サーを付けろ!
本日2回目の更新です。
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──サーを付けろ!
鮫浦にアルタイル勲章が授けられた。
これで彼の立場は騎士の地位に相当するものとなった。
もはや、平民の商人というわけにもいかない。彼も貴族の仲間入りである。
「社長ー。ひとりだけ勲章貰ってずるいですよー」
「別に欲しかったわけでもないんだけどな。向こうがやるっていうから貰っただけで。それよりも今後の方針についてアドバイスを求められた」
「どうするんです?」
「無人偵察機からの映像だとこの南東部の森林地帯と敵の兵力が陣取っている平野と敵の主力部隊が存在するだろう王都までの間には山と谷がある。都合のいいことに王都に繋がる谷さえ押さえてしまえば、戦線を拡大することなく、敵を南東部から駆逐できる」
「では、攻勢ってことですか?」
「そうだ。いよいよ攻勢だ」
塹壕での防衛はもう数ヵ月続いている。睨み合いと嫌がらせの砲撃程度では武器は売れない。ここは新しい武器を購入してもらうために、軍を動かしてもらわなければ。
幸い、トラックの運転手などは育成できている。そして、ソーコルイ・タクティカルのトリャスィーロには戦車兵と各種装甲車の運用を行うコントラクターの招集を要請している。すぐにでも人間は揃うだろう。
戦車が売れる。歩兵戦闘車が売れる。装甲兵員輸送車が売れる。
大儲けだ。ぼろ儲けだ。
ただ、今回の攻勢は敵の地上軍2個師団と1個旅団と航空戦力2個師団を相手にした限定的な攻勢となるとなるので、そこまで大規模に武器は売れない。ただ、今ドラゴニア帝国の制圧下にある村々や都市を解放した日には、新しく銃が売れ、さらに多くの装甲車やトラックを売ることができるようになる。
「ティノ少佐はヘリを買ってくれるだろうってずっと思ってるみたいでしたけど」
「ヘリの購入はまだ取り付けられないだろう。これから先、さらに攻勢を続けることになったら、それこそヘリも売るがな。今は戦車、歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車だ」
「やられメカのT-72がピンクダイヤモンドに」
「美味い話だよなー!」
地球ではとりあえず装甲戦力が欲しいという国以外で、T-72戦車を買う顧客はいない。良くも悪くも多くの戦場に投入されたT-72主力戦車は、運用側の問題もあるが、多くの損害を出し、人々に“弱い”という印象を持たれていた。
東欧諸国はT-72主力戦車の近代改修を止め、西側の武器を導入している。定番のレオパルド2主力戦車やポーランド軍が導入を決定したM1A2主力戦車が売れるのである。
そんなわけで鮫浦が最後まで売れないなと思っていたT-72主力戦車が捌けるのは神の祝福があったに違いないと思うことにしていた。サイードに話したら怒られるだろうが。
この世界にはジャベリン対戦車ミサイルはないし、敵の航空攻撃は防げるし、敵が同レベルかそれ以上の主力戦車を持ち出してくることもない。
つまりT-72主力戦車が大活躍できる舞台が整っているのだ。
それもこのT-72主力戦車はポーランド軍が近代改修したT-72MIZ主力戦車。射撃管制装置もアップグレードされており、より精密な攻撃が期待できる。
「それと同時にRPG-7V対戦車ロケットを売る。敵の重竜騎兵対策と陣地潰しのためだ。基本的な訓練はソーコルイ・タクティカルがやってくれる。あれは扱い方を間違えると味方に損害を出す兵器だからな」
RPG-7Vはこれまで供与してきた武器とは違い、盛大なバックブラストを噴出する。そのバックブラストは高熱で間違って後ろに友軍がいる状態で撃てば、友軍に損害が発生してしまう。それは避けなければならない。
鮫浦が与える武器は徹底して事故対策が行われなければならないのだ。そうでなければ、鮫浦が扱う兵器全般の信頼性が落ちてしまう。
「事故起きますよー。所詮は民兵ですからねー」
「うーん。とは言え、陣地攻撃と重竜騎兵対策ができる武器がないと困るしな」
戦車の購入数は限られるだろう。最初は様子見というところだ。
戦車──機甲戦力のない場所に重竜騎兵が投入されるとかなり不味い。敵重竜騎兵が機甲戦力との交戦を避けて後方に回り、無防備な後方部隊に食いつかれるのは不味い。
もちろん、歩兵のために歩兵戦闘車と装甲兵員輸送車は購入されることが決まっている。86式歩兵戦闘車とBTR-70装甲兵員輸送車の火力があれば流石の重竜騎兵も敗れ去るだろうが、問題はトラックで移動する部隊だ。
そう、今回の攻勢にはトラックが使用される可能性が極めて高い。
スターライン王国抵抗運動は50台程度のウラル-4320トラックを運用している。搭乗できる兵員の数ならばトラックの方が多い。そして、今のところシャリアーデは全歩兵部隊を装甲戦力化する予定はない。
つまりは重竜騎兵に迂回されて戦車、歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車、トラックの順で進んでいるスターライン王国抵抗運動のトラックの部分を攻撃された際、どう対応するのかという話である。
自衛用にトラックに新たに購入されたDShK38重機関銃を据え付けるという話も出てる。だが、今のところ12.7ミリ弾で必ずしも重竜騎兵はやれるという保証はない。
そこでRPG-7V対戦車ロケットを陣地攻撃を兼ねてという話なのだ。
本当は4個歩兵大隊ぐらいくらい装甲化できるだけの装甲車はあるのだが、シャリアーデは慎重な姿勢を示しているし、鮫浦としても無理強いはできない。
「まあ、今回の件で損害を被ってくれれば、装甲車買ってくれるかもな」
「社長。酷い奴ですねー」
「そのおかげで儲かってるんだろうー?」
「へへー。その通りでございまーす」
鮫浦と天竜がにやにやと笑う。
「だが、不味い動きもあってだな。グッドリック大尉が言っていたが、クーデターの計画が進んでいるくさい。俺もターゲットになっている。これからさ、お前もサイードも引き上げさせて、俺の護衛につける。頼むぞ」
「お任せあれ」
天竜が真面目な表情を浮かべて頷く。
「さあ、じゃあ戦車と装甲車をソーコルイ・タクティカルに引き渡すか。代金は貰ったからな。盛大に戦車と装甲車を引き渡してやろう。きっと抵抗運動の連中はたまげるぞ。連中は走るトカゲをみただけでもビビるんだ。そこに戦車とくればな」
「ようこそ中世から現代へってわけですね!」
「そうそう。迷彩服とタクティカルベスト、ヘルメットも売り上げ好調だし、このまま売れるものはなんでも売りつけてやろう!」
「おー!」
鮫浦と天竜は盛り上がりながら、倉庫に向かい、トリャスィーロたちソーコルイ・タクティカルにT-72MIZ戦車1個小隊分4両と86式歩兵戦闘車を1個中隊分10両、BTR-70装甲兵員輸送車1個中隊分10両を引き渡したのだった。
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