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邪教のマリア  作者: 豚しゃぶポン酢
1/4

邪教の街

注意事項


・先に申し上げておきますと更新は滅茶苦茶遅いです。

・食事中の閲覧はオススメ致しません。

 時は12世紀のフランス辺境、ウェスレー。山間に位置する一帯は極寒の吹雪に囲まれ、外から来る者などいない。街中に張り巡らされた運河にはどこまでも濃く、いつまでも(くら)(うみ)が流れ、運河横の街道には人間は歩いていない。当然の話だが、膿の悪臭漂う道を歩く人間などあるはずもない。そう、人間‘’は‘’歩いていないのだ。

 あるのは巨大な腫瘍(しゅよう)を体外に露出した、生気のない人型の化け物ばかりがうごめき、腫瘍から出た膿をすすり、奇声を上げる光景だ。地獄という言葉すら生ぬるい深淵、狂気さえ感じられない悪夢と称せるだろう。




 ほの暗い光が聖堂の内部を包んでいる。(かす)かに見える建物内は外の異常な様相とは異なり、異質なまでに小綺麗だ。ただ、祭壇の前に立つ三つの影はその異質さを克明に表していた。


猊下(げいか)、フランスの兵団がウェスレー近郊に野営を張ったと報告が」


 肩の後ろから鎌のような触手をはやしたシスターが、猊下と呼ばれた双頭の聖職者に報告した。シスターの両手には巨大な鉈が握られている。


「ンもう、またなの?ちょっと前に色々来たばっかりじゃない」


 巨漢の修道士が野太い声で嘆息を漏らす。男の口から上は腫瘍そのものであり、その中央には巨大な一つの眼がある。


「ただの兵士なぞ使い道も無い」「異教狩りに排除させたまえ」


 顔もむけずに双頭のそれぞれが言い放つ。多少しわがれつつも一本芯の通った力強さを感じる声だ。


「承知いたしました。手配します」

「あ、ちょっと待ってカレリアちゃん」


 去ろうとするシスターに修道士が声をかけた。


「どうかしましたか、ヴァレリオ修道士」

「死にかけでいいから生存者はルビンスのとこに送っといてちょうだい。検体が足りないってうるさいのよ」


 シスターは頷き、聖堂から出て行った。扉が閉じる直前、とても人間のそれではありえない跳躍力を見せ、すぐに姿が見えなくなった。


「ヴァレリオ、奴らの様子は?」「使えそうか?」

「宣教師二人はイイ感じよ、いつでもイケるわ」


 彼が親指を立て、双頭の男は静かに笑い始める。二人分の全く同じ笑い声が聖堂に響く。


「そうか」「それは良い」


 修道士も口角を釣り上げていたが、その直後には聖堂の扉に向かった。


「それじゃ、アタシは潜伏してる異教徒の対処をしてくるわ♪」


 修道士はウインクのつもりなのか、ただ一つの眼を一瞬つぶって外へ出て行った。

 狂気は怪物を呼び、ついには地獄さえ作り出した。もはや人間性すら感じられないこの悪夢はまだ始まったばかりである。


用語解説第一弾

・ウェスレー

 フランスの辺境に位置する架空の街。元は普通の村だったが、マリア派という邪教が村を支配し、街を拡大させて多くの化け物を作り出している。


 街の周囲は吹雪の結界に囲まれており、利用価値があると判断されれば街に通され、無いと判断されれば異教狩りに始末される。


 街は大きく分けて六つの区画があり、街の入り口から広がる居住区。そこから東に位置する製造区。街の北端にある砦。居住区西側の学院。その北、大聖堂につながる橋がある孤児院。そして街の中央、膿の堀に囲まれた大聖堂がある。

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