-24攻撃ヘリのパフォーマンス飛行と行きましょう。我々が偵察で得たところでは、山岳地帯を越えて、こちらに浸透しようとしている敵勢力が存在するようです。それを掃討することとしましょう」
「可能なのですか?」
「もちろんです」
Mi-24ハインド攻撃ヘリの改良型であるMi-24スーパーハインド攻撃ヘリには、サーマルセンサーが搭載されている。これが何を意味するかはすぐに分かる。
「しかし、偵察が完了しているとは。例の無人偵察機というものですか?」
「その通りです。敵の不意打ちを阻止するために戦線全体を見渡しています」
404地点には第77独立装甲猟兵大隊や第9戦闘工兵大隊がいるものの、数で押し込まれては戦力が不足する可能性があった。そのような大規模攻勢の傾向がないかどうかを、バイラクタルTB2無人偵察機が常に上空を飛行して監視していた。
そして、その偵察結果によれば、第10歩兵師団と第21歩兵師団、そして第501重竜騎兵旅団の壊滅後、山岳地帯からこちらに侵入しようとしている敵の兵士が確認されていた。今は第7山岳猟兵大隊が機動的に対応しているが、Mi-24攻撃ヘリの性能を披露するには持ってこいの場だろう。
「それではこのタブレット端末をお持ちになってご搭乗ください。ソーコルイ・タクティカルのコントラクターたちが快適な空の旅と痺れる戦闘をご提供いたします」
タブレット端末にはデータリンクで接続されたMi-24攻撃ヘリのガンカメラの映像が映るようになっている。
「私、空を飛ぶのは初めてなのですが、何も準備は必要ないのですか……?」
「ええ。必要なものは全てこちらで揃えさせていただいたいます。ささ、お乗りください。墜落するようなことなどありませんので」
このMi-24攻撃ヘリは正真正銘の新品だ。輸出向けのを購入した。もっとも、輸出しようにも購入相手がいなかった開発国を相手に散々買い叩いたものの。武器商人というよりも商人というものは、安く仕入れ、高く売るのが基本なのだ。
その差額が数億ドルにもなるのが武器商人というだけの話だ。
「参りましょう、陛下。ドラゴニア帝国軍に空が飛べて、我々が空を飛べないということなど決してありません。私は鮫浦殿を信頼しております」
「そうですね。民にも示さなければなりません。我々がドラゴニア帝国に劣っているわけではないということを。そのことを示さなければなりません」
そして、ティノとシャリアーデがMi-24攻撃ヘリの兵員室に入る。鮫浦も乗り込み、パイロットと何事かを話す。
「オーケーだ。行ってくれ」
「こちらシュライク・ワンよりコントロール。離陸の許可を求める」
そして、Mi-24攻撃ヘリが離陸する。
……………………